舟を編む/光文社
¥1,575
Amazon.co.jp

読んだのは少し前ですが。

辞書づくりに命をかけた男の話。

  ※  ※  ※


言葉はときとして無力だ。


荒木や先生の奥さんがどんなに呼びかけても、


先生の命をこの世につなぎとめることはできなかった。


けれど、と馬締は思う。


先生のすべてが失われたわけではない。


言葉があるからこそ、一番大切なものが俺たちの心の中に残った。


生命活動が終わっても、


肉体が灰になっても、


物理的な死を超えてなお、


魂は生き続けることがあるのだと示すもの――


先生の思い出が。


先生のたたずまい、


先生の言動、


それらを語り合い、


記憶をわけあい伝えていくためには


絶対に言葉が必要だ。