時間が経ち、皆ある程度酒もまわりだした頃、ようやく一人が直樹の指輪について言及した。
強かに酔わないと、入江直樹には気軽に話しかけられないのである。特にプライベートは・・・
直樹も高校生の頃のとがった雰囲気はなりを潜め、大分人間らしくなっている。大人になったのかなとみんなが思っていた。
美しい容姿に醸し出す大人の魅力。知的な会話と口数少ないながらも適度な相槌。
誰もが魅了されるその男性の手には、これまた彼のために誂えたのかと思うくらいピッタリな銀色に光る指輪がはまっていた。
「それ、、、ペアリング?」隣に居た女子が意を決して尋ねた。
マリッジリングにしか見えないソレを、どうにかして真実から目を逸らしたい希望が口から出る。
「結婚指輪」口の端を軽く上げながら直樹が答えた。
「「「「「「入江くん、結婚したの!!!!!!」」」」」」
女性陣が全員、悲鳴を上げる。
「入江、誰とだよ!!」
「お前のことだから、すごい美人なんだろ」
「やっぱ才女だよな」
「どっかの令嬢か? 入江の家、パンダイだろ」
と口々に言葉が吐き出されるが、誰も真実を口にするものは居ない。
一方、渡辺は一人この状況を楽しんでいた。
結婚式に出席したのは3Aメンバーでは渡辺ただ一人だったのだから。
高校時代の友人は渡辺だけ。
他に斗南高から上がった医学部の数名、大学のテニス部の面々を新郎友人として招待した直樹。
同窓会にいる面々の誰も、あの『相原琴子』が妻などど、高校時代を知る人々は考えが及ばないに違いない。
「おれ、すごい美女と歩いてる入江を見たことがあるよ」と一人が鼻高々に自慢しだした。
それを聞いた藤堂が思わず「相原さん、今どうしてるかな?」と近くのヤツに呟くのが聞こえた。
ヤバイ!!!
渡辺は当時から藤堂たちグループが琴子に関心を持っていたのは知っていた。
「そうだよな、入江の家で同居してたよな」
「小さくて可愛くて表情豊かで、バカでドジみたいだったけど入江に一途でさ、ちょっと羨ましかった」
「入江、冷めてたもんな。あんなに好きって言われても全然だったし」
「今フリーかな? 斗南大学にだったよな。彼女F組だし」
「明日行ってみるかな。俺のこと覚えてるかなぁ。席は入江の隣だったんだけど」
「俺は窓際だった。よく入江と廊下で喧嘩してたし、目がよくあったよ」
運悪く、渡辺の席の近くで異常な盛り上がりをみせていた。
うおっ、、、ゾクっと冷気を感じるぞ(現在進行形)
急に冷蔵庫、いや冷凍庫に放り込まれた気分だ。
俺もこの春の陽気に包まれたいが、、、
そう思って周りをみると、その場にいる全員は寒さに震えながらも琴子の話に花を咲かせていた。
「今告ったら付き合えるかも!!」
一人、場違い発言をするヤツの背中に向けられた入江の視線が・・・
入江、お前、、、視線だけで冷凍人間作れそう。。。
「抜け駆けずるいぞ!! 俺だってずっと狙ってたんだ」
ヤメロ!! みんな、死ぬきか??
「誰が呼び出す? きっとまだ大学辞めてないよな?」
恐れを知らぬツワモノがまた一人。
「あー、俺も斗南にしときゃ良かったかな。なあ、入江・・・」
酔っ払いがとうとうトドメノ一撃を放ってしまった。
呼ばれた直樹は刺すように剣呑な光を放ちながら、一人の男性を見た。
「『相原』琴子はもう在籍してない。今居るのは『入江』琴子。俺の妻」
「因みに今は文学部4年。来年は看護課に転籍予定だけど?」
「会・い・た・い・か?」
一区切りずついう直樹の迫力に会場がシーンと静まり返った。
俺はマッチ売り少女さながら、マッチに火を点して暖炉の幻想を思い浮かべたくなった。
女性陣、否・・・ここの会場にいる全員瀕死。
俺も凍えそうだ。約一名、冷気を発してる直樹だけはピンピンしていたが。
入江、、、お前、今が冬だって気付いてないのか?
めいっぱい暖房を入れてもらったはずが、寒さしか感じない。
みんな、寝るなよーーーー
「あ、相原さんとなんて、、、入江くんに相応しくないよ」
何を勘違いしたか、女子の一人が暴言を吐く。
「そ、そうよ。世の中にはいっぱい相応しい人間がいるわ」
「た、たとえば外交官の娘さんなんて英語ペラペラだし、洗練されてるし」
「ご、ご令嬢だって教養も嗜みもあって、楚々と美しい人はいっぱいいるわよ」
「そ、そ、そんな手近で手を打つなんて入江くんってば、人生捨てるのは早いわよ。ねぇ、みんな・・・」
なんとしても認めたくないらしい。自分達A組がF組に負けたとはプライドが許さないってことかな?
醜いな、女の嫉妬って・・・
「俺が自分で琴子を選んだんだ。みんなの同意を得る必要ないだろ?
それとも俺が選んだ琴子、侮辱すんの? 琴子を侮辱するって事は夫の俺も侮辱されんだけど、なぁ。それ、分かってる!?」
入江、お前って・・・女性にも容赦ないヤツ★
冷めた目で冷気を発しながら入江が一同を見渡した。
ここに、、、サッポロ雪祭りと同様の氷像が出来上がった。
きっと題名は『阿鼻叫喚』
見事な大作だよ、入江は天才だからな。
氷像ひとつとっても大作なんてわけもない。うんうん・・・
「じゃあ、俺は帰るよ。可愛い琴子が待つ家に!!」
そういい捨てて、入江は席を立った。
俺を見つけて「渡辺、また今度飲もう」と告げてくれたのは嬉しかったけど。
帰り際、氷像にトドメをお見舞いする入江の見事さに、俺はもう笑うしかなかった。
強かに酔わないと、入江直樹には気軽に話しかけられないのである。特にプライベートは・・・
直樹も高校生の頃のとがった雰囲気はなりを潜め、大分人間らしくなっている。大人になったのかなとみんなが思っていた。
美しい容姿に醸し出す大人の魅力。知的な会話と口数少ないながらも適度な相槌。
誰もが魅了されるその男性の手には、これまた彼のために誂えたのかと思うくらいピッタリな銀色に光る指輪がはまっていた。
「それ、、、ペアリング?」隣に居た女子が意を決して尋ねた。
マリッジリングにしか見えないソレを、どうにかして真実から目を逸らしたい希望が口から出る。
「結婚指輪」口の端を軽く上げながら直樹が答えた。
「「「「「「入江くん、結婚したの!!!!!!」」」」」」
女性陣が全員、悲鳴を上げる。
「入江、誰とだよ!!」
「お前のことだから、すごい美人なんだろ」
「やっぱ才女だよな」
「どっかの令嬢か? 入江の家、パンダイだろ」
と口々に言葉が吐き出されるが、誰も真実を口にするものは居ない。
一方、渡辺は一人この状況を楽しんでいた。
結婚式に出席したのは3Aメンバーでは渡辺ただ一人だったのだから。
高校時代の友人は渡辺だけ。
他に斗南高から上がった医学部の数名、大学のテニス部の面々を新郎友人として招待した直樹。
同窓会にいる面々の誰も、あの『相原琴子』が妻などど、高校時代を知る人々は考えが及ばないに違いない。
「おれ、すごい美女と歩いてる入江を見たことがあるよ」と一人が鼻高々に自慢しだした。
それを聞いた藤堂が思わず「相原さん、今どうしてるかな?」と近くのヤツに呟くのが聞こえた。
ヤバイ!!!
渡辺は当時から藤堂たちグループが琴子に関心を持っていたのは知っていた。
「そうだよな、入江の家で同居してたよな」
「小さくて可愛くて表情豊かで、バカでドジみたいだったけど入江に一途でさ、ちょっと羨ましかった」
「入江、冷めてたもんな。あんなに好きって言われても全然だったし」
「今フリーかな? 斗南大学にだったよな。彼女F組だし」
「明日行ってみるかな。俺のこと覚えてるかなぁ。席は入江の隣だったんだけど」
「俺は窓際だった。よく入江と廊下で喧嘩してたし、目がよくあったよ」
運悪く、渡辺の席の近くで異常な盛り上がりをみせていた。
うおっ、、、ゾクっと冷気を感じるぞ(現在進行形)
急に冷蔵庫、いや冷凍庫に放り込まれた気分だ。
俺もこの春の陽気に包まれたいが、、、
そう思って周りをみると、その場にいる全員は寒さに震えながらも琴子の話に花を咲かせていた。
「今告ったら付き合えるかも!!」
一人、場違い発言をするヤツの背中に向けられた入江の視線が・・・
入江、お前、、、視線だけで冷凍人間作れそう。。。
「抜け駆けずるいぞ!! 俺だってずっと狙ってたんだ」
ヤメロ!! みんな、死ぬきか??
「誰が呼び出す? きっとまだ大学辞めてないよな?」
恐れを知らぬツワモノがまた一人。
「あー、俺も斗南にしときゃ良かったかな。なあ、入江・・・」
酔っ払いがとうとうトドメノ一撃を放ってしまった。
呼ばれた直樹は刺すように剣呑な光を放ちながら、一人の男性を見た。
「『相原』琴子はもう在籍してない。今居るのは『入江』琴子。俺の妻」
「因みに今は文学部4年。来年は看護課に転籍予定だけど?」
「会・い・た・い・か?」
一区切りずついう直樹の迫力に会場がシーンと静まり返った。
俺はマッチ売り少女さながら、マッチに火を点して暖炉の幻想を思い浮かべたくなった。
女性陣、否・・・ここの会場にいる全員瀕死。
俺も凍えそうだ。約一名、冷気を発してる直樹だけはピンピンしていたが。
入江、、、お前、今が冬だって気付いてないのか?
めいっぱい暖房を入れてもらったはずが、寒さしか感じない。
みんな、寝るなよーーーー
「あ、相原さんとなんて、、、入江くんに相応しくないよ」
何を勘違いしたか、女子の一人が暴言を吐く。
「そ、そうよ。世の中にはいっぱい相応しい人間がいるわ」
「た、たとえば外交官の娘さんなんて英語ペラペラだし、洗練されてるし」
「ご、ご令嬢だって教養も嗜みもあって、楚々と美しい人はいっぱいいるわよ」
「そ、そ、そんな手近で手を打つなんて入江くんってば、人生捨てるのは早いわよ。ねぇ、みんな・・・」
なんとしても認めたくないらしい。自分達A組がF組に負けたとはプライドが許さないってことかな?
醜いな、女の嫉妬って・・・
「俺が自分で琴子を選んだんだ。みんなの同意を得る必要ないだろ?
それとも俺が選んだ琴子、侮辱すんの? 琴子を侮辱するって事は夫の俺も侮辱されんだけど、なぁ。それ、分かってる!?」
入江、お前って・・・女性にも容赦ないヤツ★
冷めた目で冷気を発しながら入江が一同を見渡した。
ここに、、、サッポロ雪祭りと同様の氷像が出来上がった。
きっと題名は『阿鼻叫喚』
見事な大作だよ、入江は天才だからな。
氷像ひとつとっても大作なんてわけもない。うんうん・・・
「じゃあ、俺は帰るよ。可愛い琴子が待つ家に!!」
そういい捨てて、入江は席を立った。
俺を見つけて「渡辺、また今度飲もう」と告げてくれたのは嬉しかったけど。
帰り際、氷像にトドメをお見舞いする入江の見事さに、俺はもう笑うしかなかった。