夏美のホタル | <ムービーナビ> by映画コーディネーター・門倉カド

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葛藤して知った家族の愛。心温まるひと夏の成長物語。

2016年6月11日公開
監督:廣木隆一
出演:有村架純・工藤阿須加・光石研 他

【賛否両論チェック】
賛:それぞれが事情を抱えながらも、家族を想って生きている姿が胸を打つ。そんな人々の生き様に触れ、自分の亡き父の本当の愛情を知って、成長していく主人公の姿も印象に残る。遠くから主人公達を見守るような視点が多いのも、特徴的でありステキ。
否:展開はかなり淡々としていて、無音で長いシーンも多いので、興味を惹かれないと眠くなること必至。

ラブシーン・・・なし
グロシーン・・・吐血のシーンだけあり
アクションシーン・・・なし
怖シーン・・・なし


 父との思い出の地に出かけた主人公が、とある親子との出逢いから、本当の家族の愛を知っていきます。主演は有村架純さん。

 物語の主人公は、写真学科の大学生・河合夏美(有村架純)。将来は写真家を目指しているものの、一向に芽が出ない彼女は、同級生で同棲している恋人の相羽慎吾(工藤阿須加)と共に、その日も学部の先輩の賞受賞の祝賀会に参加していました。
「何が足りないんだろう・・・?」
と悩む慎吾に、夏美はその夜、
「実家に帰ろうと思っている。」
と告げられます。慎吾の実家は新潟で酒蔵を営んでおり、慎吾は写真家の夢を諦め、家業を継ごうか悩んでいるところでした。そんな慎吾の急な告白に、夏美は閉口します。翌朝慎吾が目覚めると、既に布団の隣りはもぬけの殻。夏美は父親譲りのバイクに乗って、千葉県の久留里へと向かったのでした。

 目的の川へと着くと、夏美はテントを張り、早速写真を撮り始めます。彼女の目当ては、かつて父親と見たホタル。しかし一晩待ってもホタルは現れず、翌日彼女は近くにある雑貨屋「たけ屋」に、パンと飲み物を買いに訪れるのでした。すると主人の恵三(光石研)は、
「上がっていきなよ。」
と、声をかけてくれます。恵三は、母親のヤスエ(吉行和子)との2人暮らし。心優しい2人は、美味しいスイカをご馳走してくれたばかりか、
「川は危ないから、ウチに泊まっていきなよ。」
と勧めてくれますが、夏美は気持ちだけもらい、再び川へと戻っていくのでした。

 翌日夏美のテントへ、幼い兄妹がやってきます。普段から恵三に可愛がってもらっている彼らに連れられ、夏美は恵三達とホタルを探すことになりますが、結局ホタルは見つかりらずじまい。その夜、たけ屋で美味しい夕飯を食べさせてもらった夏美は、しばらくの居候を願い出るのでした。その後、夏美を訪ねてやってきた慎吾や、偏屈な仏師・雲月(小林薫)も交えながら、夏美達は少しずつまるで本物の家族のように過ごしていきます。そんなある日の夜、近くの公園に呼び出された夏美は、慎吾から
「一緒に新潟に来てくれないか?」
と、プロポーズをされます。突然のことに戸惑いを隠せない夏美。そこへ追い打ちをかけるように、翌日恵三が大動脈りゅう破裂で倒れてしまうのでした・・・。

 夢に疲れ、岐路に立たされた主人公が、ふと訪れた父との思い出の地で、思いがけず父の本当の愛情を知り、一回りも二回りも成長していく姿が、静かで穏やかに、それでいてしっかりと描かれていくのが印象に残ります。夏美が出逢う恵三や雲月、そしてヤスエと、それぞれが皆自分の家族への複雑な事情を抱えながら、それでもなお家族の幸せを想って生きている姿に、改めて〝親の愛”の強さを感じさせられるようです。「3つの恵み」の話なんかは、思わずグッときます。

 それに加えて、職人気質の雲月の叱咤激励や、夏美のために夢を諦めようとしている慎吾と、自身の夢に悩む夏美との関わり合いを通して、「夢を叶えるまで持ち続けることの難しさ」や、「大切な人を守るために何かを犠牲にすることの厳しさ」といったものも、観ている者の胸に問いかけてきます。そんな中でも、恵三が語る
「幸せじゃないか。家族のために働けるなんて。」
という言葉に、全てが集約されているような気がします。

 そしてこの作品では、主人公達の間で紡がれる人間模様を、わざと遠くから長尺で観るような視点が、随所に見られます。それはさながら、まるでホタルが飛び交う様子を、静かに遠くから見守っているような感覚を与えてくれます。

 展開はかなり静かで淡々としているので、人によっては眠くなるかも知れませんが(笑)、大自然の中での心温まる人間ドラマを、是非ご覧になってみて下さい。


【ワンチャン・ポイント】
※工藤阿須加さん・・・本作では、主人公の恋人・慎吾役。工藤公康さんの息子さんで、最近の映画では、「1/11 じゅういちぶんのいち」でのサッカー部に入部する不良役や、「百瀬、こっちを向いて。」での先輩役、「近キョリ恋愛」での同級生役や、「アゲイン 28年目の甲子園」でのかつての高校球児役等々、主に青春モノの作品に多数出演していらっしゃいます。

※村上虹郎さん・・・本作では、光石研さん演じる恵三の息子・公英役。最近の映画では、奄美大島の少年少女達を描いた「2つ目の窓」や、他人の記憶から消えてしまう少女を描いた「忘れないと誓ったぼくがいた」、そして柳楽優弥さんが狂気に満ちたチンピラを怪演された「ディストラクション・ベイビーズ」等々、話題作に出演されています。

オススメジャンル&オススメ度・・・<感動したい>


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