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【あらすじ】

仕事に追われていて、炊事も出来ない…毎日変わり映えのしない日々を送っていた実果。そんなある日、幼馴染の鴻太から鍋パーティーをしないかと提案され、時間の合う日を約束する。



【人物紹介】

♂凩 鴻太(こがらし こうた)

普段はテレワークで自宅いる事が多い一人暮らしのアラサー。料理の腕が良く、自炊もしっかりこなす。実果とは幼馴染。


♀柊 実果(ひいらぎ みか)

普段は営業をこなす一人暮らしのアラサー。料理の腕はさっぱりで、普段の食事は出来合いのものばかり。鴻太とは幼馴染。



【テンプレート用 配役表】


鍋に映るは友愛の温もり

作:無名の脚本家


凩 鴻太:

柊 実果:



以下、線内本文。

※本文内の【】内は時系列(ト書き)です。

読む読まないはご自由にお任せします。

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【とある日の正午・実果の職場(オフィス)】


実果M

『私の名前は、柊 実果(ひいらぎ みか)。普段は仕事に毎日追われている一人暮らしのアラサーである。早起きして弁当作り…なんて事も出来ず、お昼は勿論、食事はいつも出来合いのものばかりである。変わり映えのしない毎日に、正直飽き飽きしていた。そんなある日、1通のメールが届いた。内容は…』


鴻太M

『久しぶり。覚えてるか?実果の幼馴染、《凩 鴻太(こがらし こうた)》だよ。まだメールアドレス変えてないって、実果の友達の優子から聞いたから連絡してみた。もし良かったらさ…今度、時間合う時に鍋とかでも食べながら昔の話とかでもしないか?場所は…俺の家とかでもいいぞ。住所はあれから変わってないから、気が向いたら連絡してくれ』


実果M

『…という感じに書かれていた。ちょうど数日前に、「鴻太くん…元気にしてるかなぁ?」と、思っていた頃でのメールだった。私も、何かしら変わり映えのある出来事が欲しいと思っていた時だったので、予定が空いている日を鴻太くんに返して、互いに会う日が決まった。その当日…』


【午後5時半・実果の職場】


実果

「はぁ…全く終わる気配ない…」


実果M

『勤務時間の定時を迎えても、今日までに仕上げないといけない仕事が溜まってしまい…ようやく終わったのが午後7時…私は鴻太くんに遅れる旨の連絡をして、急いで鴻太くんの家へと向かった』


(間)


【午後8時・鴻太宅】


(インターホンが鳴る)


鴻太

「お、来たな。(モニターを確認しながらインターホン越しに)今開けるぞ~」


(玄関開ける)


鴻太

「よっ、お疲れさん」


実果

「あ"ーもう疲れたぁ"ー…早くご飯食べたい!」


鴻太

「ちょ、唐突だなw…ほれ、荷物を部屋に持ってくから、手洗いとうがい済ませてきな」


実果

「はーい…ん?(部屋の匂いを嗅いで)お?もう出来上がってる感じ?」


鴻太

「おうよ。期待しとけよ~」


実果

「やったぁ!早く食べよー!」


鴻太

「…て!リビング行く前に手洗いとうがい!」


実果

「あー…ごめんごめん…(苦笑)」


(間)

(こたつの上にはガスコンロの上に蓋の閉まった鍋が置いてある)


実果

「お待たせ~もう待ちきれないよ~」


鴻太

「はいはい。もう用意出来てっから…よっ!」


(鴻太、鍋の蓋を開ける)

(鍋が既にグツグツと煮てある)


実果

「(感嘆)〜〜〜っ!めっちゃ美味しそ~!」


鴻太

「という事で…今夜は『もつ鍋』だ!」


実果

「いぇーい!もつ鍋パーティーだー!」


鴻太

「あ、そうだ…」


実果

「…何?早く食べたいんだけど」


鴻太

「あー止めて悪ぃ…明日、実果って仕事?」


実果

「ん?明日休みだけど?」


鴻太

「もし良ければ…飲んでく?」


実果

「え?いいの!?」


鴻太

「あぁ。実果が良ければだけd」


実果

「(被せ気味に)飲も飲もー!」


鴻太

「即答かよっ(笑)まったく…(立ち上がる)」


(間)

(鴻太、酒を持ってくる)


鴻太

「はいよ」


実果

「え、日本酒!?しかもそれ、純米大吟醸の中でも有名な『鼬祭(ゆうさい)』じゃん!」


鴻太

「ちょうど、もつ鍋に合うお酒を考えていたらさ…やっぱ日本酒かなと思って。で、あったのがこの『鼬祭』。4合瓶だから結構飲めるよ」


実果

「えっ、でも…『鼬祭』って結構高いんじゃ…?」


鴻太

「いいんだよ。実果だって忙しそうだから、今日くらい思い切り羽を伸ばして欲しいと思ってさ」


実果

「…ホントに、いいの?」


鴻太

「構わないよ。さ、お猪口持って」


実果

「うん…ありがと」


(鴻太、お猪口に日本酒を注ぐ)


鴻太

「ほい、これぐらいでいいか?」


実果

「ありがと~!」


(鴻太、取り皿に鍋の具をよそって渡す)


鴻太

「ほれ、鍋の具」


実果

「あ、そうだったね…ありがと」


鴻太

「ほい。という事でまずは、乾杯」


実果

「かんぱ~い!」


(互いに日本酒を1口飲む)


実果

「ん~!さすが鼬祭、すっごく飲みやすい!」


鴻太

「ん~やっぱ美味いなぁ~。他の日本酒とは頭ひとつ抜けてるな~」


実果

「お?語るねぇ~」


鴻太

「まぁ、それなりにな。…よし、食べるか!」


実果

「だね!いっただっきまーす!」


鴻太

「いただきます」


(実果、もつをひと口食べる)


実果

「ん~~~~~!!!美味しーーーーーい!!!…このもつ、全然臭みないね!」


鴻太

「だろ?そりゃあ、もつの下処理を丁寧に仕上げたからな。臭みも消えて旨味を活かした味わいになるってわけ」


実果

「ホント…ムダな物が浮いてる感じしない鍋だよね。(野菜も食べる)野菜もしっかり煮えてて美味しいし♪」


鴻太

「良かった。喜んでもらえて」


実果

「あ、そういえば…すっかり忘れかけてたけどさ…鴻太くんからこうやって誘ってくれたのって初めてじゃない?」


鴻太

「え?あー…そういえばそうだな…でもほら、高校の時さ…親友のグループで何人かで組んでたじゃん?」


実果

「うん、そうだったね」


鴻太

「それでふと、実果に最近連絡取ってないなぁって…」


実果

「あー…確かに、高校の同級生ですらも誰とも連絡取ってないね…皆そこまで離れていないはずなのにさ、卒業してから毎日のように連絡取り合ってるの、親との朝の挨拶くらいだよ…」


鴻太

「マジでか…皆忙しいのかな…?」


実果

「…そういう鴻太くんは最近どうなの?」


鴻太

「俺?俺はここ最近テレワークだからな。ほぼ自宅には居る」


実果

「いいなぁ…私もテレワークしたいなぁ…」


鴻太

「いや~、大変だと思うぞ?」


実果

「どうして?移動時間省けるのに?」


鴻太

「確かに移動時間はかからないけど…仕事とプライベートの切り替えが出来る人じゃないと厳しいと思うぞ?」


実果

「あっ、今…苦手そうだと思ったでしょ?」


鴻太

「実果、そういうの苦手だろ?」


実果

「うん、苦手…」


鴻太

「だろ?」


実果

「もぅ…なんで分かるのよ…」


鴻太

「だって実果…学生の時も毎年夏休みの宿題とか、ギリギリになって提出してたじゃん。勉強とプライベートの切り替えが苦手なんだろうなって」


実果

「ギクッ…そういえばそんな気がする…」


鴻太

「『気がする』、じゃなくて『そうだった』のw」


実果

「もぅ…笑わないでよー!」


鴻太

「ごめんごめんwいっつも焦ってる実果を思い出したらつい…w」


実果

「んもー!笑い事じゃないんだからぁ~!」


鴻太

「悪かった、悪かったってw…ところで、そろそろ具も無くなってきたし…ここらで〆でも作りましょうかね」


実果

「お!〆はなに?」


鴻太

「もつ鍋の〆と言ったら…やっぱ『ちゃんぽん麺』だろ?」


実果

「お~!博多の鍋だけあって、ちゃんぽん麺を入れるんだね!」


鴻太

「ああ、楽しみにしとけよ~」


実果

「はーい!」


(間)

(もつ鍋のスープ内でちゃんぽん麺が茹で上がり、取り皿に盛る)


鴻太

「ほい、おまたせ」


実果

「ん~!もう美味しい!」


鴻太

「まだ口に運んでもいないのにか?w」


実果

「だってもう…『味は保証します』って書いてあるもん!」


鴻太

「大袈裟だなw…ま、とりあえず食べるぞ」


実果

「うん!いっただっきまーす!」


(ちゃんぽん麺をすする)


実果

「(もぐもぐしながら)はい、口に入れた瞬間優勝~」


鴻太

「早っw」


実果

「もうね…ちゃんぽん麺特有のもちもちの麺がスープと絡まって…たまらん✨」


鴻太

「(苦笑いしながら)ははっ…確かにそうだなw」


(間)


実果

「いやぁ~美味しかったぁ~!それにしても…鴻太が料理上手なのは前から知ってたからさ。まさかこうやって振る舞ってくれるとは思わなかったよ~!」


鴻太

「ありがとな…まぁ、実果が良ければまたこうやって予定合わせても構わないから」


実果

「え!?いいの?」


鴻太

「あぁ。別にいいよ」


実果

「あっ…でも、今月は予定いっぱいだったかもしれないから来月とかでもいい?」


鴻太

「あぁ、大丈夫だよ」


実果

「ありがと~!また連絡するね!」


(間)


実果M

『鴻太のほうから誘ってくれて嬉しかった。ちょうど、次の日が休みというのもあって、お酒までご馳走になっちゃった。…今までの疲れが、まるで嘘のように吹き飛んだように感じた』


鴻太M

『数日後、実果から連絡がきた。《来月なら空いてる》と返事が来たので、ひとまず日程を合わせた。ここしばらく、1人で飯を食べていたから…久々に誰かを招いての食事はとても楽しかったし、食事もより美味しく感じた』


(間)

【翌月・午後7時半】


鴻太M

『翌月。実果が鍋を食べに来る日がやってきた』


鴻太

「薬味も用意したし…これでよし、っと」


(インターホンが鳴る)


鴻太

「お、おいでなすったな」


(玄関開ける)


鴻太

「ほい、お疲れ~」


実果

「あ"ー今日も疲れたぁー飯ぃー」


鴻太

「はいはい。先に手洗いとうがいをしてからなー」


実果

「はーい…」


(間)


実果

「はい、おまたせ~…ん?(部屋の匂いをかぐ)…なんか、辛そうな匂いがするけど…」


鴻太

「あー見た目は確かに辛そうかもしれないなー…ほれ」


(鍋の蓋を開ける)


実果

「あー…もしかしてコレ…」


鴻太

「そ、今回は『キムチ鍋』だな」


実果

「…私、辛いの苦手なんだよねぇ」


鴻太

「あぁ、その辺は大丈夫だよ」


実果

「いや、キムチ辛いじゃん…」


鴻太

「いいから騙されたと思って…(取り皿に盛り付けて)ほれ」


実果

「う、うん…いただきます…」


(実果、恐る恐るひと口食べる)


実果

「…あれ?そんなに辛くない?」


鴻太

「な?言うほど辛くないだろ?」


実果

「びっくりした…辛すぎないピリ辛で、それでいて鰹とかだしの風味が効いていて、コクとかもあったりして…なんでこんなに美味しいの?」


鴻太

「まず、使ってるキムチやけど…使っているのは『和風キムチ』ってやつで、それを思い切り鍋に入れただけ。で、あとは豆腐・豚バラ肉・ニラ・えのき茸を入れたシンプルな仕上がりの鍋って感じかな」


実果

「えっ!?和風キムチって辛くないの?」


鴻太

「あぁ。全然辛くないよ?だから辛いのが苦手、でもキムチを食べたいって人にオススメのキムチなんだよ。で、そのキムチには鰹だしも入っているからそれで味付けも概ねそれで済んじゃうってわけ。あとは、味を整えるのに調味料を少し入れたくらいかな」


実果

「へぇ~!」


鴻太

「あ、そうだ…実果、明日休み?」


実果

「うん、休みだけど…えっ、もしかして…飲んじゃう?」


鴻太

「あぁ…一応用意はしてあるけど…」


実果

「やったぁー!飲も飲も~!!」


鴻太

「(苦笑いしながら)はいはい…ちょっと待ってな…(立ち上がる)」


(間)

(鴻太、酒を持ってくる)


鴻太

「はいよ」


実果

「キタ━━ヾ(≧∀≦)ノ━━!!『ユウヒビール ハイパードライ』!!!」


鴻太

「やっぱ、キムチ鍋に合わせるならビールかなと思って」


実果

「ユウヒィ↓ハイパァ↑ドゥルァァァァイ↓(アサ〇スーパードライ風に)」


鴻太

「出たwその言い方w」


実果

「だってぇ~つい言いたくなっちゃうじゃん!」


鴻太

「まぁ、分からんでもないが…w」


実果

「ねぇ!早く飲も!」


鴻太

「はいよ」


(実果にビール缶が手渡される)


実果

「よーし!かんぱーい!」


鴻太

「乾杯っ」


(実果、ビール缶を開けてすぐに飲む)


実果

「くぅ~!沁みるぅ~!!」


(鴻太、鍋の白菜を食べてからビールを飲む)


鴻太

「うん!やっぱ、ビールとキムチ鍋は合うなぁ~」


実果

「ホント、鴻太くんって料理上手いよねぇ~」


鴻太

「そうか?ところどころレシピとかサイト見て参考にしてるし…」


実果

「…そうじゃなくて」


鴻太

「ん?」


実果

「こうやってちゃんと自宅で調理出来るのが凄いなぁと思って…」


鴻太

「…そう?」


実果

「そうよ…私なんて、料理出来ないからさ…」


鴻太

「あー…実果、いつも忙しそうだもんなぁ…ちゃんと飯食ってるのか?」


実果

「んー…普段はコンビニ弁当とかカップスープとかかなぁ…」


鴻太

「…それ、栄養的に大丈夫か?」


実果

「分かってはいるのよ…栄養バランス的にあまり良くないっていうのは…分かってはいるけど…」


鴻太

「『自炊に費やせるほど時間がない』と?」


実果

「うん、そんな感じ…休みの日でも自炊したいと思う時に限って、身体が脳に追いつかないというか…」


鴻太

「…なるほどなぁ」


実果

「だからさ…こうやって知ってる人に作ってくれる料理とか食べたの、この前の鍋パ以来なのよね…」


鴻太

「そっか…実果の実家は離れてるからなぁ…」


実果

「うん。いつか連休取れたら里帰りしたいなぁとは思ってるんだけどさ…」


鴻太

「大変だなぁ…」


実果

「うん…」


鴻太

「…まぁ、その分ここで飲んで食っていけよ。費用は取らないから」


実果

「あっ、そういえば前回の鍋パの分、払って…」


鴻太

「いいってあれぐらい」


実果

「いや、でもっ…鍋も日本酒もご馳走になったのに、何も返してないのは悪いって…」


鴻太

「いいんだよ。ちょっと昔の話出来たのも楽しかったし、あれだけで十分な対価だよ」


実果

「…ホントに、いいの?」


鴻太

「あぁ。構わないよ」


実果

「…ありがと」


鴻太

「勿論、今回の分もな」


実果

「…ありがとう」


鴻太

「ほれ、そんな辛気臭い顔してないで…そろそろ〆に入るぞ。ビール飲みながら鍋の残り食べて待ってて」


実果

「うん、分かった…」


(間)

(鴻太、〆を作り終える)


鴻太

「出来たぞ」


実果

「うわぁ~✨キムチラーメンだ~✨」


鴻太

「あぁ。溶き卵も入ってるから、より辛さもまろやかになってるし…お好みで、細ネギと白ごまも用意してあるから」


実果

「お~!楽しみ~!」


(鴻太、取り皿に〆を盛る)


鴻太

「ほいよ」


実果

「ありがと~」


(実果、ひと口食べる)


実果

「あ~美味しい…」


鴻太

「(〆食べて)…うん、麺で正解だな♪」


実果

「これでまたしばらく頑張れそうだわぁ~」


鴻太

「…『しばらく』って、どれくらい?」


実果

「えっ?…んー…2週間くらい?」


鴻太

「…うん、中途半端だなw」


実果

「えっ!?そんな事ないでしょ?」


鴻太

「…せめて、1ヶ月とか言って欲しかったゎw」


実果

「分かった!じゃあ1ヶ月頑張れる!」


鴻太

「…俺が言ったのをそのまま言いやがったなw…まぁ、ありがと」


実果

「…で?」


鴻太

「で?」


実果

「次、いつにするの?」


鴻太

「何が?」


実果

「もぅ!鍋パだよっ!」


鴻太

「えっ!?もう次回の鍋パの話するの!?」


実果

「だってぇ…次の鍋食べたいもん!」


鴻太

「お前なぁ…鍋なんて他でも食えるだろうよ…」


実果

「いーやっ!鴻太くんの作る鍋でお願いしますっ!」


鴻太

「(ため息)…俺が作る鍋にハマったのかよw」


実果

「そう!だから次に鍋パする日程決めるよ!」


鴻太

「まったく…w構わねぇけど、来月にするか?」


実果

「うん!来月で大丈夫よ!」


鴻太

「えーっと…じゃあ、この日はどうだ?」


実果

「お!そこちょうど空いてる!」


鴻太

「よし、じゃあまた考えておくゎ」


実果

「やったぁー!もう次回が楽しみぃ~!」


鴻太

「…気が早くね?w」


実果

「いいのよ!モチベーション保つにはこのくらいさせてっ!」


鴻太

「はいはい…w」


(間)


実果M

『こうして、キムチ鍋の分と次回の鍋パをモチベーションに替え…私はがむしゃらに仕事をこなした。時には仕事が多くてめげそうになっても、鍋パをする日を思い出して…どうにかこうにか翌月を迎える事となる』


(間)

【翌月・午後6時】


鴻太M

『翌月。実果が鍋を食べに来る日が来た。今回の鍋はちょっとばかし手を借りたい所だった…』


(着信音が鳴る)


鴻太

「お、仕事終わったかな?(電話に出る)もしもし?」


実果

「お疲れー!仕事終わったからこれからそっち向かうね!」


鴻太

「お疲れ~。それでさ…実果に頼みがあるんだけどさ…」


実果

「ん?なに?」


(間)

【午後7時・鴻太宅】


(インターホンが鳴る)

(玄関を開ける)


鴻太

「ほい、お疲れ~。買い物頼んで悪かったな」


実果

「も~!仕事あがりの人に買い物頼まないでよ~!」


鴻太

「あ~ごめんてw…荷物持ってくから、手洗いとうがい済ませてきてくれ」


実果

「(ぐったりした感じで)はぁ~い…」


(間)


鴻太M

『なるほど…白身魚にタコ…実果は魚介類も好きなのか…ちょうど、昆布で出汁を取っていたところだったし…よし、全部入れるか』


実果

「おまたせ~。もう出来た~?」


鴻太

「え?まだ買ってきてもらったものを入れたばかりだぞ?」


実果

「早く食べた~い…」


鴻太

「もうちょっと待ってろって。煮えないと流石に食えないから…」


実果

「…何か箸休めとかある?」


鴻太

「…おい待て、昼飯何食ったんだよ?」


実果

「え?確か、春雨のカップスープ1つ」


鴻太

「…朝は?」


実果

「おにぎり1個」


鴻太

「それだけかよ?!」


実果

「だってぇ、今日のために量減らしたんだから!」


鴻太

「お前なぁ…仕事中に栄養失調で倒れたらどうすんだよ!?」


実果

「普段は1日平均2000キロカロリーで抑えてるから大丈夫だもんっ」


鴻太

「…そこはちゃんと計算してるのな」


実果

「もちろんっ!」


鴻太

「…いや、それでも今日の食事量少なすぎだろっ!ざっくり計算しても2食で300キロカロリー程度しかないぞ!?」


実果

「いーのっ!今日この日を待ちわびていたんだからっ!…『楽しみのためなら何だって出来る』ってね♪」


鴻太

「…そういった所はストイックになれるのな」


実果

「どやぁ~」


鴻太

「『どやぁ~』じゃねぇよ、まったく…w」


実果

「…で?」


鴻太

「え?」


実果

「箸休めはあるの?」


鴻太

「あ?あぁ…ちょっと待ってろ…」


(冷蔵庫から平皿を取り出し、仕上げて持ってくる)


鴻太

「ほいよ」


実果

「えっ!?何このオシャレな料理…生ハムで何か巻いてある…」


鴻太

「あぁ、『クリームチーズとアボカドの生ハム巻き』。仕上げに黒胡椒とオリーブオイルをかけてあるよ」


実果

「えー!?めっちゃオシャレ✨」


鴻太

「あまり食いすぎるなよ?俺も後で食べるんだからな?」


実果

「あー…言われてなかったら全部食べる勢いだったわ」


鴻太

「…いやマジで残しといてくれ」


実果

「分かってるわよっ…いただきまーす!」


(生ハム巻きを1個食べる)


実果

「ん~!生ハムの塩気とアボカドとクリームチーズの相性抜群~✨…でもって、黒胡椒がアクセントになってて美味しい~!」


鴻太

「お~そうか~。…よし、こっちもいい感じに煮えたぞ~」


実果

「よっ!待ってました~!」


鴻太

「(鍋を持ってきながら)どこぞの酔っ払いかて…まったくw」


実果

「いいじゃん!盛り上げてるのっ!」


鴻太

「はいはい…(鍋を置いて)ほいっ」


(鍋の蓋を取る)


実果

「おぉぉぉぉ!海鮮鍋だー!」


鴻太

「今日の鍋は…『海鮮寄せ鍋』でございます」


実果

「ちゃんと白身魚もタコも食べやすい大きさに切られててもう美味しい…」


鴻太

「…まだ鍋食ってねぇだろうよw」


実果

「もう美味しそうなんだもん…さ、早く早く!」


鴻太

「そう急かすなて…(鍋の具を取り皿に分けて渡す)ほれっ」


実果

「よし!鍋、いっただっきまーす!」


鴻太

「(自分の分を取り皿に分けて)いただきます」


(実果、白身魚をひと口食べる)


実果

「はぁ~最っ高✨」


鴻太

「(野菜を先に食べる)…うん!しっかり出汁染みてるなぁ~」


実果

「あ~もう堪らんわぁ~✨」


鴻太

「そりゃあどーも…あ、そうだ。実果、明日って…」


実果

「(食い気味に)はい!休みです!酒も飲みたい気分です!」


鴻太

「即答っw…はいはい、持ってきますよっ…と(立ち上がる)」


(間)

(鴻太、酒を持ってくる)


鴻太

「ほいよ」


実果

「えっ、ワイングラス?」


鴻太

「そう、白ワイン持ってきた」


実果

「へぇ~…銘柄はよく分からないけど、美味しそうな気がする!」


鴻太

「『気がする』てぇ…w」


(ワイングラスに白ワインを注いで実果に渡す)


鴻太

「ほい」


実果

「ありがと。いただきます」


(ワインをひと口飲む)


実果

「うわぁ~✨凄いね、この白ワイン✨」


鴻太

「どう?白ぶどうの味がくっきりと出てると思うけど」


実果

「うん!熟した白ぶどうの味がしっかりしていて、あと…微かに芳醇な香りもあって、料理の味を邪魔し過ぎない感じがする…」


鴻太

「ほう?どれどれ…」


(白身魚を食べて白ワインをひと口)


鴻太

「おぉ~✨さすが白ワイン、白身魚と合うなぁ✨あとは…」


(生ハム巻きを食べて白ワインをひと口)


鴻太

「おぉぉぉぉ✨生ハムとの相性も抜群だな✨」


実果

「あ!その為の生ハム巻きだったの!?」


鴻太

「え?そうだよ?」


実果

「ちょっとぉ…言ってくれたら残してたのにぃ…」


鴻太

「実果が『箸休めが欲しい』って言ったからだろ?」


実果

「う"っ…そうだけどぉ…」


鴻太

「しかも6個作ったうちの3個食べちゃうしw」


実果

「あの時は限界だったのぉ!…あー!白ワインが出てくるって分かってたら2個で止めてたのにぃ~!」


鴻太

「まったくw…4つ目持ってけ」


実果

「え!?それじゃあ鴻太の分が無くなっちゃうじゃん…」


鴻太

「いいんだよ、俺の分は気にしなく…て?」


実果

「ん?どしたの?」


鴻太

「…気のせいかな?今…俺の事、呼び捨てした?」


実果

「…へ?」


鴻太

「いや、気のせいなら別にいいんだけど…」


実果

「うーん…呼んだような呼んでないような…」


鴻太

「そうか…まぁいいけど」


実果

「…ごめんね?せっかくご馳走してくれてるのに呼び捨てなんておかしな話だよね…」


鴻太

「え?」


実果

「こうして振舞ってくれてるのにさ?私なんて何もしないでただただご馳走してもらってるのにさ?呼び捨てじゃあ敬意が無いよね…」


鴻太

「いや、別にそういう訳じゃなくて…」


実果

「…え?」


鴻太

「いや…何か、新鮮というか…照れるというか…」


実果

「…なんで?」


鴻太

「『なんで?』って…何か、急に距離感が変わった気がして…」


実果

「…え?もしかして、ダメだった?」


鴻太

「いや、そうじゃなくてさ…」


実果

「なに?どういう事なの?」


鴻太

「その、さ…嬉しかったというか…」


実果

「…へ?」


鴻太

「実はさ…今回の鍋パで、最後にしようと思ってたんだ」


実果

「なんで?いつも楽しみにしていたのに?」


鴻太

「今まで、鍋パをしていて…色々と話を聞いてて、気付かされたからさ…」


実果

「…?」


鴻太

「この人は、俺が支えないといけないなって…」


実果

「…えっ」


鴻太

「だから…俺と、付き合ってください」


実果

「…え?」


鴻太

「俺と、付き合ってください。結婚を前提に」


実果

「…」


(しばらく、鍋のグツグツした音だけが部屋に響く)


実果

「えーーーーー?!!!!!」


鴻太

「ちょ、声でかいって!お隣さんに聞こえちゃうだろっ」


実果

「え、ちょっ、待って…状況が整理出来ないんだけどっ」


鴻太

「一旦落ち着けって」


実果

「落ち着けるわけないでしょ!?えっ?えぇっ!?」


鴻太

「分かった、分かった…一旦、深呼吸しようか」


実果

「すぅー…はぁ…(深呼吸)」


鴻太

「…落ち着いたか?」


実果

「う、うん…まだ、心拍数高い気がするけど…」


鴻太

「…まぁ、その反応からして…まったく気づいてなかったみたいだなw」


実果

「…何に?」


鴻太

「俺が今まで、張ってた布石に」


実果

「…どういう事よ」


鴻太

「最初、もつ鍋出したろ?その際に出したのが、たまたまウチに置いてあった『鼬祭(ゆうさい)』。その次に出した鍋が…」


実果

「…キムチ鍋よね?」


鴻太

「そう。その時に出したお酒は?」


実果

「…ビール」


鴻太

「そう。独特の言い方を真似してたよな?w」


実果

「う、うん…してたね…」


鴻太

「で、今回の寄せ鍋。お酒は何を出したっけ?」


実果

「…白ワイン」


鴻太

「そうだな」


実果

「…これが、何の関係になるのよ?」


鴻太

「実は…前回のビールと今回の白ワイン…全部、実果がウチに来る日に買ってたんよ」


実果

「んー…ん?ビールは缶だから買うのは分かるけど…白ワインも今日買ったの?」


鴻太

「そうだよ?その銘柄、読んでみ?」


実果

「え?(ワインの瓶を手に取って読みづらそうに)…モン、ト、ラ、チェット?」


鴻太

「『モンラッシェ(MONTRACHET)』な」


実果

「え!?…モンラッシェって、白ワインの中でも希少って言われてる…あのモンラッシェ!?」


鴻太

「あぁ、そうだよ?」


実果

「『そうだよ?』って…いくらしたのよコレ…」


鴻太

「んー…流石にウン百万のは高くて買えなかったけど、5桁はしたかな…」


実果

「…それでも万単位するの!?」


鴻太

「まぁ、それだけ今回の鍋パは超大作にしたかったって事で」


実果

「…本気だったって事?」


鴻太

「そゆこと。俺なりにね。…実果の話を聞いててさ、同級生として心配になっちゃったわけでさ…」


実果

「…」


鴻太

「最初は、実果の好きな物がよく分からなかったから…俺の好きなもつが入った『もつ鍋』にして、その次の『キムチ鍋』は…俺が好きなキムチと…実果が前に、辛い物が苦手だって言ってたような気がしたから…和風キムチを鍋に入れたやつにしたかな」


実果

「…そうだったの」


鴻太

「で、今回の『寄せ鍋』。俺が実果に注文してたの…覚えてる?」


実果

「え?えぇ…『実果の好きな物、なんでもいいから何か具材として使えそうな物買ってきて』だったよね?」


鴻太

「そう。アレ…実果の好きな物を聞いて、今後の調理も考えて作りたいなぁと思って」


実果

「え?…あー!アレ、そういう事だったの!?」


鴻太

「そうだよ?お陰様で、レシピも色々と浮かんできたからな」


実果

「…すっかり騙された気分」


鴻太

「何でだよwせっかく今度から別の料理作るって言ってるのにw」


実果

「…うん(涙目)」


鴻太

「で?実果は?」


実果

「…え?」


鴻太

「いや…俺からのプロポーズの返事。実果はどうなの?」


実果

「(涙目になりながら)…こちらこそ、宜しくお願いします」


鴻太

「…ありがとう。さて、そろそろ最後の鍋パの〆を作るぞ~」


実果

「…ねぇ」


鴻太

「ん?なんだ?」


実果

「…『最後の鍋パ』って、どういう事?」


鴻太

「え?そりゃあ…『同級生として』最後の鍋パであって、次は…『今後、一生を共にする』鍋パ…て事だよ」


実果

「(泣きながら)良かったぁ…!これからも鍋食べれるんだねぇ…!」


鴻太

「そりゃそうだろw今後一緒に住むんだからw」


実果

「うん…うん…!」


鴻太

「さーて…〆は雑炊にするけどいいか?」


実果

「うん!お願いします!あと…」


鴻太

「あと?」


 実果

「次、何鍋にする?」


鴻太

「もう次の鍋決めるのかよっ!」


実果

「次来る時、何鍋にしてくれる?」


鴻太

「そうだな…魚介類が好きみたいだから、鍋感覚で食べるブイヤベースとかどうだ?」


実果

「やったぁ!ブイヤベース大好きぃ~✨」 


鴻太

「あぁそうかよw…じゃあ、次来る時はブイヤベースなw」


実果

「わーい!」 


(間)


 実果M

『こうして…私と鴻太は付き合うことになった。数ヶ月後には働いていた仕事も円満退職し、今は半日程のバイトをしながら、鴻太と一緒に住んでいる。鴻太が作る鍋は勿論、どの料理も美味しくて…最近では、私の好きな白身魚のムニエルや、たこ飯とかも作ってくれる。そんな私も、会社を辞めてからは鴻太に教わって料理をするようになった。…私からも、彼に料理で恩返しが出来るようになる為に』 


 鴻太M

『実果は会社を辞めてから、俺が教えた料理をすぐに覚えてくれた。実果に料理を教え始めた当初は、レシピをメモに書いて見ながら作っていたが…何度か同じ料理を作ってくうちに、メモを見なくても同じ味に仕上がるようになっていた。実果の頑張りを見ていると、とても微笑ましくなる。今後も、実果を支えていこう。…彼女と、これからも末永く一緒に過ごす為に』


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