虐殺器官 | <ムービーナビ> by映画コーディネーター・門倉カド

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難しくて深い。人間の本質的な残虐性に迫る異色作。
 
2017年2月3日公開
監督:村瀬修功
出演(声):中村悠一・三上哲・櫻井孝宏 他
 
【賛否両論チェック】
賛:人間の残虐性を〝器官”と定義づける領域にまで掘り下げた価値観を持つ宿敵と、その殺戮本能の本質へと迫ろうとする主人公との対比が印象深い。内向きな管理社会への問題提起も垣間見える。
否:会話がかなり小説チックで、かつ難解なので、結構違和感を覚える。グロシーンもかなり多め。
 
ラブシーン・・・あり
グロシーン・・・メッチャあり
アクションシーン・・・あり
怖シーン・・・雰囲気は結構怖いかも
 
 
 急逝したSF作家・伊藤計劃さん原作のアニメ映画化です。情報管理社会にあって、世界各地の虐殺事件の陰で暗躍する男を追う、特殊部隊員を描きます。
 
 始まりはサラエボでした。町を訪れた1人の青年が、道の真ん中で手製の核爆弾を起動。直後に大爆発が起こり、サラエボはそのまま消滅してしまいます。それから十数年後、9.11の影響もあり、先進諸国は個人の自由を少々制限してまでも、厳しい情報管理体制を構築していました。その結果、先進諸国の治安は安定しましたが、一方の発展途上国では、その不満が内々に向くかのように内戦や民族紛争が激化。世界は平和と混沌に二分されつつあるのでした。
 
 そんな中、主人公のクラヴィス・シェパード(声:中村悠一)率いるアメリカ情報軍・特殊検索群ⅰ分遣隊(要人暗殺部隊)は、グルジアで任務を遂行していました。戦闘時に感情の乱れがないように感情調整が行われ、痛みを感じないように〝痛覚マスキング”をも施された精鋭部隊の彼ら。暗闇に紛れ、野営していた武装勢力の兵士を殺害したクラヴィス達は、兵士達のIDを飲み込んで変装し、兵士達の車を使って武装勢力の本部へと潜入します。その中では、拉致してきたと思われる人々の虐殺が行われているところでした。再び闇に紛れたクラヴィスは、国防大臣の部屋へと忍び込み、背後から大臣にナイフを突きつけます。クラヴィス達の目的は、大臣が逢うことになっていたアメリカ人、ジョン・ポール(声:櫻井孝宏)でしたが、ジョンは一向に現れません。すると突然、大臣がうわ言のように、
「私は・・・何故虐殺をした・・・!?」
とつぶやき始め、焦点の合っていない眼でクラヴィスを見据えてきます。不審に思うクラヴィスでしたが、その直後、大臣はクラヴィス達の部下のアレックス(声:梶裕貴)によって射殺されてしまうのでした。しかしそのアレックスも、本来の感情調整の範囲を大きく超えて発狂してしまっていたため、やむなくクラヴィスはアレックスを射殺し、その場から脱出します。
 
 後日ペンタゴンへと召集されたクラヴィスと、同僚のウィリアムズ(声:三上哲)。そこで2人はまず、アレックスがPTSD(トラウマ)を患っていたと結論づけられたことを知らされます。その後CIAからは、ジョン・ポールについての情報が。それによると、ジョンは国や武装勢力の軍事コンサルタントを行うコーディネーターであるものの、彼の行く先々では何故か軒並み大量虐殺が起こっているとのこと。そこでクラヴィスとウィリアムズは、指揮官のロックウェル(声:大塚明夫)から、ジョンを確保するための次なる作戦を指示されます。それはジョンのかつての恋人であり、チェコ・プラハでチェコ語の家庭教師をしている女性、ルツィア・シュクロウポヴァ(声:小林沙苗)を監視し、ジョンの接触を待つというものでした・・・。
 
 “人間の持つ残虐性”を扱う作品は結構ありますが、ここまで本質を深く掘り下げて、“人間には虐殺を司る、いわば「器官」がある”という理論にまで昇華した作品は、かなり特異な印象です。それほどまでに人類にとって、“殺戮本能”というものが抗えないものだという、一種の虚しさが漂います。
 
 同時に、そうした本能を前に先進国が選んだ、“自由の幅を制限してでも、徹底的に管理された社会によって、自国民の安全を確保する”という内向きな姿勢へのアンチテーゼも垣間見えます。その辺りは「スノーデン」にも通じるものがありそうですね。
 
 語られる内容はかなり難解で、グロシーンも沢山ありますので、好みは分かれそうですが、気になった方は是非。
 
 
【ワンチャン・ポイント】
※今回はお休みです。
 
オススメジャンル&オススメ度・・・<ハラハラしたい>
 
 
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