『銀行の灰色債権60兆円超』

『日銀バランスシート』

『政府は借り手の信頼感回復を』

『スタートアップの闇と銀行』

『異次元緩和を総括』

『植田日銀が問うべき10年』


『銀行の灰色債権60兆円超』


過剰債務を抱える企業は利払い負担という問題に直結する。

破綻予備軍と呼ばれる灰色債権は9年ぶりに60兆円を突破する。
金利上昇は運用環境の改善や円安抑止に繋がる。
新型コロナが流行する前は返済条件変更など猶予が必要となった企業の残高が60兆円となり15兆円増加した。

新型コロナ禍のゼロゼロ融資などでさらに状況が悪化し、米国リーマンショック時の70兆円に迫りつつある。企業全体の債務残高は479兆円で23年度からの返済が迫られ、これから返済が始まる企業はどこもしんどかったところで不良債権化するリスクが溜まっています。

『日銀バランスシート』


黒田総裁に最初の2年間は高い評価だった。
円安と株価上昇によりデフレ進行を止め景気回復の基礎を創った。
その後の8年間延長は長すぎたし、国債やETF買い入れは過大だった。
さらにゼロ金利国債を大量に保有してしまった。
日銀資産704兆円のうち長期国債は556兆円で黒田緩和が始まる直前12年末の残高89兆円の6倍にのぼり、大部分が満期10年前後のゼロ金利長期国債です。
負債は銀行券125兆円と民間金融機関が持つ当座預金502兆円が占め引当金を加算しても自己資本は11兆円しかない。
日銀は銀行券と資本を除けば実質的に変動金利になっている日銀当座預金で調達した資金でゼロ金利に固定された巨額の長期国債を保有している。
長短金利が上昇すれば国債価格の下落で巨額の損失を被る事になる。

日銀保有国債平均満期期間は8.4年前後なので1%金利上昇で国債残高8%44兆円もの含み損を抱える事になる。当座預金に1%金利を払うとゼロ金利国債との利ザヤで年間5兆円の損失を抱える。
今後は法定準備預金額を現在の12兆円から300兆円にまで引き上げることができる。
これにより逆ザヤを民間金融機関に押し付けることになる。

 

『政府は借り手の信頼感回復を』


異次元金融緩和は当初投資家の関心を集めた。
金融市場を通じ株式、不動産など価格上昇をもたらし、行き過ぎた円高修正を進め、デフレ一色だった日本ムードに変化をもたらした。
極めて低い金利は企業の資金繰り負担を軽減し、経営を安定させ雇用不安も後退させた。
一方で起業は債務削減し内部留保を積み上げる姿勢を継続し、金融緩和をテコに借入を増やし成長を促進する選択を取らなかった。
デフレが長く放置された事に加え、バブル崩壊後に起きた苛烈な貸しはがしも含め借り手の企業と貸し手の銀行との関係変化も大きい。

 

アベノミクスの柱だった規制緩和や構造改革という長期的な成長力回復への取組も、株安・円高の苦しみが和らぎ、【痛み】がのど元を過ぎた頃には強力な抵抗を受けて停滞した。結果的に金融緩和だけが長く続いたが、マーケットはその持続可能性に疑問を持ち始めています。

 

『スタートアップの闇と銀行』


米銀の経営破綻の主因は量的緩和でスタートアップ・ベンチャーファンドへの融資や関連債権購入の審査が緩んだことで金利上昇により融資環境が悪化し保有債権が下落した。
さらにSNSを通じて銀行経営悪化のうわさが拡がり預金が大量流出した。

日本でも量的緩和下で審査が緩み技術はあっても経営力が伴わない企業が多額の審査や部不相応な融資や補助金を認められてきたケースが多い。
結果、非現実的な仮定に基づいた経営計画が修正されないまま進んでいく。
ある企業は収益の早期拡大を企図し、ビジネスモデルをBtoBからBtoCに転換したが転換後の商品が高額で購入層が限られていたため経営計画が大幅に遅延した。

 

『異次元緩和を総括』

・金融緩和は金利の低下を通じて将来の需要を現在に前倒しできるが生産性上昇率や潜在成長率といった経済構造に直接影響を与える事はできない。

異次元緩和には過去10年にわたる潜在成長率の低下傾向を食い止める力はなかった。

・異次元緩和策の副作用は円安加速や国債市場の混乱、市場の流動性低下、金融機関の収益圧迫、日銀バランスシートの悪化などが挙げられる。

・異次元緩和の効果に過度な期待が寄せられた結果、経済再生に欠かせない政府の成長戦略、構造改革などの経済政策が充分に進められなかったのも副作用のひとつだ。

・経済の安定という観点に照らせば効果が小さい一方、副作用が大きい現在の金融緩和を見直し正常化していく必要がある。

 

『植田日銀が問うべき10年』


・大規模緩和を継続すると表明する一方で副作用について問われると経済にどれほどの効果を与えたのか?そこから副作用を引き算するとお釣りが残るかどうかが評価の基準となる。

・植田総裁が委員となった1998年以降の25年間を振り返るとしたが過去25年ではなく2013年から4月8日まで続いた黒田総裁の過去10年の金融緩和政策の振り返りが必要だ。

・信じられないほどのペースでマネーを増やせば、人々のインフレ期待が高まり物価は上がり実体経済も回復する。日銀はマネーを増やしたが物価目標2%まで上がらなかった。
超低金利は不動産市場に影響を与えたが設備・研究開発投資はさっぱりだった。