ツアーバスの法的性質と問題点について改めて考える。 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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バス関係の法務も経験ありますので、このテーマは気になりますね。

【高速ツアーバス廃止】 新高速乗合バス制度が8月開始

そもそも、ツアーバスってなんですかねってことです。
普通に町中を走ってる路線バスと何が違うのか?

路線バスは、道路運送法上でいうところの「一般乗合旅客自動車運送事業」であり、道路運送法上のこまかい規制を受けます。
お客と運送事業者との関係は、直接の旅客運送契約で成り立っています。

           お客===(旅客運送契約(乗合))===乗合バス事業者

一方、ツアーバスというのは、バスにお客を乗せてA地点からB地点まで運ぶという「仕事」は路線バスと同じであるものの、法律関係が全然違います。

ツアーバスを利用するお客は、まず、旅行代理店と契約します。
1 旅行代理店は、たとえば「大阪→TDRバスツアー」という「旅行」企画を立ててお客を募集します。
2 お客は、これを見て、この「旅行」に参加します。
 =お客は、旅行代理店と「募集型企画旅行契約」を締結します。
3 旅行代理店は、お客に、上記契約のためのサービス提供を行うため、独自に、バスを借り上げます。
4 借り上げたバスに、お客が乗り込むことになります。

  お客==(募集型企画旅行契約)==旅行代理店==(貸切運送契約)==バス会社

事故が起きた際は、旅行代理店が全面的に契約上の責任を負うことになります。
旅行代理店は、これとは別に、バス会社に損害賠償請求をすることになります。

この方式の問題はいくつかあって、要は、募集型企画旅行契約とバス運送契約が分離していることにあると思っています。

ここから、私なりに感じるところとして、以下の問題点があります。
1 お客の目に触れるのは、募集型企画旅行契約だけ。
 そして、この契約の価格には、何ら縛りがない(⇔バス運賃は許認可で縛られる)。
 よって、過当競争が起こりやすい。
 過当競争が起きれば、その先にある「バス運送契約」における価格も低下せざるを得なくなる→サービス品質(安全性も含めた)が低下しやすい
 ことにあります。
 これを縛るために、バス会社には、貸切バスとしての道路運送法上の規律があるものの、路線バスに比べてその規制は緩やかです。

2 事故が生じたときに十分な賠償を受けられるかがわからない
 (旅行代理店で上記のような「募集型企画旅行」をする場合、旅行会社側でそれなりの要件を備えておく必要があり、一定の営業保証金+基準資産額(第一種旅行業の場合、合計1億円(原則)が必要)を準備しておかなければならないものの、これだけで大事故をカバーできるとは思われない
 特に、旅行代理店が倒産した場合にどうなるのかという問題がある

そこで、これに、完全に道路運送法の網をかぶせ、以下のような形態を取ろうというのが、今回の「ツアーバス廃止」の法律的な意味です。

お客==(旅客運送契約(乗合))==乗合バス事業者==(運行委託契約)==バス会社
                                          ↑
                                   道路運送法35条の許可

そして、この「道路運送法35条の許可」の基準が、この通達 に現れています。

その結果
・これまでツアーバスの募集をしていた旅行会社が、乗合バス事業者に変身する
・貸切バス会社が、乗合バス事業者に変身する
・貸切バス会社が、そのまま受託を受ける貸切バスとして継続する
という形でリニューアルを図る必要がでてきました。

このリニューアルが追いつかない=輸送が確保できない可能性がある、ということなんでしょうね。