疑心暗鬼の中でグアムの事件報道を見ていると、犯人は脳内で声を聞き、その結果として犯罪を実行したと伝えていた。

 

 当時、僕は電波操作の存在を知らなかった。脳に直接的に声を届ける方法があることも知らなかった。それでも、毎朝、変な夢を見続けており、ずっと声を聞いているような気がしていた。あまりにも気持ち悪くなり、無理矢理起きると夢も見なくなり、声のようなものも止まった。

 

 グアムの殺人犯は声を聞いている。それは自分が考えていることと平仄が合っていた。つまり、スパイは遠くから声を届ける技術を持っているのかも知れない。それから、どういう技術でそれが支えられているのかを考え始めたが、どうやって壁を越えて安定的に声を聞こえさせるかは分からなかった。今度は逆に、物理的に音声を届けるための技術的制約について考え始め、それらをどうやって乗り越えているのかに思案を巡らせていた。

 

 起きている間に声がはっきりと聞こえだしたのは3月末からだった。ホテルの部屋にいると、突然、知り合いの声が聞こえてきた。それはホテルの窓の向こうから送られてきているのだと思った。当時は北海道にいたが、沖縄にいた時の声の原因はこれだったのかと思った。

 

 しかし、その認識は完全に間違っていた。その声は直接的に脳に届けられており、それに気付くのに数日掛かったような気がする。どうして脳に直接届いていると気付いたかと言うと、体が操作されるようになったからである。ホテルの部屋の中をぐるぐると走り回り出し、自分自身ではそれを止めることすら出来なかった。それは間違いなく音による制御ではなかった。電波を通して脳がコントロールされている。その事実に気付くのが4月の初めだった。

 

 その事実がすんなり受け入れられたのには訳がある。実は、僕の友達は以前にこの技術について話をしていた。つまり、体が遠隔的に操作される話や、脳が電気で動いている話をしていた。それに加えて、僕は過去にそれと似たような現象を見たことがあり、また、自分自身も体のコントロールを失ったことがあった。それまでは単なる偶然で起こっていると無視していたが、実は外部からコントロールされている物理現象だとその時に気付いた。

 

 この春以降、電波を通して明らかに僕の体や脳を制御するようになった。声や感情以外にも、思考や感情もコントロールされていた。それは間違いなくスパイがやっていた。それは僕がそれまでにスパイに狙われており、実際にCIAは僕を勧誘すらしていたからである。それ以降も僕は追い回されていたが、日本に帰ってからの主力はCIA、公安、そして彼らのアセットだった。つまり、電波操作も彼らが実行していた。