部屋を開け放しにして、送風機を回すと冬の寒さに耐える必要はあるものの、二酸化炭素の脅威からは逃れられるようになった。しかし、翌日からは毎日蚊や蜂や虻が部屋に来た。部屋は23階にあり、そのような生き物が頻繁に来られるようなところではなく、それまでもそんなことはなかったが、その日から、毎日、いろんな虫が部屋に入れられた。

 

特に、蚊はきつかった。そもそも、モスキート音が聞こえる中で暮しており、夜になると蚊の音なのか機械音なのか全く区別が付かなかった。しかし、実際にはその日から毎晩蚊が部屋に入り、毎日体中が何カ所も刺されるようになった。冬の香港の23階の部屋で起こることではなく、それは諜報機関の工作の結果であり、拷問の一種であった。ちなみに、CIAは拷問の1つの手段として、この虫を投入する方法を使っていたことを認めている。

 

この状況になると、ビープ音にも過剰に反応するようになる。それは蚊と区別が付かないためであるが、その度に部屋中を見渡すようになる。実際にはヘッドホンを着けて音が聞こえないようにしている時間も長かったが、耳鳴りがひどくなるためにノイズキャンセルを流していない時間もあった。その際にモスキート音が鳴ると、それは単なるノイズであっても、毎日、蚊に何度も噛まれ続けている中では必要以上に過敏になってしまう。そして、実際に刺されると、更に睡眠が取れなくなってしまう。

 

 これを避けるためには部屋を閉じるしかない。しかし、部屋を閉じると今度は部屋中に二酸化炭素を充満されて、死んでしまうかもしれない。何とかして別の方法でこれらの問題に対処する必要があった。

 

 そこで、夜寝ている間だけは特別な対策を取ることにした。ベッドで寝るのを完全に止め、ソファーを簡易ベッドにして、そこに衝立を立てた。そして、その衝立に布団を掛けて全体を覆うと一定の空間が確保でき、体全体を覆うため虫の被害にも合わないようになる。ほぼ自製の蚊帳であったが、それでは布団で体を温められないので、夜の間も服を着込んで寒さに耐えるようになった。

 

 ここまでしても、時々、わずかな隙間から侵入され、何カ所も刺されることがあった。今でも不思議だが、ほぼ空間は空いておらず、全体で親指ほどの隙間しかなくても、いつの間にか蚊が侵入していることがあった。今でも蚊が電波操作できるのではないかと疑っているが、確たる証拠があるわけでもなく、また、当時はそんなことには思い至らなかった。

 

いずれにせよ、その徹底防備のおかげで、ほとんどの夜は安全に過ごせるようになり、ビープ音に対する過剰反応も低下した。その構造体はすごく狭かったが、そこから何ヶ月もの間、その中で夜を過ごした。

 

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