たぶん 上手くいったと思う | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 今日は養殖コンブ種苗を配布しました

 

 昨日

 「コンブ種苗を沖出しします」

 って言ったら

 「雨の日に出すのか?」

 ってちょっと切れ気味で言われたんですが

 

 

 今の時期は水温が高くて、海には栄養分がほとんど無い、その上、太陽の光が強い

 ワカメ・コンブの種苗にとっては三重苦

 ダメな要素ばかり揃ってます

 

 ワカメ・コンブは光合成をして成長するので

 光が強いほどたくさんの栄養分を欲しがります

 

 栄養分がたくさんあって光が弱ければ、光の分だけ栄養分を使うので問題ないんですけど

 栄養分がないのに光が強いとガス欠みたいなもので

 落ちて(死んで)しまう

 

 ほんとは海に栄養分が増えてから海に出せば良いんですが、年々栄養分が増える時期が遅くなってきてるので、それを待ってたら12月になってしまいます

 

 水産技術センターの「栄養塩情報」だと栄養分が安全圏に入るのは11月末頃

 

 11月末にワカメの本養成に入ったって間に合わないんですよ

 

 春先の水温が上昇してくればワカメは品質が悪くなる

 春先の水温が上昇する時期は年々早まってるんです

 従来、早い人だと10月中に本養成に入ってたのが、1ヶ月も遅れて本養成して、しかも収穫期が前倒しじゃ減産必至

 

 「11月末?そりゃ栄養塩増えるでしょうよ。でも、それから巻き込んだんじゃ遅い。そんな予報に意味はない」

 って以前つい口から出ちゃったんですが

 

 収穫を考えれば一日も早く本養成に入る必要があります

 そこをどうするかでしょ?

 

 晴天だと、海水中の植物プランクトンが栄養分を吸収してしまうので、そもそも少ない栄養分が更に低下する

 ベタ凪だと海がかき混ぜられないので、これまた低下する

 しかも、晴天時は光が強いので種苗はたくさんの栄養を欲する

 おまけに、室内で5,000ルクス程度の光量で育ってた種苗が突然数万ルクスの強烈な光に曝されるわけです

 なので、晴天ベタ凪は種苗にとって最悪です

 

 雨には栄養分が入ってるんですよ

 光量も室内と同じぐらいなので、今の時期の雨は好条件

 そして、波が高ければ海がかき混ぜられて栄養分も維持されますし、シケで濁れば水中の光量は更に抑えられるので更にいい

 

 とはいえ、シケで養殖施設が揺すられると、種糸同士が擦れ合って種が落ちてしますし

 種苗に直接雨が当たるとさすがにまずい

 

 なので、栄養分が安定しない今の時期は、種苗の沖出しのタイミングは雨が降る直前の凪がベストだと私は思ってます

 

 室内から海に出すと、急激な環境の変化について行けなくて落ちてしまうので

 沖に出して最初の1週間程度持ちこたえれば後はどうにかなります

 特に沖に出した初日はショックが大きいので最も大事ですね

 初日が山場

 

 

 午前4時、種苗を漁業者ごとに小分けして袋に入れて

 ボイラーの前へ

 

 室内での培養水温は16℃台で海の水温は17℃台

 午前4時はさすがに冷えてますので、ただ置いておくと水温はどんどん低下していきます

 で来るだけ水温を下げないために90℃のお湯が入ったボイラーの前に置いて水温をキープしてます

 午前5時30分頃に漁業者へ配布して

 午前8時過ぎに雨が降り出しましたので

 私的には最高の仕事をしたと自画自賛(笑)

 

 おそらく、今日配布した種苗は大丈夫かと

 

 

 種苗を出した後、田老川のサケ捕獲施設に行きましたら、けっこうサケが見えてました

 10年前なら

 「11月なのにこれしかいないの」

 って青ざめるような尾数ですけど

 今年にすれば上々かと

 10月末時点で田老川は岩手県内で2番目の遡上数でした

 (トップから1,000本近く少ないですけど)