毎日、拷問と監視と異常の中で生きていたが、睡眠を奪うために流され続けていた水の音は、時々、ビープ音に変わるようになった。依然として、水の音がすることも頻繁にあったが、物理的に考えるとビープ音の方が効率的であった。水の音を真上で響かせるためにはそれなりの準備が必要なのに対して、ビープ音の場合は装置1つで音を出せ、より操作し易くなる。

 

実際にはビープ音と言っても、モスキート音に近い周波数の音がずっと流れていた。それは極めて効果的であった。音量はそれほど大きくないが、水の音と同じくらい頭を刺激した。そして、その音は一日中止むことなく続いた。道路工事の音がどれだけ激しくなっても、音の種類の違うビープ音はずっと耳に残った。

 

これに対抗するために、水の音と同じようにノイズキャンセルを使った。そして、ビープ音が一日中頻繁に鳴り続けるために、ノイズキャンセルもほぼ一日中使うようになった。ただし、それには1つだけ問題があった。ノイズキャンセルを無音で使うと、ホワイトノイズが聞こえる。だからこそ、外の音は聞こえなくなるが、ホワイトノイズに対抗するために人の脳は耳鳴りを生み出す。

 

この耳鳴りがノイズキャンセルを外しても少しだけ残る。もちろん、実際に上の部屋から音を出して耳鳴りを作っていた可能性も否定できないが、実際に自分の頭の中で耳鳴りがなっていた。そして、その耳鳴りが収まるまでには時間が掛かり、結果として、ほぼ一日中耳鳴りの中で暮すことになった。

 

今度はこれを抑えるため、夜中にヘッドホンを使う時間を減らさなければならないが、そうすると騒音で神経が過敏になり、夜に寝る時間が更に減少する。また、外から聞こえてくる音を完全に遮断できることもないため、寝られない上にストレスが溜まる状況になっていた。

 

その頃はたばこを止めている日も多く、ドラッグに朦朧とする日は減っていたものの、それでも1日のうち20時間くらいはベッドの上にいて、疲れたらいつでも寝られるようにしていた。その生活はドラッグが入っていても入っていなくても、あまり変わらなかった。ただ、そのような状態で暮らさない限り、自分の頭が狂うのは目に見えており、自分はベッドの上で耐える以外はできなかった。ただ、拷問の中を生き延びることだけが日々の目標だった。