それから数日後、朝起きると突然チャイムが鳴った。何が起こったのかと思ってインターホンに出ると引っ越し業者であった。

 

 香港に着いてからそれほど日にちは経っていなかったが、いろいろなことがあったせいもあり、日にちすら完全に分からないようになっていた。自分の計算の中では引っ越しはその翌日であったが、完全に感覚が壊されていた。

 

彼らの洗脳は何十日も時間の感覚をずらすことはできないが、1日くらいであれば簡単に操作できた。それが電波操作によるマニピュレーションの現れ方でもある。

 

 その時点で自分にできることは2つしかなく、引っ越しを延期するか、そのまま荷物を詰めるかであった。そして、すぐにこのまま香港には残れないと思った。スパイはおそらく引っ越しを遅らせるためにこの工作を仕組んだと思うが、ここで延期してしまうと引っ越しが何日後になるか分からず、自分がこのままここに留まっている死ぬ確率が高まると思った。

 

 そこで、業者にお金を渡して30分だけ待って貰い、その間に自分が日々の生活で必要になるものだけを必死で取り分けた。闇雲に選別したため数箱分になったが、少なくて困るよりも多い方が良いと思っていた。予定通りにここを離れるためにも、引っ越し先で普通の暮らしを送るためにも、それだけは最低限の必要な作業だと思った。

 

 その後に業者の人がパッキングしている横で自分も自分の荷物の最終パッキングをしていた。全ては昼過ぎに終わり、思ったよりも早く終わった。全てが片付いた部屋を見ながら、少しだけ過去に起こったことを振り返っていたが、これ以上そこに残っていても仕方がなく、予約しておいたホテルに向かうことにした。

 

 それでも、依然として当時は半信半疑であった。日にちがずれているのは分かったが、何の日にちがずれているのかが分からず、ホテル予約の日にちが合っているのかや飛行機のチケットが正しいかも、全てのプランが分からないようになっていた。

 

 ただ、ともかく、全ての作業を終わらせる必要があり、自分でパッキングした数箱の荷物を1階までまず持って降ろした。元々は何回かに分けて郵送しようと思っていたので、これだけの量を一気に処理することになるとは思っていなかった。

 

 タクシーのトランクと後ろの座席を使うと全ての箱は詰め込め、そのまま郵便局に行ったまでは良かったが、あまりにも量が多すぎて、どうやって郵便局の中まで運び入れれば良いか分からなかった。小包のカウンターは建物の中程にあり、サイドにある入り口からは更に遠く、全部で100メートルくらいありそうだった。

 

 何回かに分けて持ち込む必要があったが、箱を無人のまま放置できないので、仮置きする場所を決めて、何回かに分けて走りながら荷物を運び入れた。かなりの距離にはなったが、彼らの工作には何としても落ちないぞと思いながら必死で走った。

 

 

ご一緒に、ご覧ください。

http://ameblo.jp/multifractal/entry-12161548433.html