アワビを採る際の最重要パーツ
アワビ鈎
以前は田老にも鍛冶屋がありましてアワビ鈎を造っておりました
地元の鍛冶屋の良いところは
鈎の大きさとか太さとか角度とか個人個人の細かいリクエストにも対応してくれるところ
曲がれば打ち直してくれるし
田老の鍛冶屋が廃業して
鍬ヶ崎の鍛冶屋で造ってもらったり
そのうち鍬ヶ崎の鍛冶屋も廃業して
とどめに東日本大震災で近くの鍛冶屋はなくなってしまいました
田老の組合員の皆さん、今は大船渡の会社が造った鈎を使ってます
漁協の購買部で仕入れているのは2社
大量生産なので個人の細かいリクエストはムリですが
2社それぞれこだわりの形状がありまして
組合員は自分好みの鈎を選択するということになります
A社のものB社のもの
そして「千鳥」(右端のヤツ)
「千鳥ってなにが違うの?」
購買のおねーさんに聞くと
「そういう形の名前らしい」
「ふーん。千鳥だとアワビがいっぱい採れる?」
「腕次第じゃないの」(笑)
「でしょうね」
アユの掛けバリだと掛かりやすいものは外れやすい
外れにくいものは掛かりにくいという傾向にありますが
アワビ鈎もそんなような感じかと(てどなすのおらにはわがんねえども)
鍛冶屋の鈎は柔らかい鉄を使ってたのか焼き入れの加減か解りませんが
力任せに引くと曲がったものでした
折れてしまうとどうしようもないんで、力が掛かると曲がるようなセッテイングにしてたんですかね
鉄が伸びるほど引くなよ!
って思うかも知れませんが
アワビがピッタリ岩に張り付いてしまうと船が傾いても剥がれないんです
まあアワビの身に鈎が刺さっていれば鈎が伸びる前にアワビが剥がれる事が多いんですが
アワビに掛けたつもりで実は岩に掛かってたり、殻に掛かってたり
アワビだと思ってたのが実はシューリ(イガイ)だったりすると
(ん?アワビが岩から剥がれねえ、クソッ)
って思いっきり引っ張って
鈎が曲がると
船に石を積んでいって、鈎が曲がると石でガンガン叩いて元に戻して使ったものです
それができるのも鉄の良さ
曲がることを
「のめる」
って言ってましたね
「あそごの鍛冶屋の鈎はのめってわがんねえ」
(あそこの鍛冶屋の鈎は曲がるからダメだ)って感じかな
この辺の人は「わがんねえ」ですけど、内陸の人は「わがね」って
「解らない」も「ダメだ」どっちも「わがね」
なので、理解するのは難しい
IBCラジオを聞いてると地元訛りが得意なアナウンサーさんが
「やんべに」
ってよく言われるんですけど、内陸の言葉なんですねたぶん
岩手在住50余年の私、理解不能
「やんべ?なに?」
話の前後から判断するに
田老で言うところの
「いいあんべえに」
が内陸では短くなって
「やんべ」
かな?
解りませんけど
例えば、人が通る場所に物が置いてあって通るのにジャマな時
「あそこに置いてある物を右に2m動かして」
などと具体的なことは言わず
「通んのにジャマになっから あの物を いいあんべえに 動かしてけろ」
(通るのにじゃまになるから あの物を いい感じに動かしてちょうだい)
詳細はあなたの判断に任せるよ
ってな感じですかね
IBCラジオに「方言詩の世界」ってコーナーがあって、地元の方言で作った詩をアナウンサーさんが朗読するんですが
その方は内陸の訛りなので沿岸とは全然違います
沿岸の人が書いた方言詩をその方が朗読するとなんか違う
同じ岩手でそんなに違うの?
って思うかも知れませんけど
岩手は四国とほぼ同じ大きさなので
高知県と徳島県で言葉が違うように
違って当然かと
松尾村で働いてた頃は
「んが、わげもんのくせに訛ってらじゃ」
(君、若いのに訛ってるね)
ってよく言われたなあ
「んが?わげもん????」
お互い岩手県人なんですけど言葉が通じない(笑)