15 脳波研究

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脳波研究の歴史は古い。日本語ではあまり資料がないが、英語ではそれなりに豊富な資料がある。外的な電波が脳波に影響を与える可能性は1950年代から議論され始めている。ジョー・カミヤがEEGとバイオフィードバックの研究を学問として確立するのは1960年代で、それ以降、電波が脳に影響を与えるのは事実となっている。

これらの研究成果は1970年代までは活発だが、80年代に減少する。この変化がどうして起こったかは分からないが、1つだけはっきりしていることがあり、初期の第1世代の研究者が引退し、その時期に彼ら自身の学問的研究が終わりを迎えている。学問には一般的にそのような現象が起こり、ある学問領域が注目され、多くの研究者とお金が集まり、そこで一定の成果が達成され、大きなブレークスルーが達成されると共にその先に展開がなければ、学問領域として縮小する。

ただし、脳波の研究は今も続いており、今では電波を使って脳がもっとコントロールできるようになっているので、学問的なブレークスルーが70年代で止まったはずがない。そうなると、80年代に研究成果が下火になったのは違う理由と考えた方が良い。

脳波研究の歴史の中でもう1つ大きな問題として現れるのが似非科学という一般認識である。歴史的には、電波で脳に影響を与えるのは怪しい科学だと思われていた。

それは学問的に限界があったからかもしれない。例えば、ある周波数帯はうつを引き起こすとすれば、それが真実かどうかはトライアンドエラーの中で調べられる。いろんな周波数帯やあるいは周波数パターンを被験者の脳に当てて、それで被験者がうつになったかどうかを調べる。一部のうつの症状に特有の周波数パターンがあるので、その波形が現れればうつ的な症状を発症しているとも言えるが、本質的には被験者がうつになったかどうかを判断するのは難しい。それは人間の感性を数値化するのがそれほど簡単ではないからである。

それよりも難しいのは被験者をうつにすること自体である。被験者をうつにすることが認められるかどうかは難しい問題であるが、脳梗塞を起こす周波数帯を調べるために、被験者を脳梗塞にするのはほぼ受け入れられない。それは人体実験である。治療の一環として行われた中で結果として脳梗塞が引き起こされたために、電波で脳梗塞が起こることは分かったものの、もっと正確に影響を理解するためには被験者を脳梗塞にする必要がある。トライアンドエラーを行い、いろいろな角度から調べ、どのようにすれば脳梗塞になるかが調べられる。それが科学の1つの手法であるが、それは法律上も倫理上も認められない。

これらの電波と脳波の現象はインプットとアウトプットで構成されている。ある刺激を与えて、ある結果が生み出されているが、学問はその間にある因果関係のブラックボックスを解明する作業である。どのようなインプットがどのようなアウトプットを経験的に生み出すかは学問となり難い側面がある。学問の対象はどのような電波を当てることによって、どのように脳の細胞が活動するかにあって、どのような脳波になるかや、あるいはどのような症状が出るかは学問の対象になり難い側面がある。

例えば、脳の番地を測定するために、ある部位に刺激を与えて、手が動くことを発見したとする。それは脳の特定の部位を指しており、科学的な成果となる。しかし、ある電波パターンを与えることによって、手を上下させることに成功したとしても、その電波パターンがどうして影響を与えているかは説明していない。それが説明できなければ、学問としては成立しないと考える人たちもいる。

つまり、EEGやバイオフィードバックは似非科学だと言われかねない側面を本来的に持っている。

しかし、本質的には似非科学だというレッテルを張ったのが正確だろう。1980年代も十分な技術的なブレークスルーはあったが、それらは必ずしも公表できるような実験結果ではなく、研究自体が地下化したというのが正確だろう。結果として、治療としてのバイオフィードバックだけが研究成果として残り、全体としては技術の発展が進んでいないように見えた可能性が高い。

また、その研究が政府の支援を受け、かつ、政府によって高度の秘密指定をされると、実験が存在することも研究成果が存在することも、全てが公表されない。多くの人が電波によって脳をコントロールできることを知っていたとしても、それを公表することは犯罪となり、誰もその話をしない。それが80年代以降に研究成果が減少した主たる理由だろう。