<白い壁:第二章・・・2>
今日も調剤薬局は混んでいた。
利便性のいい場所にあるせいもあるが、
スタッフの対応がいつもいいことも一理あると思う。
具合いの悪いときなどに、横柄な態度などをとられると、
まゆこは萎縮してしてまうし、具合いも余計悪くなってしまう。
今日は端のイスが空いていたので、まゆこはそこへ座っていた。
かけたばかりのサングラスはやはりはずしていない。
まだそこまでの勇気は湧いてこないのだ。
ふと風を感じて顔を上げたら、ちょうど亮子が受付に来た。
『亮子さんだわ』
まゆこはそう思ったが、声を掛けることができない。
気づいてくれるまで、このまま待とう。
具合いが悪いのかもしれないし・・・
まゆこはそう思うと、バッグからいつもの写真集を出して開いた。
亮子は調剤薬局のだいぶ手前から、まゆこには気づいていた。
後ろから見ても、あの細い身体と珍しくまとめている髪だけでわかる。
とりあえず気がつかないふりをして、受付に行った。
・・・気がつかないふり
なんでそんなことをしなくちゃいけないんだろう。
あ、今日は自分がこんなだから・・・
亮子はそう自問自答した。
とりあえず今日も薬局は混んでいる。
万が一でも、気がつかないふりは、ばれてはいないだろう。
事実、まゆこは亮子がそんなことを思っているとは気がついてない。
受付から振り返ると、写真集を眺めているまゆこの姿が見えた。
まゆこが顔を上げるようなそぶりを見せないので、
私には気づいていないのだろう。
声を掛けようかどうしようか・・・2,3分考えて、亮子は声を掛けた。
「まゆこさん」
顔を上げたまゆこはいつものサングラスをしていた。
そのサングラスをはずしながら、「亮子さん、こんにちは」そう言った。
「こんにちは。今日も混んでるわね。どのくらい掛かるかしら?」
まゆこを改めて見て、自分と比較し、少し焦りながら亮子はそう言った。
「30分以上はかかるんじゃないかしら・・・」
「それなら、お茶でもしない?」
亮子は、自分とまゆことを比較して「負けた」という思いを吹き飛ばすように
そう言って、少し硬めに微笑んだ。
「え、えぇ。お茶しに行きましょう」
まゆこが了承した。
今日の亮子としては、断ってもらっても全く問題なかったのだが、
まゆこがそう応えるなら、誘った亮子がキャンセルすることはできない。
2人して受付に行き、後で薬を取りに行くことを告げると薬局を後にした。
(つづく)