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【あらすじ】
ここ最近で多発している駅のホームでの人身事故。その事故が不自然に見えた助手・素腕路四斗は事故現場を調査し始める。四斗の報告を聞いて探偵・安室北枝も気になり始める。果たして人身事故はただの事故なのか、それとも…
【人物紹介】
(♂)安室 北枝(やすむろ ほくし)
探偵事務所を経営している探偵。普段は仕事がなかなか舞い込んで来なく、ほとんど事務所にこもっているが勘は案外鋭い。
(不問)素腕路 四斗(そわんじ よんと)
探偵事務所で働く助手。好奇心旺盛で気になった事があるとついその場所に行ってみたくなる癖がある。目の付け所が鋭い。
※役的に少年声が好ましいので不問にしてます。
(♂)駅長
十六張(うっぷばり)駅で働く駅の責任者。ここ最近多発している人身事故の処理に日々追われている。
(♀)遠西 古紺(とうざい ここん)
探偵事務所内でよく観ている情報番組のニュースキャスター。
【配役表 テンプレート】
安室北枝の事件簿(2:1:2)
作:無名の脚本家
(♂)安室 北枝:
(不問)素腕路 四斗:
(♂)駅長 / 男:
(♀)遠西 古紺:
(不問)ナレーション:
以下、線内本文。
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【とある平日のAM7:30、十六張駅のホーム】
[お知らせ音が鳴り、アナウンスが響く]
駅長(アナウンス調で)
「間もなく、2番線に電車が参ります。黄色い線の内側に下がってお待ち下さい」
ナレーション
「通勤ラッシュの中、ホームの真ん中を歩く青年が1人。青年はイヤホンをしながらスマートフォンの画面に夢中になっている。その様子を遠目から見ている1人の男がいた」
男
「…」
ナレーション
「男が見つめていた青年は、一旦立ち止って2番線路のほうへと向くと…列の無い開けた所へと歩き出し、やがて黄色い線を越え…」
[電車の警笛]
[衝突する鈍い音]
(間)
【AM9:00、とある古くさい探偵事務所】
[探偵事務所内では朝の情報番組を観ている]
古紺(原稿読み上げ口調で)
「本日、午前7時30分頃…十六張(うっぷばり)駅にて男性が線路内に飛び込む人身事故が発生。飛び込んだ男性は病院に搬送されましたが、そのまま死亡が確認されました。目撃者の情報によりますと、飛び込んだ男性はイヤホンをしながらスマートフォンを操作…いわゆる『歩きスマホ』をしていたとの事です。この事故により、電車の運行は運転見合わせとなっており、通勤客約5万人に影響が出ております」
北枝
「ったく…また駅のホームで飛び込みかよ…今月に入ってこれで3人目だぞ」
四斗
「最近多いですよね…しかも同じ駅で…」
北枝
「…最近の若いのはなんでこうも注意力散漫なやつが多いのかなぁ…(ため息)」
四斗
「…そんなにため息ばかりついてますと、仕事も幸せも逃げちゃいますよ?」
北枝
「うっさいなぁ!たまにはひと息つかせろい!」
四斗
「でも…ここ最近の人身事故って、通勤時間の時が多い気がしません?」
北枝
「…あ?そりゃあ通勤ラッシュの時間帯のほうが人も増えるし、人身事故のリスクは高くなるんじゃねぇのか?」
四斗
「うーん…確かにそうですけれども…」
北枝
「…なんだ?引っかかるのか?」
四斗
「何かしら、絡んでる気がするんですよね…」
北枝
「…気のせいだと思うぞ?」
四斗
「…ちょっと、今度この駅のホームに行ってみてもいいですか?」
北枝
「あ、あぁ…行くのは構わないが、他の仕事が入ったら打ち切りな?」
四斗
「分かってますって」
(間)
【十六張駅のホーム】
[四斗はチェックのハンチング帽にチェックのスーツを纏っている]
ナレーション
「午後2時。四斗は、人身事故が多発している十六張(うっぷばり)駅にやって来た。しかしこの時間とあってか、人の流れが穏やかである」
四斗
「うーん…さすがにこの時間帯じゃあ何も情報は無いかぁ…」
[そこへ…ホームを見回っていた駅長がやってくる]
駅長
「…ん?キミ、探偵さんかい?」
四斗
「へ?あっ、すいません…今日のニュースを観て気になってしまいまして…」
駅長
「その感じからして、本職かなと思ってね」
四斗
「(苦笑)あはは…探偵といいましても、助手ですけれども…」
駅長
「なるほど…良かったら、駅員室には来れるかな?」
四斗
「えっ、宜しいのですか?」
駅長
「実は私もここ最近の人身事故は気になっていてね…キミが良ければ、資料を見てもらおうと思うのだけれど…どうかな?」
四斗
「…!是非!」
(間)
【駅員室】
[駅長が事故報告書をまとめた冊子を持ってくる]
駅長
「コレが…今月分の事故報告書だよ」
四斗
「ありがとうございます。では、失礼して…」
[事故報告書を読み進める四斗]
四斗
「やっぱり…どの人身事故も発生時刻が平日の通勤ラッシュの時間帯ですね…」
駅長
「そうなんだよねぇ…一応、カメラも線路を映すように取付けてはいるのだけど…どの人身事故の映像を見ても、線路に飛び込んだ人で共通するのは『歩きスマホをしている』だけなんだよね…」
四斗
「なるほど…とするとどの人身事故も、周りに気づかず線路に向かって歩いてしまっていると…」
駅長
「警察からも、実況見分(じっきょうけんぶん)した結果から飛び込みではないかと言われましたし…やはりそうなのかなってね…」
四斗
「…」
(間)
【PM7:00、探偵事務所】
[助手が事務所に帰って来る]
四斗
「戻りました~」
北枝
「…随分時間かかったな。何か分かったか?」
四斗
「一応、駅長さんにお会いして…当時の事故報告書や事故の瞬間の映像を観せてもらいましたけど…核心はつけてないですね」
北枝
「…やっぱり、ただの事故だったんじゃないの?」
四斗
「…だとすると、引っかかるんですよね」
北枝
「何が?」
四斗
「…飛び込みにしては、不自然な感じがするんですよ。…なんかこう、勝手に線路へ向かっているような…」
北枝
「…スマホの画面を注視し過ぎて、気づいた頃には避けられない距離まで電車が迫っていたと考えるのが筋じゃないのか?」
四斗
「うーん…」
(間)
【翌日、十六張駅のホーム】
ナレーション
「翌日午前7時。四斗は事故のあった十六張駅のホームで通勤スタイルである普段着で来ていた」
四斗M
「確かに…この時間帯は通勤客でいっぱいだな…なんだろう、胸騒ぎがする…」
ナレーション
「四斗が電車待ちをしながら周辺を見回していると…遠くからイヤホンをしながらスマートフォンの画面を見て歩いている女性がいた」
四斗M
「あっ、あの人…歩きスマホしてる…(何か違和感を感じて)なんだろう、あの目の感じ…スマホに集中してるというよりかは、虚ろ気味なような…」
[お知らせ音が鳴り、アナウンスが響く]
駅長(アナウンス調で)
「間もなく、1番線に電車が参ります。黄色い線の内側に下がってお待ち下さい」
ナレーション
「女性は、一旦立ち止って1番線のほうへと向くと…そのまま列の無い開けた所へと歩き出し…」
四斗
「くっ、危ないっ!」
古紺
「きゃあ!」
[黄色い線の内側に倒れ込む]
[すぐに電車が目の前を通る]
男(遠くで)
「(舌打ち)」
[男はその場から去る]
四斗
「(息切らしながら)…大丈夫ですか?」
古紺
「痛っ…あれ?私、なんで倒れてるの?」
四斗
「…え?覚えてないのですか?」
古紺
「はい…確か、改札を通って駅のホームに降りたった辺りまでは覚えているのですが…」
四斗M
「…どういう事だ?それって、1分前くらいの記憶だよな?」
古紺
「あの…私、何してました?」
四斗
「えっ…この駅のホームを、イヤホンをしながらスマートフォンの画面をずっと見て歩く…いわゆる『歩きスマホ』をされてましたよ?」
古紺
「(唖然とした感じで)うそっ…スマートフォンは使うけど、歩きながら操作なんてした事なかったのに…」
四斗M
「?…という事は、無意識のうちに歩き出していたのか?それとも…」
古紺
「…それで、なぜ私はここで倒れていたのですか?」
四斗
「あぁ…その歩きスマホをされていた際、周りを気にせず線路に向かって歩かれているように見えましたので…私がそれを止めた次第です」
古紺
「…私がそんな恐ろしいことを。まるで、線路に飛び込みをするかのようになってしまったのですね…」
四斗
「でも良かったです。お怪我もなくご無事で」
古紺
「こちらこそ、ありがとうございまs…!大変、すり傷で血が出てますよ…!」
四斗
「…こ、このくらい大丈夫ですって」
古紺
「いえ、私のせいで怪我を負わせてしまいましたから…」
[そこへ、駅長が現場にやってくる]
駅長
「(2人に駆け寄って)大丈夫ですk…ん?キミは昨日の…」
(間)
【駅員室】
[駅長から応急手当を受ける]
駅長
「…よし、これで大丈夫かい?」
四斗
「はい。ありがとうございます」
駅長
「防犯カメラ越しに、人が倒れ込むのを見掛けて駆けつけてみたら…まさかキミに会うとはね」
四斗
「すいません…ちょうど通勤前に勘が働いちゃいまして…」
駅長
「いや…キミのおかげで通勤の時間帯を乗り切る事が出来たよ。感謝する」
古紺
「…」
駅長
「で、話はだいたい聞かせてもらったけど…歩きスマホをしていたんだって?」
古紺
「そう…みたいなのです。普段歩きスマホをしない私が、どうして今日に限って…」
四斗
「…そういえば、歩きスマホの最中って何を見てたのですか?」
古紺
「え?」
四斗
「歩きスマホって…それだけスマホに集中するほど見られてましたのですよね?何をご覧になってたのですか?」
古紺
「…記憶に、無いです」
四斗M
「おっとぉ?これまた記憶に無い…」
駅長
「ちょっと待ってくれ…歩きスマホをしてしまうほど、スマホの画面に夢中になっていたのだったら多少なりとも覚えているはずだが…それも全く覚えていないというのか?」
古紺
「はい…立ち止まって操作していた時には、今日のスケジュールを見ていたのは覚えているのですが…それ以降の記憶は、何も…」
四斗M
「…何か引っかかるな」
(間)
【その後、事務所近くの歩道】
[考えながら歩く四斗]
四斗M
「思い出そう…まず、事故に遭ってる人は『必ずイヤホンをしながらスマートフォンを見ていてスマホ歩き』をしている事…次に、事故発生時刻は『午前7時台の通勤ラッシュ』という事…あとは、スマートフォンを見ている時の『虚ろ気味』の表情…どうも引っかかる…」
【AM9:30、四斗が事務所出勤】
四斗
「おはようございます。遅くなりました…」
北枝
「おはよう…珍しいじゃないか、普段より1時間も遅れて…て!おい、その怪我はどうした!?昨日までそんな傷無かったろう?!」
四斗
「(苦笑いしながら)あはは…すいません、ちょっと擦っちゃいまして…でも大丈夫ですから」
北枝
「そ、そうか…(ここから小声で)怪我が目に入らなかったら寝坊かと聞きたかったのに…」
四斗
「ちなみに寝坊じゃないですからね!」
北枝
「え!?そうなの!?」
四斗
「そうですよ!朝7時の時点で駅まで来てましたから!」
北枝
「あ、そうなのか…て、まさか昨日から調べてる事故をまた聞きに行ってたのか?」
四斗
「いや、今日は救った側です」
北枝
「救った…どういう事?」
四斗
「…ひとまず、事の経緯をご報告しますね」
(間)
[今朝起きた出来事を全て話す四斗]
北枝
「なるほど…その怪我も今日の朝なのか」
四斗
「えぇ…あのまま助けていなかったら、また同様の事故になる所でしたね…」
北枝
「話からして…その『虚ろ気味』の表情が確かに気になるな…よし、ちょっとその駅行ってみるか」
四斗
「えっ、仕事は大丈夫なのですか?」
北枝
「このご時世…うちの事務所に仕事は来ないし、やる事とすればニュース観るくらいしかないからなぁ…もし依頼が来たらポストに封書投函でも来るだろうて」
四斗
「分かりました!では、行きましょうか」
北枝
「うむ」
(間)
【駅員室】
ナレーション
「午後1時、探偵と助手は仕事着を身にまとい、十六張駅の駅員室を訪ねた」
四斗
「失礼します。駅長さんはいらっしゃいますか?」
駅長
「はい。どちら様で…あぁ、キミか。そして、お隣の方は…」
北枝
「どうも、うちの助手がご迷惑お掛けしております」
四斗
「ちょ、迷惑ってそんなつもりじゃ…!」
駅長
「いえいえ…こちらこそ、事故の解明を努めてくれる姿勢に感服してばかりですよ。…して、探偵さんがいらしたということは…あの件ですか?」
北枝
「えぇ、話はうちの助手から色々と聞かせて頂きまして…」
駅長
「分かりました。ではこちらへ…」
(間)
[名刺交換を済ませ、駅員室に通される。テーブルの上には事故報告書が置かれ、3人でカメラの映像を確認する]
駅長
「さて、この時間帯が今日の7時頃ですね」
北枝
「あー…確かにこの立ち姿と見渡す感じ、うちの助手ですね」
駅長
「で、このあと電車が来るのですが…」
北枝
「うぉっと…黄色い線を越えてから引き留めてますね。ここが怪我した瞬間だろうな…ん?ちょっとすいません…今の映像、巻き戻してもらっても?」
駅長
「え?えぇ…」
[映像を巻き戻して四斗が古紺を引き留める瞬間まで戻す]
北枝
「なるほど…では次に、実際に人身事故が発生した日時の映像を観せて頂けますか?」
駅長
「えぇ、構いませんが…」
[映像を人身事故が発生した日時にあわせて再生する]
北枝
「(小声で)…やはり、そうかもしれない」
駅長
「…何か見えたのですか?」
北枝
「恐らくこの事故…他殺の可能性があります」
駅長
「え!?」
四斗
「やはり…」
北枝
「今の事故の瞬間…ほら、2人のほうではなく、こっちのほうにいる…黒の帽子を被った…」
駅長
「あー…この人、よく平日の朝にここの改札を通るお客さんだな…」
北枝
「この人をよく見ながら、映像を進めて見て下さい」
駅長
「…ん?事故が発生した後に改札に向かってる?」
北枝
「そうなのです。目線は事故現場を見ているにも関わらず、誰にも伝える事無くその場を立ち去るっておかしくないですか?」
駅長
「確かに…見ていたのであれば呼び止めたり出来たはずなのに、その場を離れていく…まるで…」
四斗
「事故が起きるのを予見してからその場を立ち去ってる…」
北枝
「あぁ、ちょっと考え難いかもしれないが…」
[北枝、一呼吸おいて]
北枝
「操ってるかもしれません」
四斗・駅長
「え!?」
駅長
「…し、しかしどうやって?」
北枝
「恐らく、スマートフォンの画面ででしょう。今朝の助けた女性の方からの証言ですと、『スケジュールを確認していた』と言っていた…その辺りで記憶が飛んでいる…何者かが被害者の端末に細工してきたとしたら…」
駅長
「…そんな事が出来るのですか!?」
北枝
「このご時世…スマホで様々な事が出来ますからね。個人情報を不正に盗み出すプログラムを組み込んだメッセージとか送ろうと思えば出来たりするのではないでしょうか?」
四斗
「…真相を確かめる為にも、捕まえるべきですね」
北枝
「しかし…現場も見ていないのに、万が一潔白だった場合の事を考えると…そいつを捕まえるのは危険だろう。事故と同様の現象が起きた事を確認しつつ、そいつが現場を見てるのに離れようとしたところを捕まえるのがいいだろう」
駅長
「明日も平日ですし、おそらく現れると思われます。もし決行されるようでしたら…早朝、この駅にお越し頂けたらと」
北枝
「分かりました。ではまた明日伺います」
(間)
【翌日、駅員室】
[北枝と四斗は共に普段着]
ナレーション
「翌日、午前6時30分。北枝と四斗は十六張駅の駅員室に来ていた」
北枝
「失礼します。駅長さん、おはようございます」
四斗
「おはようございます」
駅長
「お待ちしておりました」
北枝
「では、改めて作戦を確認させて頂きますね」
駅長
「えぇ、宜しくお願いします」
北枝
「まず、その方が現れるのは概ね午前7時頃…今までの傾向からして、1番線から来る電車で1両目の端から降りて来る。私と四斗はホーム内で待機…彼のターゲットになった人が線路に向かっていったら、四斗がその人を止め、現場を見ていたのにその場を離れようとした所を確認したら私がその彼を呼び止める。これでいいかな?」
四斗
「はい、大丈夫です」
北枝
「駅長さんは…その模様を駅員室で監視して頂きまして、現場の瞬間を確認しましたら警察への通報をお願いします」
駅長
「分かりました」
【その後、駅のホーム】
北枝
「では四斗くん…私が男の動向を見張るから、キミは男のターゲットになりそうな人を見つけて線路に向かっているような感じが見えたらその人を止める…いいかな?」
四斗
「はい。必ず止めてみせます」
ナレーション
「北枝と四斗は、ホームから改札口へ向かう階段前に左右対称の位置につく。そこへ…1号線から電車がやって来て、1号車の端からカメラでも見た男が降りてくる。男は降りてくるなり、1・2番線の真ん中で立ち止まるなりスマホを操作しだす」
北枝
「あの男だな…一見するとよく見かける光景だな…」
ナレーション
「その姿は四斗にも映る」
四斗
「操作を始めたな…もうターゲットを探り始めているのかもしれない。周りを見ておこう…」
ナレーション
「四斗が辺りを見渡し始めた頃…」
[駅のホームにアナウンスが流れ始める]
駅長(アナウンス調で)
「間もなく、1番線に電車が参ります。黄色い線の内側に下がってお待ち下さい」
古紺
「ふぅ…よし、今日の予定を確認しておこっと」
四斗
「…あれ?あの人って、昨日の…」
ナレーション
「四斗が見渡していると、古紺が昨日と変わらずイヤホンをした状態で駅のホームへと降り立つ。古紺がいつものようにスケジュールを確認していると…」
[古紺のスマホに1件の通知が入る]
古紺
「ん?何かしらこれ」
ナレーション
「古紺が通知を開くと、古紺はスマホの画面を見ながらホームを歩き始める」
四斗
「!…よし、止める!」
北枝M
「…て!四斗くん、仕掛けるの早すぎだろ!」
ナレーション
「四斗が古紺を追いかけ始めた瞬間…古紺の足は早い段階で、電車を待つ列と列の間の線路へと歩き出す」
四斗
「まずい…間に合えっ…!」
ナレーション
「古紺の足が黄色い線を越えかけたその時…四斗の手が古紺の肩に掛かり、そのまま古紺を黄色い線の内側に引っ張った」
古紺
「きゃあっ!」
男
「(舌打ち)」
[北枝がスマホのカメラで男を連写で撮る]
ナレーション
「男がその場を去ろうと階段へ向かうと、男の真正面に立つ男性がいた」
北枝
「キミ…ちょっといいかな?」
ナレーション
「男は一瞬驚いたように立ち止まったが、一瞬の隙をつこうと横へと素早くすり抜けようとした」
北枝
「ふんっ!」
ナレーション
「男が横へと避けようとした瞬間、北枝は男の足を引っ掛けて男を転倒させた」
男
「ぐふっ!」
ナレーション
「北枝は男の上に乗り、動けないように手首を両手で抑えた」
北枝(押さえつけながら)
「さーて…なんで逃げようとしたのかな?なんでもなければ逃げようとしないはずだぞっ…!」
[そこへ、駅長と警察が降りてくる]
駅長
「おまたせ!通報したらすぐ来てもらったよ!」
北枝
「…良かったぁ」
(間)
ナレーション
「こうして…ここ数日の不審事故は一件落着となった。しばらく警察から事情を聞かれた北枝と四斗だったが…ことの全てを警察に全て話し、男のスマートフォンの使用履歴から、サブリミナル効果のあるメッセージが…古紺を始め、飛び込みで死亡した人達に送っていた事が判明。男はそのまま逮捕となった」
【その日の夕方、探偵事務所にて】
[探偵事務所では夕方の情報番組を流している]
古紺(原稿読み上げ口調で)
「では、次のニュースです。今月から多発していた十六張駅で発生していた飛び込み事故ですが…本日午前7時頃、この事故に関わっていたと思われる無職の男が逮捕されました。調べに対し、男は黙秘しているという事です」
ナレーション
「そこへ…共演者の司会から古紺にこの事故に巻き込まれそうになった話が振られる」
古紺
「え?えぇ…実は、私も巻き込まれそうになりまして…しかも2度も引っかかってしまうとは思いませんでした。あの時止めてくれる方がいたからこそ、私は今ここにいるのだと思います。あの方達にはホントに感謝しかありません…」
北枝
「いやぁ~どっかで見た事ある人だと思ったら、まさかニュースキャスターを助けていたとはな…」
四斗
「…私も、助けるのに精一杯で、同一人物だと思いませんでしたね…」
北枝
「…まぁ何にせよ、無事に解決しそうで良かったな」
四斗
「そうですね…報酬の事なんてすっかり忘れちゃうくらいに…あ!報酬取ったほうが良かったですかね?」
北枝
「…何で取らなきゃいけないんだよ。元はと言えばキミから乗った事件で、報酬の話なんかひと言もしてないだろう?」
四斗
「あっ、そうでした…」
北枝
「だろ?まったく…」
ナレーション
「そこへ…事務所内に電話が鳴り響く」
北枝
「あー…四斗くん取ってくれ」
四斗
「はいはい…(受話器取る)…もしもし?あ!どうもお世話になっております!…はい!あ、少々お待ち下さい!」
[保留音]
北枝
「…どした?やけに上機嫌じゃねぇか」
四斗
「だって…北枝さん宛に、十六張駅の駅長さんからお電話です!」
北枝
「おぉ、そうか…ん!?あの駅長からか!?」
四斗
「そうですよ!ほらほら!」
北枝
「わかってるよ!まったく…(保留解除)…お電話変わりました、安室です。…(声のトーンをワントーンないしツートーン上げる)あ、先ほどはどうもお世話になりました~!はい!(ここからトーンを戻す)…えっ?えぇ…この後ですか?一応大丈夫ですけれども…はい。分かりました。では、後ほどお伺いいたします。はい。失礼致します~」
[終話]
四斗
「…何のお電話だったのですか?」
北枝
「今回の事件の報酬、向こうから支払ってくれるってよ!」
四斗
「え!本当ですか!?」
北枝
「あぁ!これから報酬額の相談に行ってくるから留守は任せたよ!」
[颯爽と北枝は外出する]
四斗
「(呆然と)…報酬の話になると動くの早いなぁ」
四斗
「まぁ、久々の売上げだから余計に張り切っているのかもなぁ…(苦笑)…さて、何も無いと思うけど…郵便は何か届いているかな~?」
[ポストを開けると、1通の封筒が入っていた]
四斗
「…ん?封筒だ…差出人は、無し」
[表裏見返しても、届け先の事務所の住所しか書いておらず封もしておらず軽く綴じてある]
四斗
「…とりあえず、事務所に戻って開けてみるか」
[事務所に戻って来た四斗は封を開けて中から手紙を取り出す]
四斗
「手紙だ…なになに?」
[しばらく読み進める]
四斗
「…これって…!」
(間)
【PM7:00、探偵事務所】
[北枝が駅長との打合せを終えて帰宅]
北枝(陽気に)
「戻ったぞ~いやぁ~今日はいい日だぞ~!このまま打ち上げと行こうじゃないか~!」
[四斗の表情が暗いのに気づく北枝]
北枝
「…四斗くん?どうしたんだい?」
四斗(暗い表情で)
「あ、お疲れ様です…」
北枝
「…何か、俺が出かける前より暗くない?もしかして、俺と一緒に行けなかったのがそんなにつらかったのか?寂しかったのか?」
四斗(暗い表情で)
「…今、そんなボケ要らないです」
北枝(ちょっと怒り気味に)
「ちょ、『そんな』とは失礼な!じゃあなんだって言うんだい!?ん!?」
四斗(暗い表情で)
「…これ、見て下さい」
[四斗は読んだ手紙と入っていた封筒を渡す]
北枝
「ん?封筒と手紙…?俺が出掛けてから先に読んだんか?」
四斗
「はい。最初、差出人が分からなかったので先に読ませて頂きました…」
北枝
「ふむ、なになに…?『テナント各所様へ 日頃より当ビルをご利用頂き誠にありがとうございます。さて、当ビルは建物の老朽化に伴い、解体工事を決行する事を決定しました。つきましては急で大変申し訳ございませんが、今月末までに必要な物の全撤去をお願い致します。オーナーより』」
(間)
[読み終わってから沈黙が流れる]
北枝
「…え"?」
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