明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い致します。

 

・・・と書いても良いのかどうか分からないほど、年明け早々、大惨事が続いていますね。

 

飛行機の管制については全くの素人で何も分かりませんが、建築については思うところがあります。

 

東京で設計している私から見ると、地方の建物は脆弱過ぎます。

防火的にも。構造的にも。

これは、国が政策として国民に事実は広く知らせず、そうしているからなのです。

 

 

 

 まずは構造について書きます。

 

 

今回もまた、1階が開口部(窓)だらけで壁のない、商店型の建物が倒壊しているケースが多い様です。

これは熊本地震でもありました。

その前から、大地震のたびに見られる光景です。

 

更に、多くは瓦屋根。

瓦屋根は立派で長持ちするかもしれませんが、構造的に見た時、最悪の材料です。

 

昔、Yahoo!ブログで「地震力」の説明を書かせて頂いたことがあるのですが、

私の拙い説明より、もっと分かりやすいページがありましたので以下にリンクを貼ります。


https://kouzou-keisan.com/wp-content/uploads/TECrootsvol4.pdf

 

木造に使われる材料は非常に軽いです。

それなのに重い瓦を一番てっぺんに載せてしまうと、地震に対しては非常に弱くなります。

瓦を頭に乗せて歩くことを考えてみてください。それに対して鉄板を頭に乗せたらどうでしょう。

 

 

開口部についても構造的に最悪と言える建築が多い様です。

一般的な木造家屋は2x4だけでなく、在来軸組工法も「耐力壁により地震に耐える構造」です。

筋かいの入った壁もしくは、構造用合板(ベニヤ板)を張った壁、で地震に耐えます。

 

柱と梁だけでは地震に抵抗できません。

(RC造やS造は柱と梁だけで成立させる事も出来ますが、それは柱と梁と床がガッチリ一体化しているからです。)

 

道路面の1階にずらっと入口や窓が並ぶ、昔ながらの商店。

あの形式の建物が大地震の度に倒壊しています。いくつかの窓を塞ぐか、

筋かい(木材2本をX型に入れたもの)でいくつかの窓を補強するだけで、はるかに強度を上げることができます。

 

なぜ、それを官は訴えて来なかったのか。私達建築士も訴えて来なかったのか。

 

商店に限らず、「壁」の配置だけを見ると商店型と言える建物は数多くあり、

熊本では学生寮(の食堂部分だったと思います)が倒壊して犠牲者が出ていました。

 

 

 

東京では、その様な古い建物を解体するときに補助金を出す制度があったり(区によります)

幹線道路沿いに「倒れそうなビル」がある場合には、解体だけでなく建て替え費用のほぼ全額まで補助する制度があったりします。

 

そうして、東京は地震に対して、以前よりも相当に安全な街になりつつあります。

関東に大震災が来たら!とかマスコミは騒ぎますが、比較で言えば、危ないのは地方の密集地の方なのです。

 

地方では東京の様な潤沢な予算は賄えないと思いますが、

上述した筋かいの増設などは、木材数本でできる作業です。

壁を剥がして張り直す必要がありますので、それなりの費用は掛かりますが、見栄えを気にしなければ数十万円から補修できるはずです。

ふるさと納税で集めたお金の使い道として、そんな事に市町村が補助をするのもアリではないでしょうか。

 

 

 

 それから防火について

 

東京の区部(23区)は、ほぼ準防火地域もしくは防火地域に指定されています。

これに対して、地方の防火規制は、厳しいところで22条区域(建物表面を防火材で覆う規制あり)が良いところです。

 

東京の建物は極力、隣家に類焼しない様に作られています。

木造でも、一戸建ての多くは、45分間、外壁が火に耐えられる(壁は破壊される)様に作られていますし、

最近乱立している木造3階建アパートの多くは、60分間、耐えることが出来ることになっています。

 

室内側で火が発生したとしても、同様の時間、室内側の石膏ボードが火を食い止め、外部へ火を出さない様にします。

隣地と近接している窓は、20分間、火に耐えられる事になっており、

そこから火が噴き出して、隣家の窓があったとしても、その窓もまた20分耐える事ができます。

その間に逃げる事もできます。

 

日本の建物は、地震や火事の際、なるべく建物が使い続けられる様にとは考えられていますが、

限界を超えたときには、人を逃す時間を稼ぐ事だけに集中します。

 

この最後の粘りがない建物が地方には多く、それがために大地震の起きる度に被害と犠牲が出ています。

 

 

 

 提案です。

 

 

地方でこれから家を建てる方は、「東京に建てられている家と同じ基準で設計してほしい」と依頼しませんか?

 

屋根は錆びない鋼板(鉄板)で、外壁は防火サイディングです。瓦+塗り壁より遥かに軽いです。

2025年からは、今まで大手を中心にやって来た構造の誤魔化し(4号特例)も出来なくなりますので、

これだけでも今までより相当安全な住宅を手に入れることが出来ます。

 

 

一部の悪質なメーカー、工務店、建築士がいなくはなりませんので、

建物を見て、最低限の安全性の確認はご自身でも行いましょう。建物が「壁」で構成されているのか「柱梁」で構成されているのか。

それだけ調べれば、あとは素人の方でも見た目で分かるところは多々あります。その程度の「見た目でやばい」建物は、

今でも法の主旨を曲解した人間達により、巷で建築され続けています。

 

 

それから、建て替え予定のない方で、ここに書いたような「最悪な条件」の建物にお住まいの方。

(きつい書き方で申し訳ありません。でも、ハッキリ書かないと伝わりません。もう、起こると分かっている被害を放置するのは辞めましょう。)

 

「最悪」の条件を解消するためのリフォームを行いませんか?

柱と梁が見える様な状態に内壁を剥がし、そこに筋かいを増設するか、桟木を入れて合板を張り付けます。

それだけであれば、100万円単位のお金が掛かる様な物ではありません。

復旧時にクロス貼や壁塗りが必要になりますが、もし見栄えを気にしなければ、その程度の作業はご自身で作業し、

数箇所の補強で数十万円で可能なのではないでしょうか。

 

耐震診断などしなくても構いません。

建物のX方向、Y方向に対して、なるべくバランスが良くなる様に「耐力壁」が配置される様に入れるだけでも構いません。

自動車の買い替えの時に1つ、2つ、グレードを下げる、オプションを諦めるくらいで捻出できるお金で構いません。

少しでも補強しませんか?いざという時に命だけは救う可能性を上げるために。

 

 

ビルを建てる方にも、同じく、「東京と同じ構造計算基準で」と設計を依頼して頂きたい。

東京・静岡・大阪では、地震地域係数が1.0であり、独自にその数字を1.2倍にする様なケースも多いです。実質1.2。

 

それに対して、この係数は地方では0.8-0.9のところが多く、沖縄県は0.6となっています。石川県の多くは0.9の様です。

この数字(係数)が何かと言うと、

 

「大震災の時に建物にかかる力」を出す時に、「地震力」として出た結果に掛ける数字になっているのです。

つまり、地方は東海道エリアよりも遥かに脆弱な建物を構造設計しても、確認申請が通ります。

 

日本全国、どこで大地震が起こるかなど、誰にも分かりません。

学者達も「過去、何年おきに起きていたからそろそろ危ない」というレベルです。

活断層が危ないと言いますが、大地震が起こるたびに発表される内容は「未知の活断層が動いたと思われる」です。

 

大地震が起きた時、地方だからといって、その地震力が小さい筈がありません。

地方では、この地震力を低減して建築されることが当たり前。その事実も皆さんに知っておいて頂きたいです。

 

(一戸建ての構造基準は全国一律です。静岡のみ木造戸建ても1.2倍の割り増しをしています。)