大久保通りを引き返し始める。

途中にある100円ローソンで落花生と、マウントレーニアカフェラッテエスプレッソを2本と、レジ横で売っている焼き芋を買う。


夜の大久保通りは暗い。

分かってる夜だからどこだって暗い俺が言ってるのは通り沿いにもう新宿のような華やかさがないということだ。


こういうと大久保通りを愛する方々の神経を逆なでしてしまうかもしれないけれども、決して歩いていて楽しい道ではない。

魅力を見いだせないというか。

とりたてて欠点はないけれどもレギュラー選手としての起用となるとためらってしまう身長180センチ程度のゴールキーパーみたいに平凡で、色だけ濃い紅茶みたいに味わいがない。

しまった、大久保通りディスり放題じゃないか。


それでも、その道を歩いていれば僕は中野駅くらいまでは何の苦労も無く行けたはずだった。

少し駅から遠ざかってしまうけれども高円寺駅までだってほぼ一本道だ。

だのに、なぜ、歯を食いしばり♪大久保通りから外れてしまったのか。


バスだ。

バスがもう無かったんだ、今思い出した。


バス停があって、ああ、疲れたらバスがあるんじゃないか、と思ってバス停の時刻表を確認する、その時点で午後11時過ぎ、路線バスは終わっていて歩き続けるしかない。


前回のクリミナル・マインドは記事を振り返って考える、僕は午後8時に新宿へ来てペッパーランチで食事をした以外は歩き続けていて、すでに3時間近くが経過していた、OK?


しかも夜の大久保通りは暗くて、可愛いけど会話のつまらない女の子みたいで真冬だから寒い。


僕は歩くのに飽きていて、でももう少しだけ歩きたくて大久保駅に引き返したくなくて東中野駅に向かうことにした。


で、後でマップで確認したところそれでももう少し直進すれば東中野駅の西口真ん前を通過する通りがあったのになんとも中途半端なところで右折、北に向かってしまった。


お待たせ、失敗の4だ。


でもとりあえず僕は中央線の線路まではたどり着いて、そのまま沿った道が無いのでさらに北に進み、西へ進み、東中野駅前の繁華街を南に進む形で戻り、東中野駅のホームや線路に沿った道にずいぶんな遠回りをして着いた。


東中野駅前の繁華街はけっこうワイルドで警察官が二人しゃがみ込んでいた。

何?と思って覗いてみると、喧嘩なのか、ある男がある男を押さえ込んでいる。

相手の胸の上にぺたんとお尻を落とし、正座した膝の内側に相手の両肩を挟み込んだ完璧なマウントポジションで、悪酔いしたらしい押さえ込まれた男は


お前なんかにやられるか、ゴラァ~


と、首だけ上げて凄んでいる。

押さえ込んだ男は、もともとは知り合いなのか


お前はおれなんかにやられやしないよ、落ち着けって


と、困り果てている。

警官はそんな二人に声もかけず、気まずそうに地面に視線と落としていて、彼らの後ろを通り過ぎる男もいる。

僕だ。


駅のホームに入ってきたばかりの中央線の電車が見える。

望む進行方向、吉祥寺方面行きだ。

満員電車だった。

それで乗る気を無くした。

どうせあと二駅。


歩き続行。

もちろん失敗の5。


通り過ぎて東中野駅西口。


進行方向に対して左右に伸びる道路はあるけど、そこを渡っても直進する道が無い。

ただ、細い商店街のような脇道が進行方向に対して右斜め側に向かってある。


駅前から横断歩道を渡ってその細長い商店街に入る。

この商店街は、東中野銀座ストリート、と言うらしい。


結構歩いて抜けたところに、アーチ型の入り口があり、デジタル時計の表示は午後11時58分。


早稲田通り。


いまだから分かるんだけど、ここで左折するだけで中野駅まで行けた。


商店街を抜けた道路を渡った場所には交番があった。

無人だった。


どう考えても左折すれば線路沿いの道が見つかるはず。

僕は一度は正解の道を進んだ。

寺社が多い。


その道にもバス停があった。

バス停を一応見てみた。


路線のバス停名を確認しておけばどの方向に進んでいるかくらいはわかるから。


もう時刻は12時を過ぎていた。

夜だった。

とても寒かった。

疲れてきていた。


僕はどういうわけか、バス停間の進路を逆向きに考えてしまった。

失敗6。


あれ?また逆に歩いている?

逆向きに歩いて左折して中野駅か。


勘違いして引き返し、よせばいいのに適当なところで左折した。

細い柱上の地域表示からは、中野駅の文字が消え、落合まであと~m、というものに変わる。


この時点で完全に方向感覚を失う。


道は緩やかに下り、また上って大きめの通りに出る。

通りの向こう側には大きな寺がある。


歴史上の有名人物が多数墓地で眠っているらしい。

宝泉寺。


中野駅は遠ざかるばかりだった ▽・w・▽