暗闇の中で、車はとある大きな鉄の門扉の前に止まりました。ブレさんが車から降りて扉を開けに行きました。そこは大きな館の裏の広い広い庭でした。二人に案内されて、館に行くとそこでは多勢の若者達が楽しそうに集っていました。いろいろな人がビールやおつまみを持って来て話しかけてきます。結構の若者が、日本に関心があるといいます。日本語が少し出来る人達も何人かいて、親しく話しかけてくれました。しかし、漫画やアニメの興味から日本語を覚えた若い人達なので、申し訳ないことに、私達60歳なかばの老人には話題に応える事が出来ません。今度は少し漫画の研究もしておかなくては。
そのうち、館の持ち主だと言うかなりご高齢のご主人と大分若い奥様に紹介されて、ご挨拶をしました。目の前に大きな水道橋が聳えていましたが、残念ながら暗くて写真を撮る事は出来ませんでした。奥様が水道橋に昇る太陽を写した絵葉書をくださいました。
そうこうしていると、広間で音楽が鳴り始め、皆でダンスがはじまりました。車でよく聞いて馴染んだ曲でした。
「一緒に踊ろう!」と若い人達に誘われて、というより引っ張り出されて、
「荷物は何処か机に置いて!」と言われ、なにぶんにも全てが急な事で、予想もしてない事で、貴重品の入った荷物を気にしながら、何十年もした事がないフォークダンスというものを、50人くらいはいた若い人達と一緒に、手も足も合わせられない、メチャクチャで、汗だくになって飛び回るという、サプライズを通り越して、ドタバタ喜劇を演じました。まあ若い男性に親切に教えてもらいながらの楽しい時間でもありました。
ダンスやカラオケが大嫌いで拒絶反応のわがパートナーはどうしているかと見ると、あまりに急な事で、断る術もチャンスも無く、問答無用で、仕方なく踊っています。まるで案山子が引っ張られているように。「ああ、高校の時の運動会以来の出来事だった。参った!」と言いながら、汗を拭いていました。
30分程踊ってから、ブレさんとエレさんに促がされて、館を後にして、エクスのホテルに送って もらいました。若い人達はまだまだ楽しそうにテンポの速い曲に変ったダンスを楽しんでいまし た。一体どんな人達の集まりだったのか?なんとなく聞きそびれてしまいました。二人は
「どう?サプライズだったでしょう!」と言いながら
暗い道を、さすがに疲れた様子のエレナさんの運転でホテルに着きました。
今日一日車でよく鳴らされ歌ってて聞いて、最後に皆で踊った、プロヴァンスの民謡のCDをプレゼントされました。楽しい一日でした。