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中古で買ったVictor QL-Y33Fの調子は、フルオート機能を含めて、良好であった。中古価格は6,000円ほどだったので、まあまあ、お得感があったかなと。

 

 

カートリッジは、手持ちのTechnics EPC-270Cを付けた。ヘッド・シェルが付属していなかったので、ストレート・アーム用のものを入手し、装着。

 

中学1年の時から愛用しているカートリッジを「標準」とすることで、プレーヤーを変えたことによる音質偏差を感覚的に知ることができる。

 

◆Technics EPC-270Cの仕様◆
・発電方式:MM型
・出力電圧:3.2mV
・再生周波数帯域:20Hz~25kHz
・チャンネルバランス:2dB
・チャンネルセパレーション:25dB
・負荷抵抗:47kΩ
・針圧:1.5~2.0g
・針先:0.6mil(丸針)
・重さ:6.0g

 

以前のTechnics SL-Q303の時よりも、ほんの少し「見通しの良い音」に感じる。

 

ターンテーブルのマットがSL-Q303よりも固めなので、そのお蔭なのかもしれない。アナログは、ちょっとしたことで音が変わるので面白い。シェルや、リード線でも音が変わる。だからもう、何が要因かは気にしない。トータルで良ければそれでよい。

 

 

 

オート機能については、①針落下位置、②リターン位置の微調整を行った。アーム・ベース部にある調整孔に、精密ドライバーを入れて調整できる仕組みである。

 

 

クォーツ・ロックがかかると、緑色のランプが点灯する。回転数は赤色表示だ。100均のメラミン・クリーナーと、YAMAHAピアノユニコン(ピアノクリーナー)を使って、ボディーをピカピカ、ツルツルに仕上げた。

 

 

リピート機能と回転数は、手動切り替えが可能である。

 

 

EP盤を載せると、光センサーがサイズを読み取り、針の落下点と回転数を自動に決めてくれる。80年代によくあった12インチ・シングルの場合は、手動で「45回転」にする必要がある。

 

 

45回転のEPの針落下点も、ズレなく、うまく決まっていた。

 

今回入手した個体で、「難あり」だったのは、ダストカバー。ヒンジの樹脂部分が割れていて、スプリングが効かず、開放のまま維持することができなかった。仕方がないので、取り外している。

 

ダストカバー代わりに、休止中は、大きめのポリエステル・シートで覆うことにした。静電気も発生せず、いまのところ大丈夫だが、もし静電気が発生するようであれば、OA機器用の帯電防止シートを試してみようと思う。

 

最後に、以前の私の所有機、Technics SL-Q303のスペックとの比較を載せておきたい。

 

◆Technics SL-Q303

定価:¥53,800

発売年:1981年(昭和56年)
ワウフラッター:0.025% W.R.M.S (JIS)
SN比:78dB (IEC98A weighted)
形式:ユニバーサルS字型スタティックバランス
ジンバルサスペンション方式
重量:6.5kg

◆Victor QL-Y33F

定価:¥59,800

発売年:1982年(昭和57年)
ワウフラッター:0.025% W.R.M.S (JIS)
SN比:80dB以上(DIN-B)
形式:スタティックバランス型電子Qダンプ・エレクトロサーボ
重量:9.5kg

 

 

ほぼ同じ時代のプレーヤーである。しかも当時、日本ビクターは松下電器の傘下にあった。

 

QL-Y33Fの方が6,000円だけ高価であるが、ほぼ同じグレードのエントリー商品ということができる。

 

メーカーの思想がよく表れていて興味深い。

 

例えば、どちらも「フルオート」だが、松下のボディーがアルミ・ダイカストの軽量級なのに対し、ビクターはウッドで重量もある。松下のアームは、S字ユニバーサルだが、ビクターはストレート。松下のフルオート機能は、メカ式で「ガッチャンガッチャン」と音も騒々しいが、ビクターは無接触型の光検知システムで、まったくの無音である。

 

今回、その様子をYouTubeにアップしてみた。動画は初めての試みだが、簡単にできることが分かったので、これからも多用するかもしれない。

 

あえて、1983年のVHSビデオカメラで撮影したような映像にしてある。

 

 

 

追記だが、SL-Q303のターンテーブルには「ブレーキ」が備わっていた。アームが元の位置に戻った瞬間に、リニアモーターにより、プラッターの慣性を「0」にして、瞬時に回転を止めてくれる機能だ。

 

その機能が、QL-Y33Fには、機能として備わっていない。慣れれば何てことはないが、ディスクをすぐに載せ替えができるという意味で、このブレーキ機能は重宝していた。

 

私は、松下電器産業(Technics)の質実剛健っぽいところが一番好きなのであるが、今般の日本ビクター機を再入手して、「アイテムとしてのスマートさ」に強く惹かれる自分に気づかされた。たしかに、オーディオは所有欲を満たしてくれるマシーンであるべきである。

 

メーカーによる思想の違いというのは、やはり興味深い。