働くということ? | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 震災直後、漁協はまさに殺人的な仕事量で

 たくさんの職員が辞めていきました

 

 あるものは他にやりたいことがある

 あるものは家庭の事情

 あるものは健康上の理由

 

 ということになってますけど、あまりにも仕事が大変すぎた

 もしくは、大変さに見合うような収入じゃなかった

 っていうことも原因の一つだったのではないかと思います

 

 

 自然環境にあわせるしかない漁業では

 予定通りに休みを取ることができませんし

 時間も不規則だったり

 かといって給料がそんなに高いわけじゃないですから

 

 隣の芝生がきれいに見えるのも致し方ないのかなと

 実際、やってみないと解らないものってあるんでしょうから

 

 彼らが今どう思っているのかは解りません

 

 

 

 仕事を選ぶときの基準はなにか?

 若い人に聞くと

 

 休みが確実に取れること

 残業がないこと

 社会保障が充実してること

 給料がいいこと

 っていうようなことになるみたいです

 

 まあ私が若い頃も同じようなものでしたね

 高い給料をもらって、週休二日でフレックス

 休みは海外に旅行に行って

 なんてのがいいなと 

 

 

 私が魚の研究機関で臨時で働いてた20才の頃

 世の中はバブルの絶頂期で

 テレビには高価ブランドの服を着た同世代の若者が夜の町を闊歩する姿が映し出されていたものです

 

 当時はボーナスが現金支給という所もけっこうあって

 「ボーナスの袋が立った」

 なんていう友人もいましたから

 100万円ぐらいないと給料袋も立たないでしょうねえ

 そんなお金持ったこともないから知りませんが(笑)

 

 私といえば給料7万円、ボーナスなし

 家賃と水道光熱費、車のガソリン代を払う残るお金はごく僅か

 農家の叔母からもらった米と、田老から送られてくるワカメでなんとか生きてるといった状況で

 テレビに映ってる人達をどこかよその国の出来事のように感じました・・・・・

 

 そこに入る前はコンピュータの学校でプログラミングの勉強をしてたんですけど

 魚をやりたいって辞めたんです

 先生は

 「魚をやったって給料は知れてる。プログラミングを覚えればどこの会社からも引く手数多だ。考え直せ」

 って引き留めてくれたんですけど

 「金の問題じゃないんです」

 って啖呵を切って

 現実に直面してから、そのあまりの格差に愕然としたというバカな若造でございます

 

 なにしろ臨時ですから、給料は安いし、有給もないし

 学歴もないので、お偉いさん方や相談に来られる養殖業者からは人として認知されず

 

 極寒の地だったので冬の厳しさは壮絶でした

 養魚池に入れば前髪に氷柱ができ

 借家はあまりの寒さに水道管に凍結防止ヒーターを巻いて、水道を落としても朝には凍って水が出ない

 生鮮食品は冷蔵庫に入れないと凍る(笑)

 冷蔵庫は冷やすためのものではなく、凍らせないためのものでした

 

 あー、今頃友人達は夜の街で女の子と遊んでるんだろうな

 オレはこんな極寒の地で一人、食うや食わず

 何やってんだろって

 

 その時はホント辛かったですけど

 今となれば、その当時の経験はかけがえのない財産です

 

 当時、ブランドのスーツを着て夜の街を闊歩していたヒトタチは今どうしてるんだろうか・・・・・

 

 

 

 休みや給料は仕事を選択する上での重要事項に違いないですけど

 でも、待遇面だけで仕事を選んでしまうと、厳しい状況になったときにどうなんでしょうかね

 条件悪くなったんで辞めまーす

 とか?

 

 

 若いコに将来の夢は

 って聞くと

 がんばって勉強して、いい大学に入る

 なんで良い大学に入りたいの?

 いい会社に入るため

 いい会社ってどんな会社?

 給料がよくて、たくさん休みもある

 たくさんお金と休みをもらって何をしたいの?

 ・・・・・・・

 

 結局の所、楽がしたいだけなの?

 

 

 いい年こいて実は私もよくわかりません

 お金や休みだけじゃない

 なんていいながら、楽して金が稼げる方法があったら断れないかも(笑)

 まあ、そんな話があるわけないんですが

 

 私の両親は、子供もほったらかしで

 ただただ必死に働いて収入を得ることで精一杯みたいな感じで

 収入を得るためにはどんな辛いことでも耐える

 って、ずっとがんばって、がんばって来て

 その結果、今、老後を見ると、とても幸せそうには見えません

 仕事が無くなったら何もない

 何をやったらいいか解らないみたい

 

 

 街の高齢者を見てもやっぱり幸せそうには見えません

 

 

 私の回りで幸せそうに見える高齢者は現役の漁師

 元気で好き勝手なことを言いますけど(笑)

 覇気がある

 

 

 若い子でも楽しそうに漁師をやってるのがいます

 定置網やって、養殖やって、差し網やって、カゴやって、ダイバーやって

 疲れない?寝る時間あんの?

 って心配するぐらいですけど

 いつでもニコニコして楽しそうです

 

 

 かくいう私もあーだ、こーだと愚痴をこぼしつつも

 実は仕事は苦じゃない

 まあ楽しくはないです。ツライことばっかですけど(笑)

 

 

 

 理屈はよく解りませんし

 うまく説明もできませんけど

 

 結局、生き生きと仕事をできてる人が幸せなんじゃないでしょうかね

 

 

 

 先日、漁業者に

 「おい、お前、また疲れた顔して、目の下にクマができてるぞ。倒れんなよ」

 って言われました

 どうやら私は幸せそうには見えないようです(笑)