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おいらだす。高校卒業の前に学年1000人もいる3年生の工業高校の「子供の国」へ行ったのら。遠足ではなく建築科は、古民家の見学修習。左が木下君、隣が今もつきあっている数少ない友人の佐藤君。
悲しいことに、前日、気象庁だかの豪雨になったら地すべりがどう起きるかの実験で、本物の地すべりが起きて、何人かの職員さんが亡くなられた日の翌日だった。


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こどもの国で、佐藤君と。あだなはいっちゃん。1年のころから、クラスは変更しない、変な学校で、座頭市に似ているので、クラスの誰かがあだなを付けて、今もいっちゃん。





 (3)
 家に帰ると、どういうわけかイトコの鵜飼幸二がいた。(変わった名だが、信州安曇野では名跡らしい。ご先祖さんはその地の藩の、城代家老をしていたそうである)
 彼は僕の伯父さんの子供、つまりお袋の兄にあたる人の次男坊なのだが、いつも決まってヒョッコリ僕の前に姿を現わす。その現われ方が唐突なので、僕はいつも驚かされてしまうのだ。
 その彼が、僕の顔を見るなり「おっす、とし!元気?」と、さして懐かしがってもいない、相変わらずの飄々とした感じで宣う。僕のベッドの下から、平凡パンチやプレイボーイなど、当時はエロ本の類を7,8冊広げて、お袋の前で女性のヌードグラビアを平気で見ている。
 「あれえ、海上自衛隊に行ってたんじゃなかったっけ?」
 そう言いながら、幸ちゃんの髪型に気付いて、僕はもうひと驚きしてしまった。
 「最近の自衛隊っていうのは進んでんだなあ、パーマかけてもいいんだ」
 幸ちゃんが入隊した時の、ボーズ頭にセーラー服姿といった、強烈な印象がいまだに僕の目の奥に焼きついているので、ウェーブのきいた髪型とバーバリーっぽいスーツをパリッと着こなしたこのイトコとが、どうしても重なり合わなかった。とても同一人物とは思えなかったのである。
 「いま、伯父さんの仕事を手伝ってるんだってさ」
 お袋が、なぜか上機嫌で言った。
 「へえ、除隊しちゃったの」
 「まあ、色々あってね」
 ニヤっと笑った彼の口許から、前歯が一本欠けている真っ白い歯がこぼれた。(彼は歯のマニキュアをしていたのだ)
 「伯父さん、お前にも手伝って欲しいんだってよ」
 「とし、どうせ暇なんだろ?」
 今なぜ彼がここにいるのか、ようやく僕にも事情が飲込めてきた。いわゆる、アルバイトのお誘いというわけである。


 伯父はペンキ屋をやっていた。
 文字・看板から建物の塗装まで幅広くやっていたが、いかんせん人手不足で、僕も中学生の時から、時々手伝ったことがある。結構いいお金になるのだが、ペンキで汚れるのと、シンナーやトルエンの匂いで頭がくらくらするから、他にアルバイトをやっている時は極力断っていた。
 「きょう、アルバイト先決めてきたんだけど、始めるのにまだ一ヶ月以上あるから別にやってもいいよ」
 僕はお袋の方を見ながら云った。







桑田さん、本当に元気になって欲しい。あしたは希望で”晴れて”ほしいだす。

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しょうゆこと。