この上なくエロティックで魅力ある売春婦たちは、自分たちの商売の街「Old town」を、ギャングや無法者から自力で守る。武装し、用心棒を雇い平和は保たれる。警察は自衛する売春婦たちを見逃すかわりに、さんざんいい思いをさせてもらえる。それがお互いの間の「約束」だ。

売春婦、チンピラ、裏切り者、異常者、巨悪の政治家、悪徳刑事、冤罪に陥れられる刑事、犯罪被害者の可憐な少女、モンスターたちが、頽廃の街「BASIN CITY」を舞台にうごめく。

イギリスのイスラム社会も、ロンドン・テロが起こるまでは、英国政府と「約束」が成立していた。政府は、パキスタンなどから来る、移民イスラム教徒の町、リーズなどでモスリムの文化を謳歌することを容認する。そのかわりイスラム教徒たちは英国に対し、テロや反社会活動を決してしない、という不文律があったのだ。

日本にだっておおっぴらにそのような取引関係があるのをおまえら知ってるか?パチンコ業界と警察官僚のバーターだよ。日本では賭博は犯罪だ。麻雀や賭けゴルフで直接金をやりとりすると逮捕されるんだぜ。だからパチンコやパチスロは、パチンコ屋で交換した景品を買い取るという形で、出た玉を金に換える。これは脱法行為だ。昔は警察がこれを取り締まっていた。これを警察はあることの見返りに見逃すことに決めた。

パッキー・カードとか言う玉交換カードを使って玉を買う仕組みになってから、景品と金の交換は合法になった。パッキー・カードは、パチンコ屋が、売り上げをごまかさないために導入されたものだ。それを入れろ、そうしたら、景品買い取り=出玉を金と交換することを見逃すから、ということだ。で、そのパッキー・カードの運営会社に警察官僚が天下るんだよ。パチンコ利権だよ。警察は今現在、パチンコの上がりで甘い汁を吸っている。

漫画の世界だろ?これが人間の社会の実像だ。警察官僚だった自民党の衆議院議員・平沢勝栄にパチンコ業界から5,000万円のヤミ献金があった、と噂されただろう。あれはこのような背景からあり得る話なのだ。平沢勝栄がこのバーターを積極的に推し進めたのだから。

モノクロに鮮やかな色が施される。ぞくぞくする映像美にしびれっぱなしだ。古いアメリカのテレビシリーズのようでもある。「アンタッチャブル」とか。「グラフィック・ノヴェル」の映像化だ。アメリカの「劇画」ということころか。スタイリッシュな映像は、劇画の世界を忠実に再現しているとのこと。

モノクロ映像はコクがある。映画というものが光と影だけでできていることを思う。雨の場面。夜の街の場面。迫る黒い人影。白く光る眼鏡。フィルム・ノワールだ。映像を見るだけで胸がときめく。女たちの白い肌も際立って美しい。

渋い俳優がたくさん出てくる。俺の好きなマイケル・マドセン。汚い裏切り者を渋く演じる。ブルース・ウィリス。「パルプ・フィクション」のブルースだ。もともと汚い顔をこれでもかと汚く不細工に演じるミッキー・ローク。不死身の化け物ぶりが面白かった。「エターナル・サンシャイン」で異常なストーカーを演じたイライジャ・ウッド。今回も強烈な変態ぶりだ。こんな役ばっかりで可哀相。可愛い顔してるのに。クライヴ・オーウェンも渋かった。

デヴォン・アオキを知っているだろうか。日系人でアメリカのティーンのカリスマ・ファッション・モデル。そばかすがチャーミング。独特の雰囲気を持っている。「KillBill」の、GoGo夕張の役どころ。もっとクールで、そう言えば一言も台詞がなかったな。出てくる女優たちはそれぞれに美しくセクシー。売春婦の役だが、腹の据わった演技をする。そして、ジェシカ・アルバ!なんと可憐で美しいことか。ジェシカを見るためだけにもこの映画は見る価値がある。重要な役を演じる。

ベニチオ・デル・トロが演じる実に嫌な男。殺したくなる。そしてぶざまに殺される。ところがこの男、死んでからがすごく面白い。だんだん好きになってくる。何度かこの男のせいで爆笑した。この男がやっかいの元なのだ。

俺の大好きなタランティーノが特別監督とかいう訳のわからない役割でクレジットされている。この作品全体は、まさにタランティーノ好み。大傑作「パルプ・フィクション」に「Kill Blill」のキッチュなところを混ぜたような作品。

この作品こそ、文字通りの「パルプ・フィクション」なのだが。取るに足らない三文小説。読んだらゴミ箱に投げ捨てる通俗スリラー。誇張された人物像に、あり得ない、と言う映画評論家多数。バカだね。この映画の楽しみが解ってない。漫画だもん。読んでその場だけ面白くてあとは捨てればいいんだ。車のぶっ飛び方とか、爆発シーンで人のぶっ飛び方とか、コミックそのもの。わくわくしますよ。

女性の描写がいい。モノクロにごく一部微妙に色を乗せる手法が素晴らしい。目が青かったり、薄く緑だったり、真っ赤な口紅、シーツ。美しく効果満点だった。愛着を感じるマニアックな作品。人間ドラマがお好みならまったく「お呼びでない」作品です。

俺は大満足。心の底から楽しんだ。長いのも気に入った。師匠も、短い映画見ると損した気分!と言っています。たっぷり、映像と、クールな売春婦、チンピラたちの心意気に酔った。