構造塾のブログ

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木造住宅の耐震に関する情報発信
構造塾のこと、日々考えていることなど

木造住宅の耐震性能の設計は必要か?

この問いに不要と答える人はいないと思います。

ではなぜ、すべての木造住宅が耐震性能の設計がされないのか?

どこか、耐震性能の設計を不要と思う言い訳が出てくるからではないでしょうか。

 

では、どのような言い訳が出てくるのでしょうか。

耐震性能の設計は難しい。

耐震性能の設計はどのような設計を行うのかよくわからない。

耐震性能の設計はコストアップになるかも。

耐震性能の設計は間取りの制約になるかも。

耐震性能の設計はデザインに影響するかも。

これすべて妄想です。

なぜなら、そもそも耐震性能の設計を行う手前で言い訳しているだけですから、妄想なのです。

 

純粋に考えると必要と答える耐震性能の設計が、妄想により打ち消されるおかしさ。

これ、現実に起きていることなのです。

 

もし今、耐震性能の設計を行っていないのであれば、

一旦やらない言い訳を捨てて純粋に考えてください。

木造住宅の耐震性能の設計は必要か?

必要と思うならば、やらなくてよいという言い訳を捨てたまま、

どうすればできるのかを真剣に考えてみてください。

 

多分、考えてもどうすればできるかの答えは出てきません。

だから、実践してみてください。

まずは、いま設計している木造住宅の耐震性能の設計を行ってください。

 

具体的な計算方法は「品確法の計算」か「許容応力度計算」です。

狙うべき性能は「耐震等級3」です。

 

品確法の計算による耐震等級3の方が許容応力度計算に比べ、

耐震性能がちょっと低めになります。

できることなら許容応力度計算による耐震等級3がおススメです。

 

次は、誰が計算するかです。

自分はできない、社内で計算できる人がいない、だから無理と思わず、外部の誰かに依頼してください。

構造計算事務所があります。プレカット業者があります。

建材流通店も計算できます。

外部の誰かに計算を依頼してください。

 

計算してみると構造上の問題点が見えてきます。

壁量が不足しているかもしれません。

その場合は、耐力壁を追加する間取り変更が必要です。

水平構面がクリアしないかもしれません。

吹き抜けが大きすぎる、吹き抜けの位置がまずい、吹き抜けと階段位置が近い、

並行する耐力壁(線)間隔が空きすぎている。

こんな理由です。

 

間取り変更や吹き抜けの補強を行う必要があります。

そのほか、大きな梁断面が出る、基礎がゴツくなる、さまざまな問題点が癒えてきます。

 

だから、計算するとダメなんだ!ではなく、

いまの間取り、いままでの間取りが構造上問題があったととらえてください。

 

計算の結果を素直に受け止め、間取り作成に活かしてください。

徐々に耐震等級3がクリアする間取りができるようになってきます。

そして、耐震等級3は難しくないと感じるようになります。

まずは純粋に選択する。

そして素直に従う。実践してみてください!

地震が起こるたびに出てくる言葉に「想定外」があります。

2011年に発生した東日本大震災では、

「想定外」の大津波による甚大な被害が出ました。

 

2016年に発生した熊本地震では、

震度7が2回連続で発生する「想定外」の地震でした。

 

2024年に発生した能登半島地震では、

新潟市の西区、石川県の内灘町において液状化による側方流動が発生する「想定外」の地震でした。

 

実はこの「想定外」ですが、

2011年の東日本大震災による「想定外」の津波被害、

2016年の熊本地震による「想定外」の震度7の連続発生は、

まさに「想定外」だったと思われます。

 

しかし、2024年の能登半島地震による液状化の側方流動は、

砂丘のヘリという側方流動が発生する場所で「想定内」で発生しています。

 

地震被害による「想定外」は、

工学的に、専門家内でも「想定外」の場合と、

工学的、専門家内では「想定内」でけれど、一般的に「想定外」とが存在するのかもしれません。

 

そこで、木造住宅の倒壊について考えてみます。

木造住宅の倒壊には「想定外」は存在しないと考えています。

あくまでも木造住宅の耐震性能が原因による倒壊についてです。

 

地震で倒壊する木造住宅は「耐震性能不足」が主たる原因です。

建築基準法の要求性能では、最低基準の耐震等級1の場合、

「極稀に発生する大地震(震度6強から7程度)において、倒壊・崩壊しない程度」としています。

これは、構造躯体の損傷を許容しているということで、

震度6強から7程度の地震が発生すると耐震等級1の木造住宅は構造躯体が損傷するため耐震性能は低下する、

 

しかし、一度だけは倒壊・崩壊せず命を守るという意味です。

 

2016年の熊本地震では、

4月14日の震度7で耐震等級1の木造住宅は構造躯体が損傷したけれど倒壊・崩壊せず命を守り、4月16の震度7で倒壊しました。

他の木造住宅もその後に発生する余震(現在は余震は使わず地震で統一)で倒壊していきました。

これはまさに「想定内」なのです。

 

しかし、要求性能を理解せず、過去の地震被害を学ばず耐震等級1で十分とする建築士や建築業者も多く存在します。

 

自身の建築するエリアで大地震が発生していないだけなのに

「過去に地震で倒れた建物はない」と言い、耐震等級1で十分という考えです。

 

そんな耐震等級1でも十分という建築士や建築業者の建築エリアで大地震が発生し、

安全と豪語していた耐震等級1の木造住宅が倒壊すると必ず言うのが「想定外」の地震だったという言い訳です。

 

自分の建てた木造住宅が倒壊するはずないという絶対的自信と保身から「想定外」の地震と言い訳をします。

 

繰り返しますが、耐震等級1の木造住宅の倒壊は「想定内」です。

「想定外」と言い訳するのはやめましょう!

心理的リアクタンスとは、

自由に対する侵害に反発する心理的過程のこと。

自由を制限されると逆のことをやりたくなる心理のことです。

 

具体的には、

見るなと言われると見たくなる、やるなと言われるとやりたくなる心理です。

 

そこで考えました、

「構造塾」やセミナーで「耐震等級3の木造住宅を建てましょう!」

という話は、耐震はほどほどで良いと考えている建築士や建築業者にとって心理的リアクタンスではないかと・・・。

 

「耐震等級3を建てろ」と言われるとやりたくなくなる。

こんな心理が働くのかなと。

 

では、

耐震等級3の必要性をどう伝えるべきか?日々考えています。

とはいえ、

「耐震等級3は建てるな!」という、煽りは

エンタメに走るYouTuberのようでやるべきではないと思います。

 

多分、

「耐震等級3は建てるな!」と言われると心理的リアクタンスは発動せず

「じゃあ建てない」と楽な方に逃げるのは目に見えます。

 

この心理的リアクタンス対策、現在、思いついていません。

どのような言い方、伝え方が良いのか模索中なのです。

 

人が行動する心理に「ワクワクする」という物があると思います。

しかし、

耐震性能に関してワクワク感はどこにあるのか・・・これもまた思いつきません。

省エネ性のように体感もできません。

 

「耐震等級3の家はガッチリしていて守られている感じ」このような体感はなく、

耐震等級3の重要性がわかるのは地震がきたその瞬間だけなのです。

しかし、

耐震性能の重要性は、危機感や恐怖感で伝えたくありません。

考えれば考えるほど、耐震等級3の伝え方は難しいのです。

 

日々、耐震等級3の伝え方を模索しているため、様々な角度から耐震等級3を伝えています。

地震被害から伝える、要求性能から伝える、建築士や建築業者の使命感に訴えかける、他社との差別化として、エンドユーザーのニーズとして・・などなど。

 

耐震等級3をつくるという行動理由は何でも良いと思っています。

結果的に耐震等級3の家が建てば良いのです。

 

様々試している中で、エンドユーザーに伝える、エンドユーザーに知識をつけてもらう、

これはかなり有効だと感じています。

エンドユーザーひとりひとりが「自分の家は耐震等級3にしたい」

そのニーズが建築業界を動かし始めています。

 

本来、建築業界側が耐震等級3標準化方向へと動くべきことなのですが・・・。

 

心理的リアクタンスから話がそれましたが、

心理的リアクタンスを意識し、行動を促す「何か」を模索していきたいと思います。