<白い壁:第一章・・・37>
受付に行くと、いつものように笑顔でスタッフが対応してくれる。
まゆこは、それに対してサングラスを掛けたまま、頷く。
失礼かとは思うけれど、病院に行くと、どうしても緊張してしまって、
サングラスをしたままの方がラクなのだ。
でも今日は違った。
エレベータを降りると、まゆこはサングラスを外して、
バッグに掛けた。
きちんとスタッフの目を見て対応する。
スタッフに「木内さん、今日は特におきれいですね。」と言われ、
「そんな・・・今日は久しぶりにお化粧をしたから・・・」と
照れながらも答えることもできた。
いつも薄暗い中で写真集を開いているが、
今日は待合室の明るい電灯に目が少しちかちかしている。
白い壁が電灯の光を反射するのか、
余計に明るく見える。
いつもの端っこの席で、まゆこはいつもの問診票に記入し、
受付に持って行った。
席に戻って、写真集を開く。
そういえば亮子さんはまだ来ていないわね。
遅れているのか、それとも曜日が変わったのか。
お互いの連絡先すらしらない、名前だけの間柄。
急に連絡が取れなくなっても、仕方ない。
まゆこがスタッフに呼ばれて診察室に行く途中、
背後で亮子の声が聞えた。
「遅れてすみません!10:30予約の緑川です!」
静かな空間に亮子の声が響いた。
振り返ろうとしたときに、スタッフから診察室に入るように促された。
亮子さん、遅れてきただけだったのか。
それじゃ、今日はお茶でもできるのかしら?
まゆこはすっかりお茶に行くつもりで、診察室に入って行った。
(つづく)