今日の一曲!μ's「夏色えがおで1,2,Jump!」 | A Flood of Music

今日の一曲!μ's「夏色えがおで1,2,Jump!」

 【テーマ:夏】の「今日の一曲!」第七弾は、μ'sの「夏色えがおで1,2,Jump!」(2011)です。3rdシングル曲で、アルバムとしては『μ's Best Album Best Live! collection』(2013)に収録されています。


 『ラブライブ!シリーズ』に限らず、アイドルが題材となっている作品で長く続いているものにはシーズンソングが多くあるもので、とりわけ夏と冬の歌は数が多いですよね。

 ゆえに選曲にも悩んだのですが、ディスコグラフィーの上では初期のナンバーにあたる;要するに「作品初の夏ソング」として満を持して世に放たれた(のであろう)本曲こそが、テーマに最も相応しいということで紹介することにしました。…と御託を並べつつも、実は単純に好きな曲だから選んだだけでもあります。笑




 冒頭の"Summer wing"の抜け感とギターの熱っぽさだけでも、夏のサウンドスケープを演出するのには充分だと言えるほどに正しい幕開けです。収録シングルのリリース日は8月24日と、夏を意識するにはやや時期が遅い印象ですが、このイントロから醸されるワクワク感は、7月のうちに覚えるような夏への期待感に満ちていると思います。

 この眩しさを受け継ぐAメロはひたすらにポップ&キャッチーで、歌詞の通り"楽しくしちゃうよ"な旋律である点が好感触。"なぜか見えた明日のときめき"と'somehow'な立ち上がりから、"羽が生えて私のこころは雲の上/さそわれて遠い空 遠い海"と視点が一気に「夏」へとパンする流れは、先述のワクワク感を言葉の面からも見事に描き出していると言えるでしょう。"なぜか"で理由をぼかした上に、"羽が生えて"とファンシーな表現を畳み掛けているところが巧くて、わけもなく抱いてしまう夏への憧れがよく表れています。


 Bメロは本曲の中で最も好きなセクションです。歌詞の上では素の文と括弧書きの文に分かれていて、こういう表記は合いの手や主旋律と一部が重なるパートを表示する際に出てくるのが通例ですが、本曲の場合は「二つの旋律が同時に進行している」と説明したほうが据りのいい構成で、これによって音楽的な複雑性が増している点を気に入っています。

 歌い手が9人居ることがきちんと意識されているというか、単独では歌い切れない曲にしようとのチャレンジ精神が感じられると、作曲者のこだわりにふれられたような気になり、結果として高い評価を下すことが多いですね。特に人数が多いグループの場合、ハーモニー/ハモリに関してはあまり過剰なのは好みでないため、程々もしくはなくても気にしませんが、かと言って雁首揃えてユニゾンばかりだと正直芸がないと思うので、だったらせめて本曲のようにパート分けを凝るなり副旋律を用意するなりすれば、それだけでも高度なアウトプットになるのになと独り言ちます。


 この凝り方はサビにも認められ、後半("暑いけど"~)に見られる「短いフレーズで歌い手が交代していくリレースタイル」は、アイドルソングにあったら嬉しい要素のひとつです。上に埋め込んだMVを観るとよりわかりやすいですが、カメラワークまで含めて多人数の魅せ方を理解していると言えますよね。

 話の流れで前後してしまいましたが、サビ前半も勿論素敵です。Bメロ終わりの"季節を探していたんだ"の部分でしっかりと「タメ」を作っていることで、続く旋律の躍動感と疾走感が一層際立っています。"真夏のせいだよ 1,2,Jump!/光のシャワーはじける"という歌詞は、メロディに引きずられて出てきた言葉の連なりであるかのようです。


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