当初、この海軍ヤードの銃撃犯は見知らぬ男女に付きまとわれているという主張から始まり、彼らの声が壁を通して聞こえると変遷していた。それがそのうち、マイクロ波の被害を受けていると変化する。そして、彼は最終的にELFの攻撃を受けているという認識に至る。

 

21 アナログ変換と同期

 

 彼はこの電波操作を3ヶ月間受け続け、最終的に銃撃事件へと発展する。この3ヶ月という期間に関しては長いとも言えるし、短いとも言える。僕の場合は最初からスパイに狙われていたので、すぐに新しい工作技術だと思った。そして、それが電波だと比較的すぐに気付いたのは、それまでにそのような症状を経験したことも見たこともあり、かつ、そのような現象について語っていた友達がいたからである。彼らがスパイとして工作に参加していることはその時点までに分かっており、だからこそ一週間もかからずに、それが電波工作であることに気付いた。

 

 逆に言うと、そういう状況でなければ何が起こっているかは気付かないかも知れないし、物理的な意味を考えないかも知れない。実際に、それまでの間もこの電波操作の被害を受けていたにも関わらず、そんな存在を考えたこともなければ、目の前で起こっている事象は偶然の産物であり、自分のおかしな症状も別の理由で説明していた。

 

この犯人は電波操作という結論に至る過程でマイクロ波から超長波へと認識を変えている。この二つは同じ電波であるが、マイクロ波が300MHzから300GHzであるのに対して、超長波300Hz以下の電波である。脳波は超長波であるために、声が聞こえたり、体が制御されたりするような直接的な影響が出ていれば、それは超長波の可能性が高いと思い至るかも知れない。しかし、そのためには元から電波に関する知識を持っていなければならない。

 

 実は、彼は海軍で航空電機計器整備員として働いていた。だからこそ、軍設備へのクリアランスを持っており、また電設工事の仕事にも携わっていた。つまり、この実行犯は最初から電波についての知識があった。海軍の艦載機で使われているレーダーはマイクロ波を使っており、それを照射することで敵の存在を把握している。一方で、潜水艦の無線電波には長波が使われており、それは水面下にも届くため、海の中での活動がより容易になる。

 

 この事実は、彼が最初から電波に関する詳しい理解を持っていたことを意味する。それ故に、彼は3ヶ月の被害の間に、それが超長波による被害であると突き止められた。一方で、そこまで行き着けても最終的には電波を通して洗脳され、多くの被害者を生み出す銃撃事件を実行している。それは電波操作が簡単に逃げられるようなものではないことを意味している。