ツタヤオンラインがはじめた、漫画のネットを使った宅配レンタルというビジネスが好調のよう。計画の2倍で推移している。
システムは簡単で、宅配レンタルサイトの「ツタヤディスカス」に会員登録をし、意中の作品をクリックするだけ。返却は専用のコールセンターに電話して日時を指定すれば、完全委託している西濃運輸が取りに来てくれる。レンタルの期間は2週間。これだけあればじっくり、何度も読めるだろう。
ターゲットは30~40代の女性で、女性比率が6割。つまり、女性型ビジネスとしてヒットしている訳だ。
気になる価格は10冊セット貸しで、1785円とのこと。これは送料込の値段である。最大の30冊セットで4305円となる。
私の妻がこのビジネスのリアルターゲットとなるので感想を求めたら、コンセプトに対しては大賛成なのだが、価格については半分以下でないと使わないと言う。つまり、主婦感覚だと、コンセプトはよくても価格がネックとなる。
そこでもっと具体的に誰がターゲットなのだろうと考えるために、競合構造を考えてみた。
漫画の読み方を考え、メリット、デメリットを考えてみると、
1.買って読む→メリット=所有できるので、じっくり、何度も読み返すことができる、デメリット=置き場に困る
2.フックオフで買う→メリット=1.に加えて、安く買える、デメリット=1.と同じ
3.漫画喫茶→メリット=気軽に読める、所有しなくていい、デメリット=読めば読むほどお金がかさむ
このように考えてみて、1785円というこのビジネスの値づけの意味が分かった。これは漫画喫茶を利用する人との関係で設定されたのだろう。
漫画喫茶の利点は気軽だが、続き物となると、時間課金なのでお金がかさむ。ところが30から40代の女性が好むであろう、女性漫画はネームが多く、かつ全巻となると10冊、20冊というポリュームになってしまう。こう考えると、こういうユーザーにとっては、漫画喫茶は結構高いものとなってしまう。
とすれば、このターゲットは、漫画喫茶よりも高い利便性を求め、かつ価格に対して合理性を求める人たちなのではないだろうか?1785円という値づけを、意中の漫画タイトルを思い浮かべ、それを漫画喫茶で読破するには、何時間かかり、それに時間課金を乗じて比べる人たちなのだろう。
と仮定すれば、女性30から40代、独身、不景気下で時間はじっくりある、生活に合理志向が高い、という現在最も多そうな消費者像が浮かんでくる。
このように考えていくと、このビジネスはシステムで利便性を高めたと同時に、ターゲティング、価格といったマーケティングの精度を高めたことも好調の要因と考えることができる。特に攻撃目標を明確にした、価格設定は学びたいところである。
(1月26日(月)MJ11面)