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●田原総一朗「国際条約加盟のために『共謀罪』が必要だ」
という大嘘

〈週刊朝日〉
AERA dot.
[5/31 16:00]

ジャーナリストの田原総一朗氏は、

自民党が「共謀罪」法案に執着する理由に疑問を呈する
(※写真はイメージ)

ジャーナリストの田原総一朗氏は、

自民党が「共謀罪」法案に執着する理由に

疑問を呈する。

* * *

5月23日、いわゆる「共謀罪」法案が自民・公明と日本維新の会などの賛成により衆院本会議を通過した。

この前日、英マンチェスターのイベント会場で自爆テロ事件が起き、

22人が死亡し、59人が負傷した。

3月22日には、ロンドンで5人が犠牲になるテロ事件が起きている。

テロ犯人を事前に捕らえることがいかに難しいかを思い知らされた。

安倍晋三首相も金田勝年法相も、「共謀罪」はテロリストを犯行前に見つけ出して捕らえるための法案で、

一般人が捜査や監視の対象になることはあり得ない、

と繰り返し強調している。

だが、テロリストは

印をつけているわけではなく、

一般人の中に

もぐり込んでいる。

だから、テロリストを見つけ出すには、

一般人の

プライバシー、

そして内面を

徹底的に

監視し、

調べ上げる

必要がある。

そんなことは

安倍首相も金田法相も

わかりきっている

はずである。

米国、英仏などはいずれも「共謀罪」にあたる法律を持っていて、

日本では認められていない盗聴を行っている。

それでも、テロ事件が
続発しているのだ。

テロリストを見つけ出そうとすれば

徹底的な監視社会になり、

言論・表現の自由など

なくなってしまうはずである。

現に、プライバシーの権利に関する国連特別報告者ジョセフ・カナタチ氏が

5月18日付の書簡で、

安倍首相あてに「『共謀罪』法案は、

プライバシーや表現の自由を

制約する恐れがある」

と警告した。

ところが、日本政府は

カナタチ氏の警告について

「国連の立場を反映するものではない」

として切り捨てる

反論書を送り、

カナタチ氏は

「私が挙げた懸念に対して、

まったく答えていない」

と強い怒りを表明した。

実は、日本の外務省は昨秋、国連人権理事会の
理事国に立候補するにあたり、

「特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため、

今後もしっかりと協力していく」

と誓約している。

にもかかわらず、

この対応である。

安倍自民党は「一強」であることに

自信過剰になってか、

国連まで

切り捨てているのだ。

そもそも、自民党はなぜ

「共謀罪」に

固執するのか。

自民党の幹部たちに確かめると、

誰もがパレルモ条約という国際条約に加盟するためだ、と答えた。

パレルモ条約には全ての先進国を含む187カ国・地域が加盟していて、

国連加盟国で加盟していないのは日本など11カ国だけだ。

これは恥ずかしい限りだというわけだ。

だが、

実は

パレルモ条約とは

マフィアなどを対象にした

国際的な経済犯罪を

取り締まるための

条約で、

テロなどを

対象とは

していないのだ。

民進党の枝野幸男氏や山尾志桜里氏などに確認すると、

パレルモ条約への加盟に

特別の資格は必要なく、

現在の日本の状態でも

加盟できるのだという。

つまり「共謀罪」など

つくる

必要はない

というのだ。

パレルモ条約についての第一人者と言われるノースイースタン大学のニコス・パッサス教授も、

それぞれの国が判断すればよい、と語っている。

だが、現在の状態でも加盟できるのであれば、

なぜ民主党政権時代に加盟しなかったのか。

そのことを幹部の一人に問うと、

加盟しようとしたら

法務官僚たちから

「新たに法律をつくる必要がある」

と言われ、

「大変恥ずかしい話だが、
当時は勉強不足で、

そういうものかと諦めてしまったのだ」

と答えた。

こんなことを話すのは、

政治に対する覚悟ができたということなのか。

※週刊朝日
2017年6月9日号