自立支援介護の導入議論が本格化④ | 斉藤正行のブログ

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前回は、介護業界を取り巻く環境の変化、介護保険制度が制度疲労をおこし行き詰っている現状と、制度の抜本改正が必要であり、「自立支援介護」の制度への導入が、その抜本改正の試金石となることをお伝え致しました。

 

今回は、では、「自立支援介護」の制度への導入によって、何を得ることが出来るのか?導入メリットを確認していきたいと思います。

 

もちろん、どのような制度設計となるのかによって、そのメリットは変わってくることになると思いますが、現時点でわかっている大枠方針に基づき整理してまいります。また、メリットを整理することによって、どのような制度設計とすべきかも見えてくることとなります。

 

私は、大きく3つのメリットが存在すると考えています。

 

1.自立支援を実現するという介護保険制度の理念を、制度設計に組み込むことになること

2.自立支援の実現、要介護度改善、ADLの維持・向上を事業所が目指すことによって全体サービス品質の向上に繋がること

3.要介護度改善に伴うインセンティブを実現することによって、持続可能な介護保険制度の実現を財政面より貢献できること

 

まず1つめ

1.自立支援を実現するという介護保険制度の理念を、制度設計に組み込むことになること

 

これは、2回目に自立支援についての定義を整理した際にも触れましたが、「自立」と「自立支援」、「自立支援介護」の3つの言葉の定義をしっかり理解し分けて議論することが重要であります。

 

そして、詳細は2回目の記事を確認頂きたいと思いますが、介護保険制度の理念たる「自立支援」については誰もが反対することのない考え方であり、その「自立支援」の実現に対して、自治体・事業者にインセンティブを付与する制度の導入は好ましいことです。この制度への落とし込みを「自立支援介護」として定義づけして論考しています。

 

もちろん、自立の概念と、現在、議論が進行している要介護度による評価がイコールではないとの指摘もあり、最もな指摘でもありますが、このあたりの反対論や懸念点、課題については、次回以降でじっくりやります。

 

つづいてメリットの2つめ

2.自立支援の実現、要介護度改善、ADLの維持・向上を事業所が目指すことによって全体サービス品質の向上に繋がること

 
これまでの介護保険制度においては、御承知の通り、要介護度ごとに報酬単価や利用限度が設定されており、要介護度の高くなるにつれ報酬単価も高くなる仕組みとなっております。
これは、重度な状態であるほど介護の手間がかかるため(現実には必ずしもそうではないわけですが)、点数単価が高く設定をされています。
 
介護保険制度の創設当初から、常に指摘され続けてきたことですが、事業者が適正な介護サービスを提供し、利用者の自立を促し、状態改善が図られ、要介護度が改善された場合には、報酬単価が低くくなるわけですから、つまり事業者の売上が減少する仕組みとなっていることに対して、適切なインセンティブが働かなくなると指摘され続けていました。
 
収益のみを重視するならば、質の良くない介護サービスを提供して利用者の状態、要介護度を悪化させた方が儲かる仕組みとなっている。この現状制度には疑問の声も多かったのです。
もちろん、実際には、このような事業者はほとんど少なく、そのような一部の劣悪な事業者は淘汰されるケースが多いのですが、、制度・規制ビジネスでは、劣悪事業者が制度に守られる側面も出てくるのです。

 

この介護保険制度の根底を変革させる制度、自立支援を促し、利用者の状態を改善し、要介護度を改善することに評価する仕組みは大切な考え方であると言えます。

 

業界全体のサービス品質の底上げにつながる制度であると言えます。

 

しかしながら、こちらも、先ほどの議論と同様に、要介護度のみに焦点をあてるのであれば、あくまでADLの向上のみが重要視され、最も大切なQOLの向上がおろそかになる。場合によっては、高齢者の望まない無理なリハビリや機能訓練を強要するような虐待にもつながりかねない。といった指摘や、人間は自然の摂理として老いと死を迎えることを最終的に防ぐことは出来ず、一時的な状態改善のみを評価する仕組みは好ましくない。といった様々な指摘が寄せられています。

こちらも、同様に、これらの指摘には次回以降で1つ1つ丁寧に答えていきたいと思います。

 

そしてメリットの3つめは

3.要介護度改善に伴うインセンティブを実現することによって、持続可能な介護保険制度の実現を財政面より貢献できること

 

日本社会全体にとって最大の課題である財政再建、社会保障改革。今後の社会の在り方に全ての影響を及ぼすテーマであり、社会保障費の適正化(必要なサービスを削減することなく、不要なもの工夫できるものを削減する)は待ったなしの急務のテーマです。

 

2000年からスタートした介護保険制度にともなう介護保険財源は、年々膨らみ続け、ついに年間10兆円を超え、2025年には20兆円を超えると予測されています。

とりわけ、高齢者の増加に伴う自然増での社会保障費の増大は不可避なわけですが、人数的な増大だけではなく、介護度の悪化にも歯止めがかからない現状であります。(これも高齢者の加齢とともに不可避な側面もありますが)

 

そのような状況の中、要介護度改善、または状態悪化の進行を緩やかにすること、介護予防、健康寿命を延ばすことに注力することは最優先すべき社会保障改革への取り組みであり、「自立支援介護」の取り組みは、正にそのど真ん中の施策となるのです。

 

とはいえ、この点についても、また様々な角度から異論もあろうかと思いますので、そちらは次回。

 

これら3つのメリットとともに、「自立支援介護」は、出口が見えず、制度疲労を起こし、従来の概念・発想に捉われない抜本的な変革が求められている介護保険制度、社会保障制度の仕組みを、変革する試金石であり、突破口となる重要な制度であると私は思います。

 

繰り返しになりますが、まだ制度の詳細は議論中であり、また様々な反対論、懸念事項、課題点も多い「自立支援介護」ですが、1つ1つしっかりと議論し対策をたて、制度に、そして実際の現場に落とし込んでいくことが重要であると思います。

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