ここまでは、ほぼホテルの一室に泊まっていたが、バンガロータイプの場所に泊まった時、その日はビープ音が鳴らなかった。これはうまく行くかも知れないと思ったが、それは甘い期待に終わり、夜の途中から蝉が鳴き続けた。それも全く同じリズムで休むことなく鳴き続けた。まるで録音されたかのように鳴き続けた。

 

 この真偽は今でも付いていない。蝉を捕ってきて自分の寝ている場所の傍に放すこともでき、実際に録音の音を流すこともできる。この先にも同じようなことは何度もあり、ある時は違う部屋から録音を流しており、ある時は捕ってきた虫を放していた。それが分かったのは虫が入り込めない排気口の中に虫を放して、そこに閉じ込める形で一晩中虫を鳴かせているのを発見したからである。

 

 その時がどういう状況だったのかは分からないが、あまりにも腹が立ったため、そこから外に出ないことにした。特に、そこは独立したバンガローになっているため、自分が外に出なくても問題が起きるような状況ではなかった。どれくらいそこに籠もりだしたのかは覚えていないが、2日目になるとホテルの人が外に出るように頼みに来た。

 

 その間は何も食べておらず、実効的にハンガーストライキを行っていた。それもあって、多くの関係者が困っているようであった。

 

 香港にいる間、ハンガーストライキはしないようにしていた。中国ではその行為は深刻な抗議と認識される。結果として自分の意思は尊重され、拷問が止まる可能性が高いが、同時に暗殺される可能性が更に上がる。香港では何度も死にそうになっていたので、ハンガーストライキまでして、更に自分の命を危険に晒す必要はないと思っていた。

 

 東南アジアではその特有の認識とカルチャーがないので、ハンガーストライキはそこまでの問題にならないだろうと思っていた。自分の行動を恐れていたのは日本にいた政治家や警察だと思う。ハンガーストライキが長引くと彼らに対する内的な批判が高まる恐れがあり、何としても止めたかったはずである。

 

 一方で、CIAが何を考えていたかは分からない。彼らは自分が死ぬのも一つの結果だと思っていたはずであり、ハンガーストライキは必要悪程度に捉えていたかも知れない。それは日本の公安を除いたすべての諜報機関のコンセンサスだったかもしれない。

 

いずれにせよ、ハンガーストライキを継続して、自分の向こう側にいる権力者を追い込もうと思っていたが、ホテルの人が何度も何度も催促に現われ、彼らに悪いと思ったので、何度目かの段階で中止した。この行為に一定の効果はあったと思うが、これで拷問が終わることはなく、また諜報機関の攻勢が落ち着くこともなかった。

 

 

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