「血尿しました!」と来院した12才半の

コーギーさんの女の仔

血尿は勿論、何度もしゃがみこんで

尿の姿勢もとるなどの症状から

膀胱炎や膀胱結石などを疑い

血液検査やエコー、レントゲンを実施した。


膀胱炎所見は認められるものの

結石など認められなかったが

気になることが一つ。


それは「脾臓」

膀胱炎と直接のかかわりはないと

思われるが、脾臓がやや大きい。

脾臓による症状的なものは

何ら認められない。

膀胱炎の治療を1週間続けた後

再度脾臓の大きさをチェックした。


すると・・・


わずか1週間の間に随分と腫大していた。

これだけ大きな変化に、とても嫌な感じがした。


「この1週間で、血尿も残尿感も改善し

食欲や活動性など何ら気になることはない。」

とおっしゃる飼い主様に、脾臓の大きさの急速な

変化は、時にとても大きな危険(脾臓破裂など)

を招く可能性を説明した。


今の段階では、はっきりとした原因は判らないが

原因が何であれ、脾臓が破裂すると数時間で

急死してしまうことがある。


飼い主様の決断は早かった。

脾臓摘出のオペを決断された。


麻酔をかけ、腹膜を開けてみると

「!」

大きな脾臓が目に入った。

そしてその下部(背骨側)には、血液が

溜まっていた。


この血はどこから?

その答えは、すぐに出た。

腫れあがった脾臓の一部が壊死を起こし、

そこからじわじわ出血しているのが目に入った。

それを見た瞬間、すぐに反応。

とにかく結紮。


焦る気持ちを、冷静さで封じ込めた。

細い血管は後回しにして、脾動脈を探す。

脾臓を下から注意深く持ち上げるのだが

壊死を伴った脾臓は、硬めの豆腐のように

もろく崩れそうであった。

脾動脈を見つけ、素早く2本結紮し

その間を電気メスでカットした。

出血の有無を確認。




後は細かい血管も注意深く結紮し

脾臓の摘出に成功した。

脾臓は腫大し、4ヶ所ほどぼこぼことした

結節があった。






術後食欲も旺盛で、今のところ順調に

回復している。





その後の病理検査で、脾臓は悪性腫瘍

(血管肉腫)と判明。

現在今後のことについて、飼い主様と

考慮中である。


【術後、入院室に戻ったばかり。覚醒中です。】



今回たまたま膀胱炎によって、検査を実施したことにより

脾臓の異常に気づくことができました。

時に脾臓の病気は、これといった症状を発症することなく

突然破裂し、死に至ることもあります。

ご心配な方は健康診断などを受けていただくことを

お勧めいたします。
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