数寄屋橋の交差点にあったソニービル。

長らく銀座を象徴するビルとして人々に愛されてきましたが、それが解体され、しばらくは公園のようになっていましたが、ビルごと建て替えが終わり、新たなビルとしてオープンしました。

それがGinza Sony  Parkです。

エルメスのビルの隣にある低いビルがソニーパーク。

 

なんでわざわざ低いビルを作るのか。そこにソニーの考えがありました。

 

 

現在は、3つのフロアで企画展が開かれています。

YOASOBI、Vaundy、羊文学という3組のアーティストがコラボした企画展を行っています。これはHPでの事前予約がないと入れません。すでに1週間先まで埋まっています。

 

(以下、ソニーパークHPより)

ソニーが取り組む6つの分野、「音楽」「半導体」「ファイナンス」「ゲーム」「エンタテインメントテクノロジー」「映画」をテーマに、それぞれの分野を「旅」「SF」「詩」「社交場」「ストリート」「森」に変換。6組のアーティストたちと共に、ユニークなプログラムに挑戦します。

(以上ここまで抜粋)

 

ソニーパークには屋上があります。屋上では、ソニーとホンダがコラボして作っている次世代電気自動車が飾られています。

あるのはこの車と空間だけ。

椅子もありましたがベンチがひとつあるだけで、あとはただの空間。

 

こんな風にエルメスのビルを見上げる感じでビルがあります。

左手には不二家のビル、裏手には東急プラザ銀座ビルがあります。

完全にビルに囲まれたビルになっています。

 

普通なら周りのビルと高さをあわせて、同じ背にするでしょう。

建ぺい率の問題で低くしているのではありません。高くできるのにあえて低く作っているのです。

これわソニーでは「余白」と呼んでいます。

都市に一番足りないものが余白。

銀座のように世界一高い土地であればなおさら、1平米も無駄にできません。

だからギリギリの容積率でギリギリまで建物を作り、そこにめいっぱい店を入れ込んで高い家賃をとって不動産収入を得ます。

当然、銀座には高い家賃を支払える企業だけが店を構えて、商売をすることになります。

結果的に銀座には有名店、老舗店、世界のラクジュアリーブランドしかなくなってくるわけです。

 

しかしこのソニーパークは違います。

何と言っても何も販売していません。

もともとショールームですから。

しかし単なるショールームではあまりにもつまらないと、前身のソニービルを作る際のビルのコンセプトづくりに、それこそ社運をかけて取り組んだことが、ソニービルを作り上げた際に日本経済新聞に寄せた盛田昭夫氏のコラムがHPに紹介されています。

 

(以下、1966年5月1日 日本経済新聞朝刊 盛田昭夫氏 より 一部筆者追記)

(中略)これで建物全体は、縦に連続して上から下まで何階という区切りなしに、縦型のプロムナードとして成り立つことになるのだ。そのかわり、エレベーターは田の字の外側につけなければならない。(ソニーピルの設計を担当した建築家の)芦原氏からは、交差点に面した角地は、ぜいたくだけれども、あき地を作って庭にしようという提案があった。なにしろ、"土1升金一升"の土地33平方メートルあけること、これ以上のぜいたくはないのだがそれならばここを日本一の庭にしようという大それた夢をいだいて、思い切ることにした。おそらく、こんな高価な庭はどこにもないだろう。また、われわれは、ショールームばかりではあまりにも芸がなさすぎるので、レストランやショッピングストリートや駐車場などもほしいという注文を出し合った。

(以上ここまで抜粋)

 

ソニービルの時代からこのビルの1Fには誰もが通行できる空間がありました。

これを誰にでも開かれた銀座の「庭」としてあえて余白を作ったのだそうです。

この思想をさらに大胆に取り入れて作ったのがGinza Sony Parkです。

 

1Fには大きな空間があり、そこから階段がぐるりと屋上までらせん状につながっていて、上がっていくことができます。

言ってみれば、階段といくつかのフロアと屋上と何もない空間だけがあるビル。

ある意味で、ムダな空間ばかりのビルです。

 

なにしろこの周辺の土地は1平米あたりの土地単価が4000万程度はします。

向かいの東急プラザ銀座の土地は坪当たり1億3千万円程度で取引されています。

日本一の坪単価の場所と言えるでしょう。

 

そんな場所に大きな空間を作るという発想。

できるものではありません。

私のような人間にはこんな大胆な発想は生まれてきません。

しかし盛田さんのお話では、ソニー社内でもどうしたものかと徹夜で議論し続けたという話があるほどですから、やはりこの銀座の土地をどのように使うのか。

単なるショールームではない、もっと総合的な使い方であり、かつ銀座の庭になるような設計にしなければSonyらしくない という視点で作られたビルなのだということです。

それがGinza Sony Parkへと確実に受け継がれ、発展させていることがビルを見てよく分かりました。

 

都会こそ余白が必要である。

都会に生きる私たちにこそ、余白、余裕、ゆとりというムダが必要です。

それをソニーという日本の一企業が発信していることに意味があります。

このようなムダこそ、これからの世の中に必要なもの。

 

ムダこそ価値であり、ムダこそ新たな発想の起点になるものです。

私はGinza Sony Parkに、日本や世界の都市に必要な要素を見ました。

私たちの仕事にも必要な余白。

これからの世の中に一番必要なものではないかと実感しました。

すべてをぎちぎちに詰め込まないで、余白をもって、余裕をもって生きたいものです。それが人生を豊かにするのです。

 

今日も余白を大切にしていけるいける!!