「最高の知見」の意味するところ | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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弁護士資格もお持ちの大臣ともあろう方が、法科大学院を「最高の知見」とか言っているのですが、私は、司法試験合格後、司法研修所に入って、その知見というか教育ノウハウの凄さに圧倒された記憶があります。

驚いたうちの一つが、即日起案。
即日起案は、長いバージョンと短いバージョンがあり、長いバージョンだと朝10時から夕方5時まで、お昼休みとかいう概念はなくて、書きっぱなし(途中メシを食って良い時間はある)。
大体、A4の起案用紙に、40頁ないし60頁くらいを手書きで書いていくのです。

そして、担当教官が、これを添削します。

そして、1~2週間後の「講評」で教官から内容の説明が行われます。
そのとき、各クラスの生徒(司法修習生)を当てて質疑応答するんですね。

驚くのはここからです。
質疑応答の際、各修習生に「お前、こう書いただろ、なんでか」などと聞いていくんですよね。

この質問ができるということは、教官は、約40~60頁の起案のすべてをくまなく読んでいる、ということを意味します。

1クラスは70名あまりいるので、これだけの量の起案を、1~2週間で読んで、質問できるレベルにまで頭に入れるのです。

教官とは、なんとすごいんだ、と思いました。

これに対して、法科大学院の添削は、先生によりますが、書かせるだけ書かせて、どうみても読んでいるとは思えないだろう、といったものや、疎な添削が多かった印象です。
どうも、添削をすると、「答案練習をしている」などと文科省から言われることを恐れていたのでしょうが、じゃあ何のために書かせるのでしょうね。

「最高の知見」であるはずの法科大学院の実態は、そういうものでした。

司法研修所が「すごい」と思ったエピソードは他にもまだまだありますが、まさに「叡智の殿堂」と言って良いと思われます。
これに対し、法科大学院は「最高の知見」といいますが、実態は上記の通りであることからして「虚栄の巨塔」といったイメージですね。

その「叡智の殿堂」を空洞化させようとする現在の法曹養成制度は、やっぱりおかしいな、と思っています。