昨日、別大毎日マラソンが行われ、青学4年生の若林宏樹選手が2時間6分7秒という記録で2位にはいりました。

この記録、初マラソン学生記録ということで、素晴らしい記録をだし、しかも世界陸上の参加標準記録を突破しているため、テレビでも盛り上がっていました。

 

さらに驚いたのは、これだけの記録を初マラソンでだしているにもかかわらず、

「彼はこれが引退レース。悔いのない走りをしたいのでしょう」

というアナウンサーの解説があったことです。

引退レース。

だから頑張ることができましたと、レース後に若林選手も語っていました。

 

(図表 マムズラボより)

 

青学の原監督も解説のひとりとしてでていましたが、「彼は学生で終わった方がいい。日本生命でカリスマ営業マンになったほうがいい」と話をしていました。

特に説得するつもりも、競技継続を強制することもしないのだと言います。

 

世界陸上の日本代表に選ばれたら「でれるような方向で考えたい」という話もしていましたので今後の展開によっては変わるかもしれませんが、今のところは引退なのだと言います。

 

私は今の若者、特にZ世代の若者たちの新しい感覚に触れた気がしました。

今までであれば、これたけの記録をだして2位になったのですから、「やっぱりマラソンで勝負してみたい」となるのかなあと思っていました。

しかし彼の考えはまったくブレない。

これで終わりと言い続けています。

これまで10年間、死ぬ思いで駅伝に取り組んで来る日も来る日も練習していたのでしょう。

箱根で優勝し、記録もだして、さらにこの別大マラソンですべてをだしきることを自分なりのゴールにして取り組んできたのだと思います。

まわりから見たら「もったいない」と思いますし、私もそう思ってしまいますが、本人からしたら「ここが自分の競技人生のゴール」なのです。

これ以上やっても、限界が見えている。

自分のすべての力を投入した結果がここまでの成績だが、これ以上はおそらくできない。

できる時もあるかもしれないが、できない可能性が高い。

だからやめると決めた決意は変わらないのでしょう。

 

マラソンで人生を切り開くことができる人は限られています。

メダルをとれるところまでいける人はわずか数人。

世界陸上でメダルをとった人も少ないし、オリンピックでは最近は日本人がメダルをとるのは不可能とも言われます。

それだけスピードが速くなっています。

 

マラソンに転向してここからがんばってオリンピックにでるように頑張っても、次は2028年のロス五輪、その次は2032年のブリスベン五輪。

2032年は7年後。若林選手はいま22歳。両方とも狙えますが、ここから7年間、また今までのように毎日を走りにぶつけて、走ることだけに人生の一番輝かしい時をかけて、結果的にメダルはおろか、オリンピック代表や世界陸上代表にも選ばれない確率も高い。

しかもケガをしたらそこで終わり。

仮に出場してもメダルに届かなければバッシングされる。

もし順調に29歳までやれたとしても、スター選手になれるかどうかは何とも言えない。

 

だとしたら、今の時点で、過去の栄光をもって競技人生を終わりにして、自分の人生を大事にした決断をしたほうがいいのではないかと考える方が賢い決断です。

非常にスマートで、冷静に自分と将来を見定めている人だと言えます。

 

若林選手は考える頭を持っている人なのでしょう。

こうした決断があることを原監督もよくわかっているから、特に引き留めたりしないと言っているのだと思います。

 

世界陸上くらいは22歳の一番ノッている時ですからでても差し支えないし、日本生命にとっても会社のアピールにもつなげられるので、選考されたらきっと出場するでしょう。しかしそれで本当に終わりにするようにも思います。

 

Z世代はこのようにまわりがどう言おうと、冷静に客観的に自分を見れる強さを持っている世代です。

新しい世代がでてきたなあと思わされたマラソンでした。

 

今日も自分の価値観を大切にしていけるいける!!