1987、ある闘いの真実 | <ムービーナビ> by映画コーディネーター・門倉カド

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生々しい真実に圧倒される。歴史に刻まれた悲しき事件。

2018年9月8日公開
監督:チャン・ジュナン
出演:ハ・ジョンウ
キム・ユンソク 他

【賛否両論チェック】
賛:実際に起きた事件を基に、大切なものを守るため、権力に立ち向かい続けた人々の姿が、切なくも如実に描かれていくのが印象的。
否:拷問のシーン等がかなり生々しいので、苦手な人には向かない。


ラブシーン・・・なし
グロシーン・・・かなりあり
アクションシーン・・・なし
怖シーン・・・雰囲気は結構怖いかも


 韓国で実際に起きた民主化闘争を基にした作品です。警察の不当な拷問によって1人の大学生が死亡したことから、民主化運動が広がっていく様を描きます。

 かつて韓国では、全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領の下、反政府活動を徹底的に取り締まっていました。そんな中、1987年1月14日に事件が起こります。南営洞(ナミョンドン)にある治安本部・対共分室に、1人の医師が連れて来られます。医師が刑事達から診るように言われた青年、パク・ジョンチョル(ヨ・ジング)は、既に心肺停止の状態。しかし刑事達は、
「生き返らせろ。」
と言うばかりで、医師も必死に蘇生を試みますが、結局ジョンチョルを助けることは出来ませんでした。報告を受けた所長のパク(キム・ユンソク)は、助けられなかったことではなく、医師を呼んで目撃者を作ってしまったことに苛立ちを募らせます。パクは刑事達に、すぐに遺体を火葬するよう指示を出すのでした。

 その日の夜、刑事達は検事のチェ(ハ・ジョンウ)の下へ火葬許可証を持ってくると、すぐにサインをするよう頼み込んできます。しかしチェは、22歳のジョンチョルが心臓麻痺で死んだという報告に疑問を抱き、サインを渋りますが、刑事達はあの手この手で、サインをするように迫ってくるのでした。その様子を見たチェは、ようやく書類にサインをしますが、ホッとして受け取った刑事の顔は、見る見るうちに曇っていきます。それもそのはず、チェがサインをしたのは火葬許可証ではなく、遺体保存命令書だったからでした。

 ところが翌日、チェは彼の上司から、対共分室に盾突くことはしないようにと圧力をかけられてしまいます。それでも己の信念を貫こうとするチェの姿を見た後輩の検事が、中央日報の記者に事件をリーク。事件は瞬く間に明るみに出ることになります。すると対共分室は渋々記者会見を開きますが、そこで発表されたのは、
「取調官が机を叩いたら、被疑者が驚いてそのまま死んでしまった。」
という、誰の目にも明らかな出まかせでした。またその後に行われた司法解剖でも、「窒息死」という結果が出ていながら、やはり対共分室の発表は、
「暴力行為は一切なかった。」
といった内容に終始するのでした。

 それからもチェは、圧力をかけてくるパク達と戦い続けますが、権力に打ち勝つことは出来ず、異動を命じられてしまいます。一方、ジョンチョルの遺族の悲しみを目の当たりにし、、怒りを隠せない東亜日報の記者・ユン・サンサム(イ・ヒジュン)は、異動の荷物を抱えて車に乗り込もうとするチェに詰め寄りますが、チェはそのまま車を発進させてしまうのでした。ところが落胆していたユンがふと気がつくと、傍らにはチェが持っていたはずの荷物が、車に乗せられずにそのまま放置されていました。彼の粋な計らいに感謝したユンは、荷物の中にあった解剖鑑定書を基に、ジョンチョルの事件を白日の下にさらすのでした・・・。

 まだそう昔ではない1987年に起きた、恐ろしくも哀しい事件。それを引き金に、韓国へ民主化の波が一気に押し寄せていく様が、緊迫感の中で生々しく描かれていきます。

 理不尽な拷問死を絶対的な権力で隠ぺいしようとする当局に対し、信念を貫いて抵抗したチェ検事を始め、あらゆる手段で記事にしたユンや、命を賭けて戦った革命家のジョンナム、彼らに協力した看守のビョンヨン、そして暴動に巻き込まれながら、大切な人の存在に気がついていくヨニと、一連の事件を通して様々な人々の戦いが浮き彫りになっていくのが印象に残ります。

 決して軽々しく観られる作品ではありませんが、今日在る人々の権利を守るために戦った、名もなき先人達の姿に考えさせられる、そんなお話です。


【ワンチャン・ポイント】
※キム・テリ・・・本作では、運動家の青年に心惹かれていく女子大生・ヨニ役。最近の映画では「お嬢さん」で、詐欺グループに育てられた少女役を演じていらっしゃいます。


オススメジャンル&オススメ度・・・<深く考えたい>