以下は「対少子化政策の論点」第9章から抜粋。

 

 

子育て制度利用

 

参照となる指標の最後に子育て制度の利用を挙げる。子育て制度の利用度は必ずしも直接的に出生率に繋がるものではない。ここまでの指標が基本的には出生の近接要因に基づいていたものであったのに対して、子育て制度は出生の間接要因に過ぎない。しかし、子育て制度がしっかり整っているかどうかは、国民の出生意欲に大きな影響を与える。かつ、その制度設計は行政の責任の元にあり、行政がより直接的に関わることができるものでもある。

 

図7-1 子供を産み育て易い国か 

内閣府, 2011 少子化に関する国際意識調査報告書

 

図7-1の子供を産み育て易い国かという設問は内閣府の調査の中で聞かれているものであるが、

この産み育て易さというのは対少子化政策の重要な目標の一つである。子供が産み育て易い国でなければ、出生率は低くなるであろう。特に、先進国という枠組みにおいては、この子供の産み育て易さと出生率は関連していると考えられる。

どのようにすれば子供を産み育て易い国だと認識されるかは難しい問題であるが、かなりの部分において、それは社会保障制度の設計の問題であり、その設計をしっかりすれば、より多くの人が日本は子供を産み育て易い国だと認識するようになり、ひいては出生率も改善するものと思われる。

 

表7-2 子育てにあたって利用した制度 

 

内閣府, 2011 少子化に関する国際意識調査報告書

 

そして、更に重要なのはある制度が存在するか否かと言うことだけでなく、それが利用し易いものかどうかということである。表7-2は子育てにあたって利用した制度を調べたものである。これも同じ内閣府の調査に依るものである。この子育て制度の利用状況をしっかりと把握することによって、より良い制度設計は可能である。

ただし、その利用状況を測る上においては、日本の状況を前提として考える必要がある。日本においては、乳幼児期の母親の就業状況にいろいろなタイプがあり、ある制度の利用状況はその母親の母集団がどのような構成をしているかに依存する。つまり、仕事と子育ての両立を志向する母親は産前産後の休業制度を利用するものの、専業主婦を志向する母親はその制度を利用しない。それらの母集団の状況を前提としながら、それぞれの制度の利用状況を判断する必要がある。どれくらい頻繁に利用されているかも重要であるが、それ以上に、その母集団に対してどれくらいの人が利用しているかが重要である。

 

図7-5 女性の育児休業取得の状況 

厚労省,  21世紀出生児縦断調査

 

図7-7 男性の育児休業取得の状況 

厚労省,  21世紀出生児縦断調査

 

図7-5は女性の育児休業取得状況であり、図7-7は男性の育児休業取得状況である。育児休業の利用状況は今後も引き続き調査される必要がある。就業女性の育児休業利用は十分に進んでおり、正社員という枠組みにおいて、利用という意味では問題がないと思われるが、それは非正規就業の女性には当てはまらない。乳児を抱えつつ育児休業が取れず、そのまま非正規として就業している母親の比率はかなり高い。もちろん、そもそも乳児を抱えながら非正規で就業をしている女性の比率は低いが、それでも、現状に問題がないというわけではない。しっかりと改善策を練り、状況を好転させる必要があるだろう。

それ以上に、注目に価するのは男性の育児休業の利用度の低さである。制度としてはある程度整備されており、法的に保障されている制度であるにも関わらず、社会的要因により、制度がほぼ利用されていない。その利用状況の低さは文化的要因に起因していると考えられるが、その同じ文化的要因によって、男性が仕事と子育ての両立を志向している女性の状況を正しく理解できていない現状があり、あるいはその文化的要因は家庭における母親と父親のあり方にも大きな影響を与えている。もちろん、その文化的なものを変えることは難しいかもしれないが、少なくとも、男性はもう少し女性の現状に理解を示す必要があるように感じられる。そのためには、父親の育児休業取得は効果的であり、その取得状況はしっかりと調査されるべきであり、また改善されるべきである。