以下は「対少子化政策の論点」第9章から抜粋。

 

 

結婚率

 

結婚出生率と対になるのが結婚率である。単純な計算においては、結婚率と結婚出生率を掛け合わせると、合計出生率となる。もちろん、実際上の計算はそれ以上に複雑ではあるが、根本的な考え方として、その計算方法は正しい。

図3-3 生涯未婚率 

総務省, 2010 国勢調査/50歳時点で結婚経験がない男女の全体に対する比率

 

図3-3は生涯未婚率を表したグラフである。生涯未婚率とは50歳時点で一度も結婚したことがない人の比率のことを意味している。もちろん50歳以降に初婚を迎える人もそれなりに存在するが、女性において50歳以降の出産はかなり難しく、出生率を考える上では50歳時点で一度も結婚をしたことがないという比率は意味がある。

この生涯未婚率の反対になる概念が結婚率である。つまり、結婚率=「1-生涯未婚率」となるわけである。結婚率には男性の結婚率と女性の結婚率があるが、子供を産む能力があるという意味において、男性の結婚率よりも女性の結婚率の方が重要な数値となる。この結婚率には一つの欠点がある。それは速報性に欠けることである。ある世代が50歳に到達すれば、その結婚率がどれくらいになるかは正確に分かるが、その状況を少子化に活かそうとしても、既に出産可能年齢の外に出ており、政策に活かすことは難しい。バックミラーを見て運転をするのと同じようなものである。もっと若い年齢の時点で、結婚率がどうなるか、結婚がどうなるかを把握する必要がある。

 

図3-6 40-44歳女性の未婚率 

総務省,  国勢調査/横軸はそれぞれの調査年度

 

そこで注目されるのが、40-44歳の未婚率である。図3-6は40-44歳女性の未婚率を表したものである。日本の結婚の統計を見てみると、40-44歳以降に大幅に結婚率が上昇するということはない。ある世代においては、この40-44歳の未婚率と生涯未婚率は極めて近接した数値となる。それは男性よりも女性において、より当てはまる。40-44歳の未婚率は生涯未婚率よりも5-10年早く数字が出てくることになるので、それだけ速報性を持つ数字となる。そして、生涯未婚率と近接しているという意味において、ある程度の正確性も担保されている。その意味において、生涯未婚率の先行指標として、40-44歳の未婚率を把握しておく必要がある。

 

図3-7 25-29歳男女の未婚率 

総務省,  国勢調査/横軸はそれぞれの調査年度

 

一方で、より出生率にフォーカスした結婚率を考えるのであれば、25-29歳の未婚率が重要であろう。図3-7はその時系列グラフである。日本では婚姻内で子供を儲けることが多く、そういう前提の中で、若年層の出生力を把握するのであれば、25-29歳の未婚率が重要となってくる。

25-29歳の未婚率は上昇しているが、それを反転させることができれば、出生率は上昇する。行政として、25-29歳の結婚率を上昇させるということが正しい目標なのかどうかという問題があるが、少なくとも、25-29歳の未婚率を参照指標として把握しておく必要がある。そして、この動向を見極めながら、政策の調整をすることが必要となってくる可能性がある。

 

図3-16 20-24歳男女の結婚意思 

厚労省,  出生調査第9-14回、それぞれ1987年、92年・・・、2010年となる

 

図3-16は20-24歳男女の結婚意思を表したグラフである。これは出生調査の独身調査の中で調べられている項目で、いずれ結婚したいかと問うものである。この20-24歳時点で将来の結婚意思がない人は、おそらく結婚しない可能性が高い。特に、女性の生涯未婚率の動向と20-24歳時点の結婚意思は関連している。そもそも結婚に価値観を置いておらず、それは価値観レベルの問題であり、その考え方が変わる可能性が低い人たちである。もちろん、結果として結婚できない人も多く、全ての生涯未婚者を価値観の問題で説明できるわけではないが、多くの部分は価値観に起因していると説明することができる。その意味において、20-24歳時点の結婚意思というのは重要な指標である。なぜなら、この指標が一番速報性に優れた指標だからである。

 

図3-9 結婚相手と知り合うきっかけ(主要4要因)

厚労省,  出生調査/第11回から14回を合成/横軸は結婚時期

 

ここまでは直接的に結婚率に関わるものを扱ってきたが、結婚率を考える上で重要な指標を違う観点から少し挙げたい。その一つが図3-9で示されている結婚相手と知り合うきっかけである。結婚相手との出会いにはいろいろなものがあるように見えるが、実際のところ、主要3要因がほとんどを占めている。それは見合いを通して、友人・兄弟を通して、職場を通しての三つである。ところが、見合い結婚が忌避されるに従って、人が知り合うきっかけは友達、家族、仕事に集中することとなった。学校で知り合うことを含めて主要4要因としても、いずれにせよ、結婚相手と知り合う機会の幅がそれほど拡がっているわけではない。

結婚相手と知り合うきっかけは実は限られている。世の中は機会に溢れているように見えるが、実際には、極めて現実的なところで夫婦は出会っているのである。ただ今後どうなるかというのは定かではない。特に、もっと広範に出会う機会が提供されないと、結婚率の上昇は見込めないし、また晩婚化が改善するということもないであろう。その意味においても、結婚相手と知り合うきっかけを捕捉しておく必要がある。

 

図3-18 男性年齢別有配偶率(正社員とそれ以外)

厚労省, 2010 雇用状況実態調査

 

図3-18は男性の年齢別有配偶率を示したグラフで、それが正社員と正社員以外で区分されて表示されている。基本的に男性の結婚率というのは、出生率にそれほど大きな影響を与えるとは思えないが、この男性正社員と正社員以外の有配偶率の差は注目に価する。この有配偶率の差は結婚率の差によるものだと考えられる。

最終的な結論は、非正規社員の有配偶率を上げるということにはならず、非正規社員の正規化を促すということになるのかもしれないが、どのような方向性が導かれるにせよ、この状況を捕捉しておく必要はあるだろう。