以下は「対少子化政策の論点」第9章から抜粋。

 

 

合計出生率

 

出生率を引き上げることこそが対少子化政策の最終的な目標と言える。本稿の最初に議論したが、出生率を表現する方法は多数ある。その中で最もストレートで分かり易いのが特殊合計出生率である。

 

表1-4 過去の出生率とコホート出生

厚労省,  人口動態調査/下段は出生年ごとに変換したコホート出生率

 

表1-4はその特殊合計出生率の推移表である。1925年時点では、日本の出生率は5.1あったのに対して、2010年時点では1.39である。合計出生率の利点は、これらの数字は一人の女性が産む子供の数へと変換されて認識されるところにある。そして、その変換には間違いはない。世の中には男性と女性が存在するので、この合計出生率の数字が2.0を超えるどこかのレベルにないと、人口は減少すると直感的に理解することができるため、この数字はとても分かり易く、この概念はとても扱い易い。

この表では合計出生率だけではなく、コホート出生率も取り上げている。コホート出生率は表1-4の下の表になるが、1931-35年生まれの女性のコホート出生率は2.08となっている。これも計算方法は違うものの、合計出生率と同じ概念で構成されているため、直感的に理解し易い。コホート出生率の魅力は年代ごとの出生力が分かる点にあり、その点においては合計出生率よりも優れている。例えば、1931-35年生まれの女性が生涯に2.08人の子供を産んだのに対し、と1961-65年生まれの女性は生涯に1.69人の子供を産んでいることになる。一方で、コホート出生率はその年代が50歳になるまで最終的な出生率が分からないため、速報性に欠けるデータではある。合計出生率にはその速報性があり、それが合計出生率の概念の優位性でもある。

 

図1-1 出生数 

厚労省, 2012 人口動態調査

 

合計出生率とコホート出生率の次は出生数である。図1-1はその出生数であるが、戦後すぐの出生数が250万人を超えていたのに対して、現在では100万人超の出生数が続いている。出生数そのものよりも、人口1000人当たりの出生数の方が重要かもしれないが、具体的に何人の子供が産まれているのかというのも重要である。当面の人口を考えるならば、1000人当たりの出生数と1000人当たりの死亡数を比較し、それに移民を加味することによって、人口の動向を理解することは可能であるが、もっと遠い将来のことを考えるのであれば、結局、どれくらいの子供が産まれているのかということが重要になってくるはずである。確かに、出生数は絶対数であり、何かの比率として表現できるものではないので、合理的な指標とは言えないかもしれない。ただ一方で、1000人当たりに何人の子供が産まれたと考えるよりも、何人の子供が産まれたと考える方が分かり易いのは間違いない。

 

図4-8 年齢別出生率を向上させる概念図 

 

図4-8は年齢別の出生率であり、どうすれば少子化から逃れられるかを模式化したものである。つまり、より若年層の出生率を上げるのか、あるいは現在の出産ピーク年齢の出生率を上げるのか、それとも晩産化を支援して、高年齢層の出生率を引き上げるのか。どれか一つが答えと言うことはなく、これらの結果が合わさったものが、最終的な出生率の向上になると考えている。

この年齢別出生率を把握しておくことには重要なメリットがある。合計出生率の数字はこれらの合計の数字ではあるが、一つの数字に過ぎず、どうして数値が上昇したのか低下したのかがそれだけでは分からない。一方で、年齢別の出生率を見ると、少なくとも、どの年代の出生率の変化が全体の変化を導いているのかを理解することができる。つまり、より多角的に出生率の状況を理解することができる。