<白い壁:第一章・・・36>
あぁ、もう2週間経ったのか・・・
診察、めんどくさい。
亮子は起きてすぐにそう思った。
久しぶりにかけた目覚ましを止めるのは早かった。
もう1度眠りたい・・・でもそうもいかない。
汗だくのあごを右手でぬぐって、
Tシャツでその手を拭く。
とりあえずのどが渇いたから、冷蔵庫に行き、
またパックごとオレンジジュースを飲み干した。
まだ足りない。
今度は水のペットボトルを開けて、一気に半分ほど飲む。
ふぅ・・・
やっと落ち着いた。
今日は特別に朝からエアコンを入れよう。
メイクもしなくちゃ、着ていくものも決めないと・・・
その前に薬を飲まなくちゃ。
菓子パンの袋を開けて、そのままかぶりつく。
咀嚼しながら、部屋の中を見渡す。
干したままの洗濯物。
脱ぎっぱなしのTシャツと短パンがかかったイス。
ほこりがうっすらと積もったテーブル。
何もかもが、「なにもしたくない」という感情の結果だ。
今日はまゆこさんも来るのだろうか?
もし会えたら、お茶でも誘ってみようか?
でもそれすら面倒に思えてくる。
ただ、前回、声を掛けたのは私だ。
次に声を掛けなかったら、
もう二度と私からお茶に誘うことはできないだろう。
水も飲み干すと、ゴミ袋に投げ入れた。
1回で入った。
何かいいことがありそうだ。
メイクも2週間ぶり。
教えてもらったナチュラルメイクもうろ覚えだが、
とりあえずやってみるか。
服は・・・あのカットソーとジーパンに、
ヒールのないサンダルを履けばいい。
別におしゃれをして行く場ではない。
普段の私をみてもらえばいいのだ。
そうなると、Tシャツに短パン、メイクすら省きたくなるが、
さすがにすっぴんにそんな姿で外出するのは、
今の亮子でも抵抗がある。
下地を作り、パウダーをはたく。
眉を描き、アイシャドーを薄く重ねて塗る。
でも亮子には物足りなくて仕方ない。
やっぱりいつものメイクのようにしっかりと重ねてしまう。
時間が迫っている。
でもゴミが気になってきてしまった。
ざっとゴミ袋に菓子パンやお菓子の空きパッケージを集め、
使ったカップやコップをとりあえず流しに運ぶ。
洗うのは帰ってからにしよう。
コーヒーの跡を見ながらそう思った。
バッグは2週間前と同じだ。
中身もそのまま、財布だけネット通販で支払いをするのに使ったから、
それだけテーブルから取ってバッグに放り込む。
今日も日差しが強いとテレビで言っていた。
買ってから一度も使っていない日傘。
まだ値札もつけっぱなしだ。
それを手で引っ張って千切る。
玄関を開けると、ムッとした空気と、
カッとした日差しが亮子を包んだ。
だるさが先立つ中、なんとか歩き始める。
診察が、先生が、私を待っているから。
(つづく)