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●暴走・安倍政権 憲法改正への布石「18歳選挙権」

〈週刊朝日〉
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 [5/21 07:12]

連休明けの5月7日に開かれた衆院憲法審査会の冒頭で、

党憲法改正推進本部長の船田元衆院議員は

公職選挙法改正案を今国会に提出したことを報告し、

「速やかな成立に取り組む」

と決意を示した。

そこには、18歳選挙権と連動し、

憲法改正に向かう政府の思惑があるという。

ジャーナリストの桐島瞬氏が、その舞台裏に迫った。

* * *

18歳選挙権を柱とする公選法改正案は、

3月に自民、公明、民主、維新、次世代、生活の党の超党派が国会に再提出。

選挙権が拡大すれば、選挙権年齢を25歳から20歳へ引き下げ、同時に女性に選挙権と被選挙権を認めた1945年以来、

実に70年ぶりの改正となる。

「普通選挙をやっている世界191カ国のうち、176カ国が18歳かそれ以下に選挙権を与えている。

18歳化はナショナルスタンダードです」(船田本部長)

オーストリアのように、 16歳に与えている国さえある。

それを考えれば、18歳化で日本も世界水準となる。

だが、その一方で、

このタイミングでの18歳選挙権に

懐疑的な声もある。

2月、船田本部長と会談した安倍晋三首相(60)が

憲法改正の国会発議とその賛否を問う国民投票の実施時期について、

「来年夏の参院選以降」という認識を示した。

つまり、いま選挙年齢を

引き下げるのは、

改憲を目論む自民が若者の

「青田買い」を狙っているのではないかという見方だ。

一橋大学で若者のイノベーションを研究する米倉誠一郎教授が指摘する。

「改憲推進勢力にとっては、国民投票で過半数の賛成票を確保するためには

母集団を増やしたほうがよい。

18歳、19歳が改憲に向けた

数の工作に使われてしまう懸念があります」

法案の共同提出に加わらなかった社民党と共産党も理由は同じだ。

「選挙権の18歳化は、

改憲の国民投票と合わせる意味があると思います」(社民党の福島瑞穂副党首)

「改憲を狙う国民投票のために選挙制度を変えることが

今回の18歳選挙権の前提。

引き下げには安倍政権の思惑がある」(共産党の穀田恵二国対委員長)

他国を武力で守る集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法改正案など

安保関連法案が国会に5月15日、提出されたことから、

18歳選挙権自体、

戦争を想定したものではないか、

と懸念する声もある。

政治評論家の有馬晴海氏が言う。

「日本では20歳でもまだ子供と言われている。

それなのに18歳に

無理やり選挙権を与えることに

誰も違和感を覚えない。

18歳選挙権のある国では、

徴兵するに当たって同時に

意思表示の権利を持たせる意味合いがある。

日本も同じことを想定しているのではないか」

こうした意見が出てくるのは、

18歳選挙権と

憲法改正のための国民投票年齢がリンクしているからだ。

国民投票年齢を18歳以上と定めた

「憲法改正国民投票法」が成立したのは、

第1次安倍内閣の07年(施行は10年)。

このとき、選挙権年齢が 20歳のままでは法的な整合性が保てないとの議論になり、

選挙権が18歳に引き下げられるまでは

国民投票も20歳にするとの付則をつけた。

しかし、公選法改正がその後一向に進まないことから、

昨年6月には国民投票法を改正。

国民投票の年齢を、4年後となる18年から

自動的に

「18歳以上」にした経緯がある。

今国会で選挙権年齢が18歳に引き下げられれば、

国民投票権も自動的に18歳となる。

そうしたこともあり、

「18歳選挙権への流れそのものが、

改憲を進めたい

安倍政権の

思惑に沿ったものだ」

という批判が出ているのだ。

※週刊朝日
2015年5月29日号より抜粋