以下は「対少子化政策の論点」第9章から抜粋。

 

 

結婚出生率

 

次は結婚出生率である。日本は結婚率が高く、婚外子率の低いので、多くの子供が婚姻内で産まれることとなり、夫婦がどれくらいの出生力を持っているのかを理解することは、少子化問題を考える上でとても重要なこととなる。

 

図4-1 結婚出生率の推移 

 

図4-1は結婚出生率の推移である。結婚出生率は一般的な概念であり、日本の現在の夫婦がどれくらいの出生率を持っているのか示す指標である。それが例えば2.0であるならば、現在の夫婦は二人の子供を持つことを意味しており、合計出生率と同じく、直感的にとても理解し易い指標である。ただし、結婚出生率は合計出生率以上に特殊な計算を必要としている。統計として公表されていないデータもあり、多少のテクニカルな問題があるが、日本では大部分の子供が婚姻内で産まれてくるわけであり、その意味においても、結婚出生率をしっかりと把握しておく必要がある。

 

図4-2 結婚期間別・結婚出生率(1975年と2012年)

 結婚0年から19年まで/それぞれの数字を足すと結婚出生率になる

 

図4-2は結婚期間別の出生率を表したものである。結婚出生率は結婚期間別の出生率を合計したものであり、その計算の前提になるものである。その意味で、この二つはセットであると言える。そして、この二つの関係は合計出生率と年齢別の出生率の関係に似ている。つまり、結婚出生率は一つの数字であるが、それを多角的に理解するためには、分解した形の結婚期間別出生率を理解する必要がある。

結婚期間別出生率の使い方として、結婚期間を何年間か合わせて見る方法がある。つまり、結婚4年目までの出生率や、結婚9年目までの出生率を見るということである。結婚4年目にどのような出生率を持つかも重要であるが、それ以上に結婚4年目までにどれだけの子供を儲けているかの方が重要であり、ある一定の結婚期間を足し合わせて考えることによって、それぞれの時期での出生動向がどのように変化しているか把握することができる。

 

図4-19 理想の子供の数(結婚開始年齢別)

厚労省, 2010 出生調査/横軸は結婚開始年齢/縦軸は子供の数

 

結婚出生率を多角的に見る方法は結婚期間別の出生率という観点以外にも存在する。図4-19は理想子供数のグラフであり、それも結婚出生率を考える上で重要な項目である。理想の子供の数は出生調査で聞かれている調査項目である。他の調査でも同様の質問項目はあり、どの調査がより優れているということではないが、出生調査では過去からの時系列データが揃っているので、より適した参照指標であるように思われる。

この理想子供数は結婚出生率に影響を与えている概念である。その通りの子供の数を持つことは難しいのかもしれないが、多くの夫婦がその子供の数を理想として、家庭を築いているわけである。この理想子供数が二人を超えて、ある一定のレベルを保っている限りにおいては、日本にはまだ未来があるということも意味している。これも重要な指標であると言える。

 

図4-25 母親就業別の二人目出産動向 

厚労省,  21世紀出生児縦断調査/2001年生まれの子供の母親が対象/第2、3、4、5回調査はそれぞれ子供の年齢、1歳半、2歳半、3歳半、4歳半

 

表4-26 独身女性のライフコース希望 

厚労省, 2010 出生調査・独身調査

 

図7-4 出産女性の就業状況 

厚労省,  21世紀出生児縦断調査・出産半年後(平均)の状況

 

図4-25は母親就業別の二人目出産動向である。母親の就業状態によって追加出生力に差があるのかを表しているものである。表4-26は独身女性のライフコース希望である。そして、それぞれのライフコース希望ごとの希望の子供の数も付記されている。そして、図7-4が実際の出産女性の就業状況である。

これらは全て、女性のライフコースと出産の状況を扱ったものである。どれが優れているということはなく、全てが参照指標となるべきものだと考えている。基本的には、独身女性がどのようなライフコースの希望と子供数の希望を持っているかを理解することと、それが実質上にどのような影響を与えているかを理解する必要があるということである。また、それらが一回の出産だけでなく、追加出生力へも影響を与えていないか把握しておく必要がある。

結婚出生率という意味では、これらの状況を調査することで一定の理解を得ることはできる。ただ女性のライフコースの理想と現実をも含めて理解するのであれば、もう少し子供が成長した家庭の母親の状況も調査する必要があるのかもしれない。日本の女性のライフコースの選択の中では、依然として、出産後再就職を目指す女性が大きな塊となっており、彼女たちの状況を理解するためには、出産前後の母親の動向だけでなく、例えば小学低学年の児童を持つ母親の動向等も調査する必要があるかもしれない。いずれにせよ、女性のライフコースの変化と出産動向を調べ、そこに社会保障の瑕疵がないかどうかを理解することは重要である。