市子 | 忘れるからね

人間と社会人、このふたつの面の狭間で軋轢があって、関係が上手くいかない。なんてことがよく起こる。

人間は良いのだけど、社会人としてちょっと。

良い人だけど、いい年してニートはちょっと。

とか、結婚するなら年収がこれだけないと。とか言う最初から相手にのしかかる気満々、人間として相手を見ず、財布としてしか見てない莫迦女とか。そういう人にかぎって見た目が醜悪でどうしようもなかったりするが、驚いたことに内面を見てとか言ってきたりする。人を年収で、いわば社会人としてしか判断してないくせに、自分のことは人間として見ろとか、もう狂気しか感じない。

または、社会人としては仕事もきちんとしていて収入も人並み以上だけど、人間性はすこぶる低い。なんて人もいる。

善人が社会人としても優れていれば問題ないのだけど、人間性と社会人としての優劣は全然比例しない。

資本主義社会であるから、社会人としての幸せは、金銭を伴った成功ということになるんだろうけど、人間としての幸せはどうも別の所にある。大半の人はそれに気づいているから、善人であろうとしたり、金銭をかえりみず家族との時間や友人との時間を作ったりするんじゃないだろうか。

社会で生きて生かされている以上、社会人として他人様に迷惑をかけない程度に自立は必要で、そのなかで人間としての幸せを目指す或いは探す。

生きてるだけで良い。そう思うが、それだけでは世間が社会が許さない。

疲れるね。




「市子」2023年 日本 監督 戸田彬弘

戸籍を持たない社会から隔絶された存在。

彼女がこの世で生きていくには、どうするのが良かったのか。

掴みかけた幸せからも逃避しなくてはいけない。辛過ぎる。荒唐無稽な話だけど、演者の力か、最後まで興味深く観れた。