「映画の力」EPISODE:梅沢壮一「こうして僕は夢の箱の虜になった。」 | C2[シーツー]BLOG

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川本 朗(カワモト アキラ)▶名古屋発、シネマ・クロス・メディア
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「映画の力」EPISODE:
こうして僕は夢の箱の虜になった。

▶︎「映画の力」エピソードまとめ→

 

小1の時。

 

 母親に連れられて戸塚の名画座へ『バンビ』を観に行った。上映前に「悪魔の赤ちゃん」の予告編が流れた。翌日学校で、昨日の日曜日何をしていたか絵日記を描きましょうと言われ、血を流した男の人を描いた。小鹿の記憶はなかった。

 

小5の時。

 

 地元、藤沢の映画館へ弟と『戦国自衛隊』を観に行った。当時小学生は800円。小さな財布から千円札を2枚、折りたたまれたまま渡した。おばちゃんはそのままお釣り400円を僕に渡した。帰宅して財布を見ると、千円札が一枚足りない。どうやら窓口で3000円払ったようだ。お札は広げるべきなんだとその時学んだ。大人は確認してくれない。

 

小6の時。

 

 弟と藤沢の映画館に『007ムーンレイカー』を観に行った。あまりにも楽しくて2回目を鑑賞。しかし途中から酔っ払いが後ろの席に座る。タバコを吸い、しかもマッチの火を消さずに床に落とす。「さ〜て、何時かな〜!」と大声で叫ぶ。ひたすら恐ろしかったが、映画の世界に入ろうと、ボンドの武器の凄さを二人でコソコソ話していたら、「おめえらうるせぇ!あっち行け!」と後頭部を蹴られた。すごすごと移動する僕と弟。優しいカップルが席をずれてくれた。

 

中学の時。

 

 藤沢で一番大きかった映画館は、僕が観たい作品がよくかかっていた。ただ受付のおばちゃんが気に入らなかった。上映時間を聞こうと電話すると、相手がガキだとわかった瞬間に態度が一変。敬語は失せ、こちらがメモする隙も与えぬスピードで上映時間を伝えて、一方的に切った。

僕に出来る復讐は無言電話くらいだった。

 

21歳の時。

 

 3浪を失敗し、藤沢の古いミニシアターの映写技師になった。普段あまり気にされないであろう、休憩時間に流すBGMのチョイス、その音量の絞り方、場内の室温、その他、お客さんに快適に鑑賞してもらえるよう、思いつくところはとことん気遣った。いつか自分が特殊メイクスタッフとしてクレジットに名前が載る日を、そして自分で監督した作品をかけてもらえる日を夢見て。

 

 甘酸っぱく愛おしい映画館の思い出。暗闇で夢を見て、明るくなって現実を知る。そしてまた暗闇に行きたくなる。

 

特殊造型工房 ソイチウム

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