公安はどこかの時点で政治的モチベーションを持った。自らの権力に服さない人たちを敵に仕上げるだけでも問題であるが、それだけでは必ずしも政治化しない。多くの人の自由を抑圧することは問題であるが、実際の公安の活動にはそれ以上の政治的な方向性がある。方向性のない国家主義は単なる権力志向となるが、公安の対象者の選別には思想性が含まれており、どこかの時点で公安の工作は政治化している。

 

公安の政治化は90年代以降に大きく進展しているはずだが、同時代の大きな政治事件としては80年代終わりにリクルート事件があり、90年代初頭には東京佐川事件がある。しかし、これらに公安が深く関わった形跡はなく、前者は特捜部案件であり、後者は捜査二課と四課の案件であった。つまり、これらの時点では、公安が現在ほどの政治化していなかった可能性が高い。

 

日本の政治の流れの中で重要な転換点となるのは1993年であり、その年に55年体制が崩壊する。自民党が下野すると共に政治が流動化したため、政治的工作の余地が上昇した。この1993年に至る過程も調べたが、公安が事件化に関わっていた形跡はなかった。55年体制崩壊は金丸信の事件から始まり、警察が政治に介入する契機は多分にあったが、その行動は抑制的であり、必要以上の事件化を行っておらず、また、ほぼ全てが刑事事件として扱われており、公安が事件に絡んでいる要素はなかった。

 

公安の工作活動を考える上で重要になるのが、ISと呼ばれている内部情報システムである。これは90年代後半に確立された。この仕組みは全ての捜査情報を網羅し、それらを公安情報として汲み上げるシステムであり、日々の警察活動の中で得られた情報が一元的に警察庁の中に集まるようになった。この時点で公安情報が対左翼から、更に広範な一般情報/政治情報を含むものに変化する。

 

このシステムが確立されたことによって、公安が政治的に工作を行う機会と手段が増えた。これと同時に、電波操作によって相手をマニピュレートする技術も向上していくが、それもかなりの長期間において公安の裏部隊によって独占的に使用されていた。これらは公安が権力を確立する手段を持ったことを意味しているが、これだけでは公安は政治化しない。純粋に権力を高める行動を推し進めるかもしれないが、彼らの思想性はこの手段によっては生み出されない。

 

 つまり、公安が政治化するためには外的な要因が必要になる。それは公安の中から生み出されたものではなく、公安に外部から影響が加えられ、その結果として、公安は政治化している。

 

その中で最も可能性が高く、実際に影響を及ぼしたのが学生運動の延長戦である。警察のキャリア官僚にも学生時代がある。ほぼ東大生で構成されているとは言え、60年代に学生をしていれば、学生運動に参加していた可能性がある。逆に言うと、そのような経歴の学生の一部も警察は採用の対象としていた。当時の警察のキャリア採用がどれくらいいたかは分からないが年間30人前後だろう。そのほとんどが東大卒であるが、その中の数人が学生運動をしていても不思議ではない。

 

実際に、その当時に採用された警察のキャリアを調べると、学生運動に関わっていた可能性の高い職員がいる。あるいは、少なくとも共産主義や社会主義に大きく影響を受けた職員がいた。彼らは非左翼化されたと思われていたが、長い時間を掛けて権力の中で勝ち残り、公安の工作能力を自らの政治目的に利用した。実際に彼らが公安として政治化した状況証拠は多数残されている。

 

この工作の中には電波による政治工作も含まれている。ここで重要な問題が更に起きる。彼らは公安内部に勢力を築いており、彼らの部下を工作に徴用しているが、それと同時に、同じくらいに信用しているスパイである左翼過激派も工作に徴用している。そのため、電波工作には時として左翼過激派の影響が色濃く反映されている。それは公安の代理として左翼過激派が電波工作を行っているからである。

 

 左翼過激派が電波工作を行った場合、それが多くの市民に影響を及ぼせば実質的にはテロであるが、実際には電波工作がそこまで認知されていないために、それらの事件の本質的な原因は認識されていない。しかし、彼らがこの工作を行えるのは公安のスパイだからであり、公安から技術供与を受けているからである。つまり、もっと根本的な問題は公安にあり、全ての被害の責任は公安にある。

 

 公安畑のキャリアはこのような状態を維持したいと思っている。つまり、公安の裏工作部隊を違法工作に投入するだけでなく、一部の工作を左翼過激派が担い、そうすることで自らの存在意義を高められる。また、左翼過激派と一体化しているキャリアやキャリアOBにしてみれば、このような形で彼らの政治的モチベーションを満たせる。つまり、自らの理想とする考え方を日本で実践できるようにするために政治的工作を行う。

 

公安がこの状態を維持するためには、どうしても左翼過激派が必要になる。しかし、彼らには後継者が圧倒的に不足しており、その問題を解決する必要がある。その問題さえ解決できれば、左翼過激派が存続し、公安は存在理由となる敵を確保でき、同時にスパイとして彼らを徴用できる。

 

それを達成するためには、公安は左翼過激派のリクルーティングを助ける必要がある。公安内にいる過激派シンパがリクルーティングを支援した結果としてこのようなことになったのか、それとも実利的に過激派への人材供給をサポートしていたのかは分からないが、彼らが一体となって次代の過激派を作ろうとしていたのは事実である。ただし、全ての人がその工作に嵌まるわけではないため、その工作がうまく行かなかった場合、最終的に対象者が殺害されることもあった。

 

公安がこのように政治化したのは左翼過激化だけが原因ではないが、左翼過激化した結果として、彼らの工作は単なる国家主義者の枠組みを超えている。左翼的な理想を実現するために多くの工作が行われており、その中には電波工作による洗脳が含まれている。公安が左翼過激化しなければ、日本はここまでの多くの犠牲を払う必要がなかった可能性が高い。

 

一方で、公安の中には純粋な国家主義者で、剥き出しの権力志向と腐敗したキャリアも存在する。彼らの工作には政治性がそれほどないものの、自らの利益のためにどんなことでも行うため、同じくらいに危険な存在である。彼らも同様に電波工作を行っており、同様の大きな被害を導いている。

 

この電波工作の技術を持っているのは公安の中では1つの集団であるはずだが、その行動には2つの行動性が見られ、そのグループダイナミズムが大きな工作を起こす源泉になっている。そして、その集団は左翼過激化した人たちと剥き出しの権力主義者で構成されている。

 

 

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