11 「拷問」凍死危機

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部屋を開けっ放しにすることによって、二酸化炭素で殺されることはなくなった。室内の二酸化炭素濃度が上がって死ぬと窒息死にはなるが、何の証拠も残らないため、暗殺は綺麗に成功する。ただし、それは閉じられた部屋でしか効かないため、窓を24時間中開放すると、それで死ぬことはなくなる。

 

 しかし、その夜はとても寒かった。香港は氷点下にならないが、それでも冬場は10度前半の気温にまで下がる。そして、基本的に暖房設備がないため、室内にいてもかなり寒くなる。それまではいつも窓を閉じていたので全く気づいていなかったが、夜は十分に寒かった。自分は何も気づかないまま、送風機に顔を向けながら、疲れ切ってソファの上で寝ていた。

 

 その夜もエアコンからはかなり冷たい空気が流れ続けていた。そもそもエアコンは付いていないが、上の部屋から流れてくる二酸化炭素はとても冷たかった。その夜中に体温が極端に低下し、何となく死んでいるような気分で目が覚めた。体全体が冷たくなっており、異常な状況にあるのはすぐ分かった。

 

 それは不注意の結果でもあり、よく練られた工作の結果ではないが、このまま自分はすぐに死ぬだろうという思いに囚われた。そんな悲観的な気分に陥っていたものの、体温だけであれば服を着込めば解決できる問題であり、その日からかなり着ぶくれた状態で暮すことになった。

 

 それにしても笑えない話である。香港は十分に暖かく、凍死するようなことはまずないが、それでも冬に窓を開けっ放しで寝ると、かなり苦痛な状態に陥ると知った。しかし、二酸化炭素に対抗するためにはそうするしか方法がなく、そこから冬が終わるまで、ずっと外気に晒された中で暮らした。

 

部屋の中にはいたものの、昼間は工事の音が鳴り響き、夜には水音や機械音が鳴り続け、暖かさの失われた部屋の中で暮していた。全ての行動が監視され、油断するといつ薬を入れられるか分からず、また次にどんな拷問が行われるか分からない中で、ただ生き延びるためだけに毎日を過ごしていた。

 

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