構造塾のブログ

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木造住宅の耐震に関する情報発信
構造塾のこと、日々考えていることなど

セミナー講師としてお声がけいただくことがあります。

基本は木造住宅の耐震性能にるいて話すのですが、

セミナーを企画する側(主催者)とセミナーでは話す側(セミナー講師)とで考えるべきことが多々あるなと感じています。

 

まず、セミナー主催者が考えるべきこと。

セミナー主催者は、セミナーの目的を明確にする必要があります。

当たり前すぎる話ですが、目的が不明確なセミナーは結構あるのです。

 

セミナーの目的は簡単に言えば、「誰に、何をしてほしいのか」ということです。

具体的には、「建築業者に耐震等級3の木造住宅をつくってほしい」こんな感じです。

その際、さらにその先の目指すべき世界観を持っていることが理想です。

 

具体的には、「建築業者が耐震等級3の木造住宅をつくってほしい」、

そうすることで「地震被害をなくした」という世界を実現したいという世界観です。

 

この世界観は大きければ大きいほど、社会性があればあるほど広く受け入れられます。

そして、セミナーの目的を果たし、目指すべき世界観に近づくには「この講師に話してもらう」という観点で講師を選択します。

 

当然ですが、セミナー主催者は慈善事業を行っているわけではないため「営利」は考える必要があります。

セミナー主催者が行政であれば、

地域の木造住宅の耐震性能向上により地震被害が減る、

営利で考えれば災害復興の費用が抑えられます。

セミナー主催者が業界団体であれば、

有益なセミナーなどの情報提供と技術レベル向上の機会を与えることで、会員拡大が図れます。

セミナー主催者が企業であれば、その企業の商品販売にも繋がるはずです。

 

しかし、セミナー主催者が企業であれば、

目指すべき世界観が「企業の利益」になり、セミナーの目的も「企業の利益」になっていることが多くみられます。

企業の利益は大切です。

 

しかし、世界観、セミナー目的まで企業の利益にすると、セミナーは完全なポジショントークと売り込みになり、

セミナー受講者は自身のメリットを得ることなく、

今後、セミナー受講は避けるようになります。

 

しかし、ここが全く見えずにポジショントークと売り込みの営業セミナーを何度も何度も企画し、

受講者が少ないと嘆く企業が多いこと・・・。

最悪なのは、このような営業セミナーに講師を呼ぶ際、講師にもポジショントークと売り込みをさせることです。

考えられません。

 

中には、それを前提で話すセミナー講師(結局は企業の営業代行)もいますが、

これを繰り返すことでセミナー講師自体の評判も落ちてきます。

 

セミナー主催者は、セミナー目的、その先にある目指すべき世界観を明確にしてください。

当然、その過程での営利も視野に入れながら。

 

そして、これら達成に最適なセミナー講師を選択してください。

時々、建築業者に言われること「構造に興味がない」。

だから耐震等級3はやらない。

構造よりもデザインや使いやすい間取りが大切。

 

構造、耐震は、興味ある無しの話ではありません。

構造、耐震は絶対的に必要な性能です。

 

構造、耐震は、デザインや間取りと優先順位を決められるものではありません。

構造、耐震は基本性能であり、この基本性能を確保した前提でデザインや使いやすい間取りを考えます。

これが建築なのです。

 

なぜ、そんなこともわからないのか。

なぜ、そんな思想でいままで家をつくり続けていたのか。

 

「構造に興味がない」お前の興味など関係ない!建築、特に木造住宅は人の命を守るもの。

その、命を守る構造や耐震に興味がないというのは、

地震で家が倒れようが人の命が奪われようが「興味なし」と言っています。

この無責任さを真剣に考えてみてください。

 

興味がないなら建築という仕事をしてはいけません。

他人からお金をいただき、人の命を守るものを「構造に興味なし」という思想で安全性能が不明確な建築を行う。

絶対にやめるべきです!

 

このような思想で木造住宅をつくる人が多く存在するうちは、木造住宅の地震被害は減ることはありません。

 

1995年に発生した阪神淡路大震災の現地を見たときに感じた「木造住宅の倒壊被害は続くかもしれない」という予感は、残念ながら当たってしまいました。

大きな地震が発生する度に木造住宅は倒壊し続けています。

木造住宅の地震被害をどこか諦めている風潮があります。

木造住宅は耐震性能が低いので致し方ない。本当にそうなのでしょうか。

 

鉄骨造、鉄筋コンクリート造の建物が地震で倒壊しなくなったのは、

木造に比べて耐震性能が高いからではなく、構造計算により耐震性能を確保しているからです。

それだけなのです。

 

木造住宅はその構造計算を行わない、耐震性能が不明確、耐震性能が不足している、だから地震被害が出続けている。

これだけのことなのです。

 

やるべきことは明確です。

新築住宅は耐震等級3を標準にしましょう。

そうすることで地震により倒壊せず住み続けることのできる住宅が標準になってきます。

 

難しいのは既存住宅です。

これから家を建てるぞ!というモチベーションがない場合が多い、

高齢者が耐震性能の低い木造住宅に住んでいる場合が多い、

費用をどこから捻出するのか・・・。

新築以上に既存住宅の耐震補強はハードルが高いと思います。

 

とはいえ、耐震性能の低い木造住宅を放置して地震被害が続くことは何とか止めたい!

課題はたくさんありますが、木造住宅の耐震性能向上を本気で考える必要があります。

 

「構造に興味がない」、そんな思想の建築業者がいなくなることを願っています。

木造住宅の耐震性能の設計は必要か?

この問いに不要と答える人はいないと思います。

ではなぜ、すべての木造住宅が耐震性能の設計がされないのか?

どこか、耐震性能の設計を不要と思う言い訳が出てくるからではないでしょうか。

 

では、どのような言い訳が出てくるのでしょうか。

耐震性能の設計は難しい。

耐震性能の設計はどのような設計を行うのかよくわからない。

耐震性能の設計はコストアップになるかも。

耐震性能の設計は間取りの制約になるかも。

耐震性能の設計はデザインに影響するかも。

これすべて妄想です。

なぜなら、そもそも耐震性能の設計を行う手前で言い訳しているだけですから、妄想なのです。

 

純粋に考えると必要と答える耐震性能の設計が、妄想により打ち消されるおかしさ。

これ、現実に起きていることなのです。

 

もし今、耐震性能の設計を行っていないのであれば、

一旦やらない言い訳を捨てて純粋に考えてください。

木造住宅の耐震性能の設計は必要か?

必要と思うならば、やらなくてよいという言い訳を捨てたまま、

どうすればできるのかを真剣に考えてみてください。

 

多分、考えてもどうすればできるかの答えは出てきません。

だから、実践してみてください。

まずは、いま設計している木造住宅の耐震性能の設計を行ってください。

 

具体的な計算方法は「品確法の計算」か「許容応力度計算」です。

狙うべき性能は「耐震等級3」です。

 

品確法の計算による耐震等級3の方が許容応力度計算に比べ、

耐震性能がちょっと低めになります。

できることなら許容応力度計算による耐震等級3がおススメです。

 

次は、誰が計算するかです。

自分はできない、社内で計算できる人がいない、だから無理と思わず、外部の誰かに依頼してください。

構造計算事務所があります。プレカット業者があります。

建材流通店も計算できます。

外部の誰かに計算を依頼してください。

 

計算してみると構造上の問題点が見えてきます。

壁量が不足しているかもしれません。

その場合は、耐力壁を追加する間取り変更が必要です。

水平構面がクリアしないかもしれません。

吹き抜けが大きすぎる、吹き抜けの位置がまずい、吹き抜けと階段位置が近い、

並行する耐力壁(線)間隔が空きすぎている。

こんな理由です。

 

間取り変更や吹き抜けの補強を行う必要があります。

そのほか、大きな梁断面が出る、基礎がゴツくなる、さまざまな問題点が癒えてきます。

 

だから、計算するとダメなんだ!ではなく、

いまの間取り、いままでの間取りが構造上問題があったととらえてください。

 

計算の結果を素直に受け止め、間取り作成に活かしてください。

徐々に耐震等級3がクリアする間取りができるようになってきます。

そして、耐震等級3は難しくないと感じるようになります。

まずは純粋に選択する。

そして素直に従う。実践してみてください!