(つづき)

参加した学会が飛騨高山で開催されたのですが、

実は以前、一度だけ勉強会で高山に来たことがありました。

この時は前後の日程に余裕がなく、白川郷に行くことができませんでしたが、

今回はこの望みをかなえることができました。

バスに揺られること1時間。高速からの激しい高低差を降りたところに

世界遺産、白川郷がありました。

テレビなどで見たことのある、イメージ通りの集落です。

(観光客に目もくれず、水草取りを黙々としている人が気になりました

現地の人には普通に生活の場で、重文の和田家にも人が生活しています)

地元の有力者であったであろう人の家をまずは観覧して

どんな仕組みかを見てみます。

1Fは生活の場、ただしお金持ちだったのでかなり広い住宅です。

2Fは養蚕、つまり蚕を飼っていたスペースで、中二階にはその道具が置かれていました。

養蚕でこんなに儲けていたのか、と思っていたら火薬も扱っていた、とありました。

火薬? これはこの時はよくわかりませんでした。。

白川郷での滞在時間は限られていたので、地図を見ながら、集落の奥の方にある

田川家養蚕資料館、というところが気になったのでそこを目指すことにしました。

山あいの集落はそれほど大きくはないので、

稲刈りの進む田んぼの間を歩くこと15分ほどで到着。

(語り部の田川家の方。典型的なここでの暮らしを説得力ある講釈で聴かせます)

白川郷では蚕を育てることと火薬の製造が収入源であった、

とのことでした。

蚕についてはわかりますが、火薬の製造は一般に認められたものではなかったため

山奥である白川郷はその意味で「密造」に適していたと言えます。

もともと一向宗の信者が多く、一向一揆の際は表立つことなく裏から火薬で一向宗を支えた、

とのことでした。

火薬はともかく、蚕について説明を始めたとき、

傍らの箱に入っているのが蚕であることが分かりました。

(白いのが「おかいこさま」。すごいスピードで桑の葉を食べます)

桑の葉を山もり、大量に蚕の箱にのせると

蚕たちは動き始め、さくさくさくさくとコンスタントに、

しかもよどみなく、葉を食べていきます。

そのスピードは速く、一生食べる分の8割を一週間で食べるのだそうです。

この時もみるみるうちに葉が少なくなっていきました。

現在も蚕を飼っているという田川家さんの話なので

とても説得力がありました。

山深い集落であったため養蚕が盛んであっただけでなく、

火薬の製造という公に知られてはいけないものも

この地域が受け持っていたということが分かりました。

今ではすっかりすたれてしまいましたが、

かつての日本を支えた産業の一端を見ることができて

とても有意義でした。

松本市で生糸の製造、近代化、女工などの歴史を建物や器械で見て

白川郷では養蚕農家の生活と「おかいこさま」そのものを実物で見ることができました。

思いがけず「糸」がつながったのでした。

(この項、おわり)

おかいこさま (2)