電波操作による洗脳に対抗するためにはしっかりと睡眠を摂る必要がある。逆に言うと、彼らの工作は対象者の睡眠を奪うところから始まる。

 

 スパイからはっきりと工作を受けるようになった当初は電波操作があからさまには実行されていなかった。彼らは睡眠を奪うところから始め、部屋の周りからノイズを流し続けた。昼間は道路や上の部屋からドリルの音が響き、夜になるとビープ音が響き続けていた。当時は香港に住んでいたので、その工作を実行していたのは中国のスパイである。

 

 その時期はほとんどの時間をベッドの上で過ごしていた。このような状況下で寝ることは出来ないが、それでも眠くなる時があり、そのタイミングでしっかりと寝られるようにずっとベッド上で待っていた。

 

 睡眠が不足すると集中力が極端に低下する。中国の警察が容疑者を落とすために睡眠を奪うのは以前から理解していた。また、上の部屋からは水を流す音も長時間に亘って続けられていたため、彼らの意図がどこにあるかはすぐに分かった。

 

 これは電波操作においても同じである。まず、対象者の睡眠を奪って、洗脳にかかり易い状態にする。対象者は集中力を失うだけでなく、頭の中で異常な妄想が生み出され易くなる。あるいは、電波操作によって作られた妄想を信じるようになってしまう。また、同時に感情のコントロールも難しくなる。不安感や鬱は一次的感情で単純な周波数でコントロールでき、睡眠不足下においてはその振れが更に激しくなり、メンタルバランスがおかしくなっていく。

 

 当初から、この工作に対抗するために使っていたのがウォークマンだった。ウォークマンにはノイズキャンセルの機能があり、ホワイトノイズが流れてくる。これを利用すれば水を流す音やビープ音の一部をキャンセルすることが出来た。ただし、ウォークマンのホワイトノイズは30分しか続かないため、その間に寝られなければ何度も起動してホワイトノイズを出し続ける必要があった。

 

 2年間はこうやって対抗していたが、その後、睡眠導入音楽に変えた。定住するようになってから脳波の勉強を始め、その中でEEGバイオフィードバックという手法を知った。睡眠導入音楽を聴くと脳内ではガンマ波やデルタ波が発生し、睡眠に誘ってくれる。これで睡眠の状況は劇的に改善した。ホワイトノイズ以上に外部の音を遮断することができ、また寝られるという確信を回復した。寝られないというのは自信の問題でもあり、寝られないという不安感だけで寝られなくなる。その問題は睡眠導入音楽で補償される。

 

 とは言え、ずっと電波工作を受けているため睡眠は依然として完全ではない。一方で、十分な睡眠を摂れるようになると、起きている間にいろんな作業が出来るようになった。