以下は「対少子化政策の論点」第9章から抜粋。

 

 

待機児童数

 

待機児童問題は解決すべきである。これも具体的な目標ではあるが、子育て支援にまつわる社会保障制度の中で最大の問題と言える。この問題は解決を図られるべきであるが、どのようにその解決を測るかには議論の余地がある。

基本的には待機児童をゼロにすべきである。ただし、常に即時に保育所に入れる状態というのは、保育所が常に未定員の状態にあることを指しており、それは付加的に保育コストが上昇することを意味している。つまり、常に未定員状態を作ることによって、その未定員分のコストまで、追加的に保育サービスの利用者が負担することになる。

 

本稿で議論したが、保育所の受け入れ能力を季節的に増減させれば、常に一定期間後に定員の余剰が生み出されることになる。そういう制度設計にすれば、常に未定員状態に近接しながら、保育所側にとっては付加コストが掛かりにくい状態になり、システム上に更なる追加コストが掛かることを防ぐことができる。

ここで一つだけ問題が残る。一定期間だけ、待機児童が生み出されることになる可能性がある。うまくシステムの中で吸収される可能性もあるが、瞬間的に定員を超える可能性がある。ただし、長期の待機児童はなくなるだろう。問題となるのは待機期間をどれくらい短くできるかということになる。一年のうちのある時期では待機児童問題はなくなるが、季節が過ぎるに従って保育サービスの需要が増加し、ある瞬間において、需要が供給を上回る可能性はある。しかし、その後にまた供給が増えるように制度設計されているので、少なくとも数か月以内に解消される必要がある。そうなると、どこまでの待機児童が許容できるかということになる。待機児童の季節性の問題は0歳クラスに大きく現れるもので、その季節的定員を4月、9月、1月と変化させていくのであれば、そのタイミングごとで待機児童はゼロにできるはずである。そう考えると、制度設計上は待機児童状態を3か月以内に解決することはできるはずである。つまり、3か月以上の待機児童をゼロにすることは目標とできるはずである。

 

育休法は半年までの育児休業の延長を認めており、待機児童が3か月以内であれば、子育て世帯への影響を社会全体として限定的にすることができる。そして、行政もコストを抑えながら、待機児童対策に取り組めることになる。もちろん、即時の待機児童ゼロも可能であるが、それは行政のコスト負担が増加するだけでなく、保育費用も増加することになる。高い保育費用は少子化の要因であり、待機児童問題が解決できたとしても、保育費用が高いままであれば、対少子化政策としての意味はかなり限られたものになる。この二つの問題は同時に解決する必要があり、それを考慮しながら、また他の社会保障制度とのバランスを測りながら、待機児童問題に対してどのような目標を持つべきか考える必要がある。