警察の組織上、公安は警備局の中にある。この局には根本的に2つの異なるラインがあり、それは警備畑と公安畑である。両方とも治安関連の業務に関わるが、警備がSPや機動隊等の純粋な警備に関わる一方で、公安は諜報業務に携わる。

 

 この2つのラインは共に警備局の下にあるため、敵対した関係にはない。ただし、公安畑のエリート全てが警備畑のキャリア官僚を受け入れるとは限らず、この点が重要になってくる。と言うのも、警備局長には公安畑出身者も警備畑出身者も就任するからである。

 

 このような仕組みの中では、公安活動にそれほど好意的ではない人材が警備局長になる可能性がある。あるいは、公安畑であっても、裏工作ラインからかなり遠くにいる人物が警備局長になる可能性もある。

 

 こういう状況の中で裏工作ラインが完全に裏工作を指揮するためには、実は、裏理事官のポストだけを抑えれば良いことになる。警備局長が誰であっても、警備企画課長が誰であっても、裏理事官の人事さえ抑えられれば、他のラインの警察官僚に裏工作の実体が露見しない。

 

 それが明確に現われている事案が2000年時に警察官僚が倒れた事件である。佐藤警察庁次長、林刑事局長、金重警備局長と相次いで倒れ、それはほぼ電波工作の影響である。そういう工作が実行できたのは、彼らが電波工作技術を知らなかったからである。それは電波工作能力がずっと秘匿されてきた結果であり、裏工作ラインに属していなければ、この工作能力を分からなかったからである。

 

 また、この事実は電波工作能力を知らない人間が警備局長に依然として就任していたことを意味している。一方で、この時に倒れなかった警察幹部は長官と石川重明官房長であるが、その官房長は裏理事官出身であるため、電波工作能力を知っている。

 

 つまり、裏工作ラインにいる警察官僚だけがこの電波工作を知っており、それは裏工作が完全に彼らに支配されていたことを意味している。そうでなければ、政治家ももっと前にこの工作技術に気付いているはずであり、多くの人が電波工作の餌食にはならなかった。

 

 この技術を知っていたのは裏理事官経験者だけでなく、実際に工作を行っていた公安職員と一部の公安畑の警察キャリアも知っていた。それだけでなく、警備畑のキャリアの中にもこの工作能力を知っていた人はいただろう。と言うよりも、関わった人たちがいただろう。

 

 この事実が意味しているのは、この裏工作機関がどのように運営されていたかを知るためには、裏理事官経験者を全て尋問すれば良いということになる。それに該当する人物は20人もいないので、簡単に全てを尋問できる。